幼い日の約束と突然の別れ
僕にはかつて、A子という幼なじみがいました。
僕とA子は近所に住む幼なじみで、小さいころからずっと一緒でした。僕は10歳のとき、A子が好きだということを自覚し、自分の気持ちをA子に伝えました。A子も同じ気持ちでいてくれたようで、「この先もずっと一緒にいよう」という約束を交わしたのでした。
小学校でも一緒にいる僕たちを見てからかう人もいましたが、A子と日常を過ごせる楽しさと比べたら、まったく気になりませんでした。
しかし、小学校卒業と同時に彼女は突然引っ越すことに。
「私のこと、忘れないで!」
「必ず再会して、そのときは絶対結婚しよう!」
それが、僕とA子が交わした最後の約束でした。
人気モデルが言った“結婚予定の幼なじみ”は…?
そんなA子は、今や人気モデル。10年前までは誰よりも僕の近くにいた幼なじみは、テレビの向こう側の遠い存在となってしまったのです。
このとき新卒で社会人として働き始めていた僕。仕事の昼休みに休憩室でコーヒーを飲みながらテレビを眺めていたときのこと。画面には、A子がスタジオで楽しそうに話している姿が映っていました。
「幼なじみと結婚予定なので」
A子の唐突な発言に、僕は思わずコーヒーを噴き出してしまいました。僕以外に幼なじみなんていたか……? と思い、テレビを凝視しているとA子が続けて言います。
「小学6年生のとき、引っ越す前に約束したんです。絶対に結婚しようって」
その言葉に、僕は10年前に交わした「結婚の約束」を思い出したのです。
突然の訪問者と、再開の瞬間
A子がテレビで驚きの発言をしてすぐ、SNSでは“A子と結婚予定の幼なじみ”として僕が特定されかけ、過去の写真まで流出。元同級生が、「あの子たち、ずっと一緒にいた!」なんて噂を流していたのです。そんな騒動のさなか、自宅のインターホンが鳴り、見に行くと……。
画面越しに現れたのは、なんとA子でした。
「久しぶり」と言うA子は、泣きそうな顔で頭を下げながら「私がテレビであんなこと言ったせいで…。迷惑をかけてごめんなさい」と続けました。
「きっと嘘だとわかったら騒ぎもおさまるだろうから」と帰るように伝えましたがなかなか帰らないA子。
「結婚の約束は、嘘だったの? 私はずっと好きだったのに…」
彼女の悲しそうな顔を見て、僕は小学校を卒業してから気が付かないふりをしていた自分の感情を自覚しました。僕はA子が引っ越した後もずっとA子のことが好きで、A子を忘れられずに他の人と付き合うこともできなかったのです。そう伝えるとA子はうれしそうに「結婚を前提に、私とお付き合いしてほしい」と言ったのです。
それでも素直になれなかったワケは
A子の唐突な発言に、約束を大切に思ってくれていたうれしさもありましたが、簡単に付き合うことを承諾できませんでした。
約束をしたにもかかわらず、10年間で1度も連絡はなく、突如消えたA子に対する怒りや悲しみが消えなかったからです。
僕が「どうして連絡をくれなかったのか」と聞くと、A子は事務所のルールで連絡することができなかったと言います。
僕は反対しましたが、A子は涙ぐみながらも、諦めることはしませんでした。
「もう1秒だってあなたと離れていたくない。今後、あなたが私の顔を見たくないというのなら、私はこの部屋から出ていく。そうしたら、もう2度とあなたの人生には関わらないから」
そんな彼女の覚悟を前に、僕は彼女を追い返すことはできませんでした。「そばにいてくれるだけで良い。これから好きになってもらえるように努力するから」と告げる彼女に僕も真摯に向き合う必要があると覚悟を決めたのです。
彼女の“努力”と、僕の知らない10年間
こうして僕たちはマスコミの騒ぎが収まるまでの数日間、ホテルに滞在することになりました。
スチーマーでの肌ケア、インナーマッスルを鍛えるピラティス、朝はスムージーだけ。A子の生活を間近で見た僕は、A子の見た目の美しさの裏にとてつもない努力があることを知ったのです。
「離れてた10年間、あなたがどんなことをしていたのか知りたい」
「僕も、A子がどうしてモデルになったのか、どんな苦労をしてきたのかが知りたい」
僕とA子がお互いのことを夢中で話していたそのとき。「ピンポーン」とインターホンが鳴りました。出てみると、そこにはA子のマネージャーの姿が。
マネージャーからの警告と僕たちの答え
A子のマネージャーは僕とA子が一緒にいることを確認するなり、
「A子は今、モデルとして大切な時期です。お願いですから、彼女に関わるのはやめてください」
と一言。彼女は売れっ子の人気モデル。今の時期が大切で、僕と一緒にいることで彼女の経歴に傷を付けてしまうのではないかと考えたこともありました。
しかし、10年越しに再会した幼なじみを、簡単に手放すつもりはありませんでした。
「もし僕がA子の障壁になるなら、もう会いません。でも、もし支えになれるなら…そばにいたい」
僕が迷いなく言うとA子も続けて言いました。
「仕事が大変なとき、あなたとの約束を思い出して頑張っていたの。私の支えになるのはあなたしかいないから、一緒にいたい!」
A子の譲らない力強い言葉に、マネージャーもついに押し負けたのでした。
そして3年後
そして、次第に僕とA子はファンの間でも幼なじみカップルとして有名になっていきました。A子とデート中にファンから声をかけられたり、SNSに2人の写真を載せたりすれば「仲良しでうらやましい!」なんてコメントが多く届きます。僕たちは、ファン公認のカップルとなったのでした。
そして僕とA子が思わぬ再会をしてから3年後。
「A子、愛してるよ」
「わたしも…愛してる」
3年前の“結婚予定”発言は本当のことになったのです。人気モデルなだけあって、結婚式には多くの芸能関係者やリポーターも出席していました。リポーターの前で、彼女は笑顔で語ります。
「今では、男性芸能人と目を合わせたらダメとか、キスシーンはNGとか、やきもちまで焼いてくれるようになって、とってもうれしいです♡」
「なんでも赤裸々に話すのやめて!!」
こうして僕たちは10年前の「結婚の約束」を果たすことができたのでした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されてないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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