私には夫の店の手伝いの他に本業があり、在宅で仕事をしています。つわりもひどく、自分の仕事もある中、夫の店まで手伝うのはかなりしんどいのです。
最近は売上も上がってきて、学生バイトの子もいるので、私が必要とされることは少なくなりました。しかしそれでも夫は、「調味料を切らしたから買ってこい」「銀行へ入金に行ってこい」と、なんだかんだと私に用事を言いつけてきます。
役に立たないと文句を言いつつ、今まで私に店の手伝いをさせてきた夫。少しは感謝してくれてもいいのに……。しかし期待しても無駄。それどころか「もっと早くバイトを雇えば良かった」だなんて言ってきます。本当にひどい話です。
発熱した妊婦の私に…
ある日、具合が悪くて寝ていると、休みで家にいるはずの夫の姿が見当たりません。何か食べられるものを買って来てほしくて夫に連絡すると、これから友だちとバーベキューをすると言われました。
私は熱があることに加え、つわりもひどくて動けないと伝え、夫に買い物を頼みました。自分の夕食と、私にはゼリーを買ってきてほしいとお願いしたのです。
「熱くらいで大げさなんだよ。妊婦はそんなに偉いのか?」
「うつされたくないから俺はホテルに泊まる」
夫は、私を心配するよりも自分の心配。風邪をうつされたくないと言い、しばらくはホテルに泊まるそうで、もちろんゼリーを買って届けるつもりもないようです。体調を崩したのは自己責任、自分でなんとかしろと言われました。
妊娠中の発熱は、赤ちゃんへ影響してしまうこともあります。そう伝えても「甘えるな。体調管理すらまともにできないお前の尻拭いなどしない」と言ってくる夫。
体調を崩すことは誰にでもあり、私はわざと熱を出したわけでもありません。今まで私は、夫が体調不良でつらいとき、仕事が大変なとき、どんなときもサポートしてきましたが、それらはすべて『なかったこと』になっているようです。
夫は、自分は無条件に尊重される存在だと思っているふしがあり、どれだけ私が稼ごうとも大黒柱は自分だと思っています。私よりも稼いでいて、家計を支えてくれているならまだしも、『大黒柱は男が担うもの』と考え、自分のほうが偉いといつも言っています。
子どもが生まれれば、私には育児が始まり満足に働けなくなると言い、「寄生虫になるのだから、大黒柱の言うことは黙って聞け」と、とことん見下してくるのです。
こんな夫、父親はいらない!
そもそも、私が風邪を引いた原因は夫にあります。大雨の日に、店で使う卵が足りないと、強引に買い出しを言いつけてきたのです。土砂降りの雨の中、妊婦の私に買い出しに行かせるなんて異常。私がびしょぬれになったことは言うまでもありません。
しかし夫は、熱を出したのは私の管理不足だと言い張り、謝罪や感謝の言葉を口にすることはありませんでした。
「わかった」
失望した私は、夫がホテルに泊まることに返事をして、ある決意を固めました。ワンオペ確定なら、もう出産も育児も全部ひとりで乗り越えよう。こんな夫が、まともな父親になれるとは思えない。もう二度と夫に頼らないと決め、私は実家に帰りました。
「おい、どういうことだ!?」
それから数日が経ち、自宅に戻り驚いた夫から連絡が。家に私の姿も荷物もなく、テーブルには離婚届。まさかの展開に理解が追いついていない様子でした。
私が改めて離婚を告げると、「たかが言い争いくらいで……」と夫は、ため息をつきました。夫は、私が熱を出したあの日のやりとりを「ただの言い争い」だと思っているようです。しかし、私はずっと前から夫に対して不満を溜め込んできました。
私にはいろいろ雑用をさせる夫ですが、私が何か頼もうとすると断ります。熱を出したあの日、私や赤ちゃんの心配を少しもしてくれませんでした。いかに私のことを軽い存在として見ているのか、わかってしまったのです。
夫は、ひとりで子どもを育てていけるのかと、離婚を阻止しようとしてきました。ひとりで育児しろと言っていたことを忘れたのでしょうか。すでに実家で暮らすことも、シングルマザーになることも私の両親は許してくれています。両親の手を借りられるのなら、私は仕事を減らさずに済み、十分に暮らしていけます。そう説明し、私は最後に「お店ひとりで頑張ってね」と告げました。
自己管理不足は、あなたです!!
その後、夫はしぶしぶ離婚を承諾。夫と別れて数ヵ月後、私は無事に娘を出産しました。ふと気になって夫の店をネットで調べてみると、なんと娘が生まれる少し前に、閉店していました。
あとになって義両親から聞いたのですが、私が手伝わなくなったことで夫は、バイトの学生に雑用を押し付けるようになり、学生がやめてしまったそう。店が回らなくなり、イライラした態度で最悪な接客をして、お客さんが来なくなってしまい……ついには閉店してしまったようです。
「子ども生まれたらしいな……」
私も娘も退院し、生活も落ち着いてきたころ、義両親から聞いたのか夫から久しぶりに連絡がきました。今さらになって、私のありがたみを痛感したと言い、やり直せないかと言ってきたのです。やり直すだなんて考えられるわけがありません。それに、反省したそぶりを見せる理由も見当がつきます。店を潰してしまい、養育費の支払い目処が立たなくなったことに加え、収入がなくなった自分の生活費のために私の稼ぎをあてにしているから。丁寧にお断りして、二度と連絡してこないでほしいと告げました。
それ以来、夫は義両親にもまったく連絡していないようで、今となってはもう、夫がどこで何をやっているのかわかりません。つながりは、月に一回振り込まれる養育費のやり取りのみ。娘にはやはり興味がないようで、面会は一度も希望されたことがありません。娘は父親がいなくても、すくすく成長していて、私は両親と娘と幸せな毎日を過ごしています。義両親には、たまに娘を連れて会いにいき、たくさんかわいがってもらっています。
◇ ◇ ◇
妊娠中など、心身ともに大変な時期のパートナーへの態度は、その人の本質を映し出す鏡です。思いやりや感謝のない態度や発言を続けていては、いつか関係を破綻させてしまいます。相手を思い、相手のために行動したいものです。
勇気を持って環境を変える決断をしたことで、穏やかで幸せな毎日を送れるようになってよかったです。周りのサポートを得ながら、お子さんと共に素敵な人生を歩んでいってほしいですね。
【取材時期:2025年6月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。