「パーペキ」でなければ気が済まない母
私の母は、昔から「いつでもパーペキでなければ気持ちが悪い」と感じるタイプ。どんなに仕事が遅くなろうとも、どんなに翌日が早かろうとも「今日の汚れは今日のうちに」と言わんばかりに、毎日家をピカピカにしてからでないと布団に入りませんでした。どんなに睡眠時間が失われようとも、必ずです。
その上、翌日の仕事に影響を出さず仕事も「パーペキ」にこなし、また帰宅したら家事を「パーペキ」におこなうという、私から見たら超人にも近い存在でした。
そんな母のもう1つの口癖は「義務を果たさない人間に権利はない」であり、小さいころに私が少しでもだらしないことや無責任なことをしたら、烈火のごとく怒られたことを今でもよく記憶しています。
現在は私も遠方で家庭を持ち、母とはよく電話こそしていますが、夫と私の休みがなかなか合わないことから、帰省をして直接会うことはなかなかかないませんでした。
電話口の母から「最近、物忘れがひどくて」という話は聞いていました。でも、私から母に対して感じたことは「その話は前も聞いた」というような程度のもので、それは誰にでもあることだろうという認識でした。
久々の帰省で見た現実
そんな中、夫と奇跡的に数日間の休みが合うこととなり、ついに念願かなって5年ぶりの帰省をすることになりました。
母が最寄り駅まで迎えに来てくれたのですが、昔から見た目がものすごく若く見えていたこともあり、70代中盤に差し掛かっているはずなのに、見た目だけなら60代前半くらいに見えました。なんなら、5年前に見た姿とさほど変わっていないようにすら感じられました。
やっぱり母は言うほど衰えていないのではないか、と思ったのもつかの間。次の瞬間「最近、膝に力が入らなくて、車から降りるのが大変なの」と言われ、この5年の月日で確実に母が老い、衰えているのだという現実を突きつけられました。
その後も、一緒にいた数日間で母が「あれをどこにやったかしら」というようなことが何度も何度も起こりました。
また、睡眠時間を削ってまで家中を掃除していただけあって文字通り”ちり1つ落ちていない”実家にも汚れがありました。とはいえ、それでも恥ずかしながら私の家よりはるかにキレイな状態なのですが、かつての母なら血相を変えて掃除していたはずです。
母の気持ちを大事に
そんな現実を見て、私が思ったのは「この状況に一番歯がゆさを感じているのは、以前から”パーペキでないと気持ちが悪い”と言っていた母なのではないか」ということです。
私が掃除や家のことに手を出してしまうと、やり方と違うと母が怒りだしてしまったり、かえって二度手間になったりしてしまうことも懸念されましたが、何より母のプライドが傷ついてしまうのではないかと感じました。
また、壁にかかっていたカレンダーにはメモや予定もびっしり書かれていたため「忘れないようメモを取る」などの対策も最大限にされていることがひしひしと伝わってきました。それでも忘れてしまうことに、いらだちを覚えている様子も見受けられました。
そのため、お手伝いとして手を出すことや「メモを取れば?」など口を出すような「母の衰えに対する直接的な行動」はせず、最低限「汚さないようにする」ことや「母が楽しい時間を過ごせるようにする」などの間接的な行動を意識して、実家で過ごすことにしました。
まとめ
普段は電話しかしていないからわからなかったり、見た目が若いから伝わりにくかったりするものの、超人的でありパーペキな母はもういないという現実を突きつけられました。またそのことに、母だけでなく私自身もしっかりと向き合っていかなければいけないことをひしひしと感じました。
母と過ごせる残された時間は、決して短くもないですが、長くもないように感じています。母が自らの老いを通して私に伝えようとしていることを、最期の瞬間までしっかりと受け止めて学びにすることが、子どもである私の努めであり、母に対する礼儀であると感じました。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:磯辺みなほ/30代女性。ゲーマー。発達障害持ちの夫と2人暮らし。大変なことも多い中、それ以上にネタと笑顔にあふれる毎日を送っている
イラスト/sawawa
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年6月)
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