「家族」にあこがれて
実は、私には複雑な事情によって家族がありませんでした。初めて義実家に挨拶に行ったときの衝撃は忘れられません。
まずは当たり前のように「おかえり」と言うお義母さんに、これまた当たり前のように「ただいま」と返す彼氏(夫)。この3秒足らずのやりとりに、当たり前ながら親子なんだなぁ、とグッときました。
また、通されたリビングには使い古された食器棚がどしんと構え、ここに暮らした家族それぞれの趣味が点在して統一感はありません。みんなが好き勝手モノを持ちこんで、気持ちの良い場所に置いているみたい。そんなことにも私は、「ああ、ここはみんなの家なんだ」と感じました。
使い古されたソファに思いきり寝転がる夫はとても気持ちよさそうで、家具店の展示みたいに、整えられた部屋しか見たことがなかった私は、このときはじめて「落ち着く」という気持ちがわかった気がしたのです。
経験したことのないぬくもりに、脳みそ置いてきぼり状態の私でしたが、家族愛がからからだった体には、しっかりと愛情が染みこんできて……。会って間もない義両親を前に、なぜかぼろぼろと泣きながら、私は生い立ちと胸のうちをすべてぶつけてしまいました。
「うん、うん」とただ受け止めてくれる夫と義両親の懐の深さ……そのなにもかもに、強烈な”家族っぽさ”を感じたのです。
あなたは私たちの娘
よく聞く「家族のうっとうしさ」すら憧れだった私に、義両親はこれでもかと愛を注いでくれています。人生はじめての誕生日パーティーは、義実家同居での最初のプレゼントでした。
近所に住む義姉夫婦も集まって6人で囲むバースデーケーキはきらきら光っていて、ドラマみたいな笑顔で歌ってくれる家族、ろうそくをふき消す私はまるでヒロインです。おおげさなくらいの愛情表現で私を包んで、時にちゃんと叱ってくれる。”義”なんて、曖昧さ回避のためでしかない、私の家族のお話でした。
義両親にはいきなり重たい話をしてしまいましたが、私にとって結婚は、それまでの人生をリスタートさせてくれるような、まったく新しい幕開けだったのです。選択的夫婦別姓もすすめられる昨今ですが、私にとって夫の苗字になり、家族の証を得られたような気分になったことは、なんというか、最高にスッキリした門出でした。
著者:つちやです/令和婚した夫と、義父母と4人暮らしをする30代ライター。毒親育ちの過去をもち、家族の大切さに気付かせてくれた夫との生活や、義両親との日々をつづっている。
イラスト:すうみ
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています
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