こんな夫ですが、出会ったころはとてもやさしかったのです。結婚してからも、率先して家事をやってくれました。それが、私が妊娠して、時短勤務や産休育休を取るようになってから、夫の中に妙な図式が出来上がってしまったようなのです。
「家事や育児は家にいるお前の仕事。稼ぎ頭は俺。つまり俺は偉い。だから俺の言うことを聞け」と言い始めました。
家に帰ってくると、子どもを気にすることなく、ソファにふんぞり返ってスマホをいじってばかり。その割に、人前ではイクメン気取り。私はモヤモヤしてしまって……。
子どものために高級車を購入!?
ある日、夫は高校の同級生を連れて帰宅。カーディーラーで営業をする彼から、車を買うことにしたのだそう。それも、高級車を……。
「子どものために買う」と夫は言いますが、どう見てもファミリー向けの車ではありません。私も仕事に復帰したばかりなので、もう少し買うのを待つように頼んだのですが、彼の前だからかいつものようには私に怒らず、「俺の貯金だけで余裕で買えるから大丈夫だよ」とやさしい口調で自慢げな表情で言います。
わが家は共働きでお財布が別なので、お互いの懐事情を知りません。夫に貯金がそんなにあったのだと知り、少し安心。私は子どもの面倒を見なければいけなかったので、それ以上、夫と彼の会話には参加できず、結局夫は私の反対を無視して、勝手に希望の車の購入契約をして、彼は帰っていきました。
それから数日後の夜、急に弟から電話がかかってきて、私は衝撃的な話を聞いてしまったのです。なんと弟は、夫が消費者金融から出てきたところを偶然見たと言います。それどころか、さらに衝撃の事実を聞いた私は『本当は車を買える貯金なんてないのでは?』なんて疑念が湧いてきました。
私はすぐにでも問い詰めたいところでしたが、この日は夫が友人をわが家に連れてきて宅飲みしていたため、私は先に寝ることに。
翌朝、私が起きるとリビングは散らかり放題。昨夜、友人と飲んだままの状態です。私は、のそのそ起きてきた夫に、たまには片付けくらいしてほしいと要求。すると夫は、いつも通り「自分は大黒柱だ」と言って、偉そうな態度を取ります。
「家事育児は低収入のお前の仕事なんだよ! やってほしいなら、俺より稼いでから言ってくれ!」と朝から絶好調の様子。昨夜、弟から聞いた消費者金融の件もあって我慢の限界に達した私は「じゃあ、今日から全部よろしく!」と笑顔で言い返しました。
昨夜、私は寝る前に夫の部屋を調べたのです。放り投げてあった仕事用のカバンの中を見ると、ぐちゃぐちゃのレシートがたくさん。そして、やはり消費者金融からお金を借りていたとわかりました。しかし取引明細に書かれた金額では、夫が購入契約した車の頭金には足りません。これは一体……?
さらに何カ月か前の給与明細も出てきて、私は夫の正確な収入を知ったのです。なんと夫の収入は、初任給に毛が生えた程度。育休明けの私よりも低かったのです。
お金を借りたあと、夫はなんと…
この日は休日だったため、私は宣言通り夫に家のことを任せて、ひとりで外出しました。子どもを任せるのは心配だったので、見守りカメラで様子を確認しながら私は用事を済ませることに。まずは、ずっと行けていなかった美容室に行って、その後は子どもの服やおもちゃなどのショッピング、カフェでゆっくり一息ついて……。
帰宅すると、散らかった部屋で夫が困り果てていました。私を見ると夫は「俺のほうが稼いでるんだから、俺のほうが疲れが溜まってんだよ! なのに俺にこんなことさせるな!」と泣きわめきます。
ピーンポーン……。
夫の大声に子どもが驚いて泣き出したちょうどそのとき、インターホンが鳴りました。援軍の到着です。突然やってきた弟に、夫はきょとんとしています。そして、消費者金融から出てきた夫を見たと、弟が話し始めると夫は見る見るうちに青ざめていきました。
弟は、そのまま話を続けます。あの日、「高収入」と聞いていた夫が消費者金融から出てきたことを不思議に思い、後をつけた弟。消費者金融を出たあと、夫は競馬場に向かい、馬券を購入していたと言います。弟から「姉に黙って借金作って競馬とは、どういうことですか!?」と迫られ絶句する夫。
今度は私が「車のお金はどうしたの? あなたの収入じゃ到底手が届かない額に思えるけど? 貯金があるようにも思えないけど?」そう問い詰めると、夫はぼそぼそと話し始めました。
「実は、貯金なんてない……だからお金を作ろうと思った。借りたお金を増やそうと思って競馬をしたけど、勘がハズれて借りたお金はもうない……」と言うのです。私はあきれて返す言葉も見つかりません。同時に離婚を決意しました。
見栄っ張り夫の面目丸潰れ
家事育児をしないだけでも夫に不満だったのに、見栄を張って黙って借金。それもギャンブルで使い果たすなんて……そんな人とは、生活していけません。私は、離婚と養育費の支払いを要求しました。
夫は泣きついてきましたが、私が事情を説明すると義両親が夫を説得してくれて、無事に離婚が成立。車は当然のことながらキャンセル。高校の同級生に見栄を張って購入を決めた車。夫の面目は丸潰れです。車はキャンセルにより違約金が発生しますが、弁護士を通して話し合い、違約金の支払いは100%夫が請け負うということで合意となりました。また、私は養育費を受け取れることになりました。
離婚して、子どもとの2人暮らしになった私ですが、ワンオペはお手のものです。夫がいたときと変わりません。でも最近、弟が近所に越してきてくれて、いろいろと手伝ってくれるので助かっています。夫と別れて大正解。今は幸せに暮らしています。
◇ ◇ ◇
夫婦は収入の優劣で上下が決まる関係ではなく、互いを尊重し支え合うパートナーです。そんなパートナーとの信頼は、何よりも正直なコミュニケーションの上に成り立つものなのではないでしょうか。家事育児のことも、お金のことも、見栄やマウントで隠さず、夫婦2人で将来のためにきちんと話し合いたいものですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。