「このたびはありがとうございました。離婚してくれて…‥」と言ってきたその女性。そして、彼女は元夫の浮気相手だと自ら暴露してきたのです。
「もうご存知だとは思いますけど、私と彼は1年前くらいからお付き合いしてて」「おかげさまで、今朝無事に入籍することができました」「慰謝料も請求されなかったそうですね。おかげでスムーズに入籍できました。本当に感謝しています」と彼女。
私が「彼のことをすべてわかったうえで、一緒になったんですね」と言うと、「もちろんです。私たちはお互いのことを受け入れあって結婚したんです」「これでやっと彼と幸せな結婚生活を送ることができます」と返してきた彼女。
私は少し間をおいて、感情を込めずに言いました。
「……おめでとうございます」
彼女は満足したようで、その電話はそこで終わったのですが、2週間後、また浮気相手から連絡が来たのです。
彼女は「せっかくなので、私たちの幸せな新婚生活の話でも聞いてもらおうと思って」と言ってきて……?
元妻にマウントを取る浮気相手
ようやく離婚できてすっきりした気持ちでいた私。彼女の"幸せのおすそ分け"なんて必要ありません。
「彼ったら毎日仕事から帰ってくるたびに、私にプレゼント買ってきてくれるんですよ 」「結婚した翌日にはバラの花束でした。一昨日は私が大好きなブランドの新作バッグまで」「あなたのときとは違って、自然と私に贈り物したくなるんですって。気持ちが違うのかしら」
どうやら彼女は、幸せな新婚生活を私に自慢したくてしょうがないようでした。
「確かに、私は彼からプレゼントなんてほとんどもらったことなかったけど……。でも、毎日そんなに買ってきたら、お金も続かないでしょうに」と言うと、彼女は、「確かに、いくら年収2,000万あるって言ってもねぇ? だから、私は『プレゼントはもういいから、代わりに豪華な新婚旅行しましょ』って言って、今日は計画立てに旅行会社に2人で行ってきたんですよ」と彼女。
「彼、あなたとの結婚では新婚旅行に行かなかったから、憧れがあるらしいんですよ」「海外で結婚式を挙げる予定なんです」
どうして私が元夫と浮気相手の結婚式の話を聞かされなければならないのでしょうか……。
「せっかくだから、結婚式の写真は送ってあげましょうか」と彼女。
「年収2000万の彼と結婚できて、私は幸せです♡」
「私のせいで彼と離婚させちゃって、ごめんなさいね♡」
「離婚したのは、ほかの理由だけど……?」
「え?」
本当の離婚理由と元夫の正体
「そんなの、私と結婚するために離婚したに決まってるじゃないですか~! 今さら彼のことが惜しくなったんですか?」と彼女。
私は大きなため息をついたあと、静かに事実を伝えました。
「実は彼と別れたのは、ある理由があったからなんです」「……借金。1,000万円ほど」
「1,000万って彼の年収の半分じゃない! 大手のIT関連会社で働いてて、そんな稼ぎがある人が借金なんてするわけないでしょ? 」と言う彼女に、「彼に年収なんかありませんよ」と返信した私。
「ちょっと待ってよ! どういう意味?」と聞いてきた彼女に、私は彼の正体を教えてあげることに。
たしかに、元夫は大手のIT関連会社に一度は入社しました。しかし、私と結婚したあと、独立するために退職。景気の問題などもあり、起業は頓挫しましたが、私の収入があったので元夫は普通に暮らせていたのです。
「待ってよ……毎日、仕事だって出かけてるわよ……?」と彼女。
「再就職活動はすぐに諦めたみたいで、それからは毎日のようにパチンコ通いでした。たぶん今も変わらないと思います」と言うと、浮気相手は言葉を失ったのか、しばらく返信はありませんでした。
元夫はあちこちから借金を重ね、ついには返済に行き詰まり、ようやく私に打ち明けてきたのです。私はすぐに離婚を決意したのですが、元夫のほうが渋って長い長い離婚調停が始まったのでした。
「離婚したくないって彼が駄々をこねてたってこと……?」とようやく返信してきた彼女に、「そりゃ、年収2,000万超の妻は手放したくないですよね。その気になったらすぐに借金返せるもの」と私。年収2,000万なのは彼ではなく、私のほうなのでした。
元夫との話し合いはずっと平行線。そんな折、元夫が浮気を暴露してきたのです。「浮気の慰謝料を俺に請求しないなら、離婚に応じてやってもいい」とドヤ顔で言われて、私も弁護士さんも口をあんぐり。
本音を言えば、彼の両親に頭を下げてでも慰謝料をなんとか用意してほしかったのですが、あのときの私はそれどころではありませんでした。とにかく一刻も早く、元夫と縁を切りたかったのです。
「つまり、私はだしに使われたってこと……?」とつぶやいた彼女。「でも、そんな元夫のすべてを受け入れて結婚したんでしょう?」と言うと、「違う! 借金なんて知らなかった!」と叫んだ彼女。
「新婚旅行も海外ウエディングも借金でするのかしら。お気持ちはありがたいですが、もうこれ以上のお話は結構ですので」「あと、あなたにはあらためて慰謝料請求させていただきます」
そう伝えると、「なんで!? 慰謝料請求しないって彼と約束したんでしょ!?」と彼女。たしかに、元夫には浮気の慰謝料を請求しないと約束しました。
しかし、浮気相手とは約束はしていません。弁護士さんからも、浮気相手には慰謝料請求できる可能性が高いと聞いていました。
「嘘でしょ……年収2,000万の男と結婚したから仕事も辞めちゃったのに……」と言う彼女に、「あらためて弁護士さんから連絡がいきますので、ご対応よろしくお願いしますね」とだけ言って、やり取りを終えました。
1週間後――。
「お願いします、助けてください」とまたも浮気相手から連絡が。
「私、離婚したいんです……弁護士さん紹介してくれませんか?」と話す浮気相手。先日の電話のあと、彼女は元夫を問い詰めたそう。すると、元夫はすぐにすべて認めたというのです。
「普通は、私じゃなくて身近な人に相談するものじゃないですか?」「そもそも弁護士費用もそれなりにかかりますけど、大丈夫ですか?」と聞くと、彼女は逆ギレしてきたのです。
「そんなお金あるわけないでしょ! 結婚したら夫婦の共同財産だって言って、彼が私の貯金を勝手に下ろして返済にあててたんだから!」「あなたのせいでこんな男と結婚するはめになったんだから、少しくらい助けてくれてもいいじゃない!」「こんな状況になったのは、あなただって無関係じゃないんだから……少しくらい責任を取るべきだと思いません?」
「お断りします」ときっぱり言った私。「借金持ちの男を養う趣味はありませんし、もう彼とは一切関わりたくないので……」と言うと、「まさか、借金以外にもまだ何かあるって言うんですか!? 」と食い気味に聞いてきた彼女。
「今の時代、少ない資金でも起業する人はたくさんいます。それなのに、起業資金やギャンブルだけで1,000万円もの借金なんて、ちょっと考えにくいですよね? 」「私に黙って、元夫は毎月実家に10万仕送りしてたんです。無職になってからは借金してまで、仕送りを続けていたんです」
「な……なんで? まさか、ご両親に対して見栄を張りたかったとか……?」と不思議そうに言ってきた彼女。当然の疑問でしょう。
「それもあるかもしれませんが、元義両親が求めていたんですよ。『お金が送れないなら同居だ』『すぐにでもお前の家に転がり込んでやる』って言ってたそうで……」「元夫は同居は避けたかったようで、借金して送金してたんですよ」
結婚前の挨拶で、まず私の年収を聞いてきた元義両親。あのときの違和感を大事にしておけば……と、何度も離婚調停中に後悔しました。
「そんな……じゃあ、ますます借金が増えていくってことじゃない! そんな義両親と同居なんて耐えられない……お願い、助けてよ!」と彼女は取り乱しました。しかし、元夫の浮気相手を助けてあげられるほど私の器は大きくありません。
「あなたが選んだ道ですよね。私にはもうどうすることもできません」「今後は、弁護士さんを通じてお願いします」とだけ言って、私は電話を切りました。
その後――。
私は弁護士さんを通して、浮気相手に慰謝料を請求。弁護士さんによると、彼女は元夫に離婚を申し入れたものの、やはり受け入れてもらえなかったようです。今は生活のために、一度辞めた会社に復職したそう。元夫の借金の返済に追われているようで、「慰謝料の支払いは少し待ってほしい」と弁護士さんづてで連絡がありました。支払う意思はあるようだったので、しばらく待つことにしました。
私のほうは、お金に余裕ができたのでマンションの購入を検討しています。元夫に吸われるお金がなくなった分、今後は自分の生活や趣味をもっと充実させるためにお金を使っていこうと思っています。
【取材時期:2025年5月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。