ツンデレすぎる看板娘
僕は25歳の会社員です。春の転勤でこの町に越してきて、今はひとり暮らしをしています。自炊はまったくできないので、仕事帰りに家の近くの定食屋によく通っていました。
この店の魅力は、何といってもリーズナブルでおいしいこと。それに加えて、厨房に立つ「大将」と呼ばれる店主がすごく気さくな人で、誰にでも親身に接してくれるところも好きでした。
「食欲はあるかい?」
「はい!あります!」
そんなあたたかい雰囲気のお店なのに、1つだけ引っかかることがあるのです。それは、大将の娘であり看板娘のAが、僕にだけ明らかに冷たいこと。
「いらっしゃいませ。ご注文は?」
「いつもの定食で……」
目も合わせてくれず、いつもそっけない態度。以前はもう少し会話してくれていた気がするのですが、ある日を境に急に距離を取られるようになったのです。
嫌われてる?試してみたい
「Aに嫌われるようなこと、した覚えはないんだけどなぁ……」
会社の食堂でそんなことをこぼすと、同じ会社で受付を担当しているBが言いました。
「嫌われてるかどうか、簡単に確かめる方法ありますよ」
「えっ!? どんな?」
「褒めてみてください!」
彼女いわく、褒めて露骨に嫌な顔をされたらアウト。でも、照れたり動揺していたりしたら、嫌われていない証拠なのだとか。
半信半疑のまま、僕はその夜も定食屋を訪れました。
褒めてみたら、予想外の展開に
定食屋に訪れると、いつもとは違いポニーテール姿のA。そこで、Bに言われた通りAを褒めてみることに。
「今日の髪型、すごく似合ってます。ポニーテールって、僕すごく好きなんですよ」
「…え?」
僕が褒めるなり、Aの表情が固まり、しばらく何も言えない様子でした。しかし、Aの顔はみるみる赤くなっていき……。うつむいてしまった彼女は、何やらあわてたように湯飲みのお茶を注ぎ続けました。
「あっ、ちょ、あふれてる!」
「ご、ごめんなさいっ!」
Aは、あふれたお茶がかかった僕の手に、あわてて冷たいおしぼりを当ててくれました。そのときの彼女の手が、なんだか震えていたのが印象的でした。彼女は嫌がっているというより、照れているように見えたのです。
Aの反応を見た僕は「嫌われていたわけではなかったということなのかな……」と安堵の気持ちもありました。
お手伝いします!
「やけど、大丈夫でしたか?」
翌日も定食屋を訪れると、大将が真剣な顔で声をかけてきました。
「娘が失礼をして、本当に申し訳ありません」
「いえ! 僕が仕事中に話しかけたせいですし…」
僕と大将のやりとりを聞いていたAが、突然言い出しました。
「私にあなたの家事のお手伝いをさせてください!」
Aは僕のやけどが治るまで、洗濯や掃除、朝ご飯の用意などできることをしたいと言うのです。
僕はまさかの展開に戸惑いましたが、大将からも「やけどがひどい間は、家事を手伝うべきだ」と言われ、結局僕は甘えることにしました。
翌朝からAは本当に家に来て、朝食を作ってくれたり、僕が会社に行っている間に掃除や洗濯を済ませてくれるようになったのです。
僕が不在の間にも作業ができるように鍵を渡していたのですが、その鍵も忘れずに返してくれました。他にも、まじめに家事をこなす姿を見て、僕は「Aと付き合った人は幸せだろうな」と思いました。
驚きの告白
そんなある夜。疲れたAを見て、大将が定食屋の仕事を休むように言ったようです。疲れているのに、家事をするために僕の自宅に彼女がいるのでは……と思い帰宅しました。部屋では、家事を終えたあとにテーブルで寝落ちしているAの姿が。
Aをそっと起こし、軽く会話をしていると……その中で、彼女がぽつりとつぶやいたのです。
「なんか最近の私ついてないなあ。だって、好きな人に寝落ちしているところを見られちゃうなんて、最悪……」
Aの発言に、僕は思わず「好きな人?」と聞き返しました。僕の言葉にAはハッとして、顔を真っ赤にして立ち上がり、あわてて部屋を出ていってしまいました。
そして翌日、彼女からは「家事はもう大丈夫ですよね」とだけ書かれた短いメッセージが届いただけでした。
このままだと、Aと気まずい関係になってしまう。それは嫌だ……。そう思った僕は、もう一度Aと話をしようと決めました。
まさかの勘違いとすれ違い
その夜、僕は相談するためにBに会いました。実は、Bは僕の妹なのです。会社でも、少数の人以外はこの事実を知りません。
「きっと、ちゃんと言えば伝わるよ」
そう励ましてくれたBと会っていたところに、なんとAが現れて……
「好きです!!!」
叫ぶように僕に告白してきたのです。
「もしそちらの女性とお付き合いしているなら、きっぱり諦めます!」
「ち、ちがう! Bは僕の妹なんだ!」
Aの表情がみるみる変わっていきました。
実は、Aが僕に塩対応をしていた理由。それは以前、僕とBが映画館でホラー映画を見ているところを偶然見かけたからだったのです。
「仲が良さそうだったから、彼女だと思って…」
どうやらAはBのことを僕の彼女だと勘違いしていたようで、Bに嫉妬していたとのこと。
そのため僕にだけ塩対応になっていたのでした。
「僕は、Aのことが好きだよ」
僕の告白に対して、Aは「私も」と答えてくれたのです。
そして今
あの夜以来、僕たちは恋人同士になりました。
定食屋には今も変わらず通っています。たまに妹のBも来て、3人でわいわい食事をすることもあります。
笑った顔も、照れた顔も、どれも僕にとって特別な彼女。
これからもずっと、その笑顔を近くで見ていたいと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されてないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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