ただひとりだけ、義母は私が働くことをよく思っていませんでした。
妻の仕事部屋に踏み込んでくる義母
私が在宅で仕事を始めるようになると、義母は「掃除だから」などと言って、勝手に私の仕事部屋に入ってくるようになりました。
「自分で掃除しますから大丈夫です。それより突然入られると、打ち合わせ中のこともありますし……」と伝えると、義母は顔をしかめ、「私が入るのが嫌だって言うの?! 嫁が仕事なんかしてるからいけないのよ!」と、聞く耳を持ちません。
夫から注意してもらいましたが、義母は怒るばかり。私は「義母と価値観が違うだけ」と自分に言い聞かせ、なんとかやり過ごしていました。
大切な書類を燃やされた日
そんなある日の午後。私は義父から「これ、大事な書類だから、書類入れに保管しておいてくれるか?」と頼まれ、『重要』と書いたメモが貼られた書類を受け取りました。
そのとき、インターフォンが鳴ったため、その書類を机に置き、玄関へ向かいました。
そして戻ってきたとき、目に飛び込んできたのは――
「紙ゴミを燃やそうと思って、一緒に燃やすものを探してたのよ~ちょうど良い紙が見つかったわ」
そう言って、なんと義母が、その大事な書類を燃やしたのです。
義母は普段から不要な紙ゴミを庭でよく燃やすので、だからこそ燃やされないように義父が『重要』というメモを貼っていたのに……!
「あっ! 何してるんですか!」と叫ぶ私。その声を聞いた夫が駆けつけ、顔色を変えました。
「母さん、なんてことしてくれたんだ! それはお父さんの仕事の書類だぞ!」
義母は「え、うそ、お父さんの書類なの!? やだ……どうしよう!!!」とうろたえだし、事の重大さに気づいたようでした。義母は、私が机に書類を置くところだけを見ていて、私の仕事の書類だと思ったようでした。
義母の告白
私は静かに言いました。
「また私の仕事の邪魔をしようとしたんですよね? もうやめてください。私は家族と自分のために働きたいんです。お義母さんの価値観を否定するつもりはありません。でも、私の生き方を否定されるのも、もう耐えられません」
夫も、「母さん、もうこんなこと、やめてほしい」としっかり言葉にしてくれました。義父は、義母が私への嫌がらせで書類を燃やしたと知り厳しく叱りつけ、「次に嫌がらせをしたら、家を出て行ってもらうからな!」と強く言いました。
義母はうつむいたまましばらく黙っていましたが、やがてぽつりと呟きました。
「昔、私も働きたかったけど、できなかったのよ。だから妬ましくて……ごめんなさいね」
義母の目にも、涙がにじんでいました。私への嫉妬が原因で、嫌がらせをしてしまっていたとのこと。私は義母の謝罪を受け入れることにしました。
新しい家族のかたち
それから、義母の嫌がらせはなくなり、仕事部屋に勝手に入られることもなくなりました。
さらに、義母は週に数回、パートに出るようになり、いきいきとしています。私が忙しい時期には、家族みんなのぶんの食事も作ってくれるなど、やさしい義母に戻りました。
夫も以前より家事を手伝ってくれるようになり、家の中の空気が少しずつやわらかくなりました。娘の笑顔も増え、今は穏やかに過ごせています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。