新社長はヤバい人
ある日、懇意にしてくださっていた取引先の割烹料亭の社長秘書から連絡を受けた私。それはなんと、社長が急逝されたという訃報でした。
私たちの作った野菜を気に入り、定期的に購入してくださっていた社長の死に私は涙。数日後の葬儀では、ほとんどの参列者が号泣していました。
そんな中、派手な女性がひとり。秘書の人に聞くと、その女性は社長の奥さまで、今後は彼女が料亭を経営することになったのだそうです。これまで料亭の仕事に一切関わってこなかった奥さまですが、2週間後に新社長に就任。料亭は再開することになりました。
ところが私が野菜の納品に行くと、「あんたの野菜は高いわね!」と文句ばかり。挙句に、急に取引を中止すると言うのです。「今後は安い輸入品を使うから。客なんて、何を食べたって野菜の味なんてわかんないわ」と料亭のお客さままでバカにする始末でした。
私の作った野菜がまずい!?
その後、彼女は料理長を含むベテラン従業員や秘書を解雇したのです。秘書は別のホテルに再就職が決まったそうで、私たちの農家もそのホテルと契約を結ぶことになりました。
私たちの野菜は完全無農薬。手間暇をかけて育てているため、値段はたしかに高めですが、おいしいといろいろな場所で評判になっていました。そのため、この料亭との取引がなくなっても私たちはノーダメージだったのですが……。あのやさしかった社長の料亭の行く末だけが気がかりでした。
そんなある日、友人がこの料亭で久しぶりに食事をしたのだとか。ところが、そのときの料理があまりにもひどかったので、テイクアウトまでして私たちの元に持って来たのです。
現在の料亭の料理を食べた私たちは、驚がく。思わず「まずっ!」と叫んでしまいました。
そして最悪なことは……。このまずい料理に、私たちの農家から仕入れた野菜を使っている、と料亭では言っているのだとか。そういえば、最近変なクレームの電話がかかってきていましたが、クレームの原因はまさかの料亭にあったのです。
今さら謝っても遅い!
翌日。なんと料亭の現社長が、私たちの農家を訪ねて来て、「またあんたたちと契約をしてもいいわ」とふんぞり返って言いました。
そう、彼女は、輸入野菜を無農薬野菜だと偽っていたのです。本物の味がわかるお客様たちからクレームが入り、評判はガタ落ち。そこでもう一度私たちの野菜を使った料理を提供することで信頼を回復させようとしていたのです。
私は、わが子のように大切に育ててきた自慢の野菜をバカにし、ウソまでついていたことが許せませんでした。そして、「契約を打ち切ったのはそちらですよ」と一蹴しました。
その後、彼女の料亭は経営難に陥りました。料理だけでなくサービスの質も下がってしまったからです。安月給で雇った不慣れな従業員たちさえ辞職していき、最後には自己破産を宣言したそうです。
一方で私たちは、本物の味を喜んでくれるお客さまのために、今日もおいしい野菜作りに励んでいます。
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前社長は、良質な野菜のことを理解してくれる、立派な経営者でした。しかしその妻は、コスト減だけを考えて突然取引を中止し、古参の従業員も解雇。その結果料亭は閉業へ……。ビジネスでも人との関わりが大切ですよね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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