義妹夫婦はおみやげを持って、新居に遊びに来てくれました。私たちは義妹夫婦に家の中を案内することに。
「うわぁ……吹き抜けのリビング、いいなぁ……うちは賃貸だから……」と最初はうらやましそうにしていた義妹。
しかし、夫と義弟が夫の書斎に行くと言って離れ、私と2人きりになると、「あれ?」と思うような義妹の言葉が増えていって……?
バリキャリ義妹からの皮肉たっぷりな褒め言葉
「いいなぁ、夢を叶えられて……こだわりの家も、時間の余裕もあってうらやましいです!」「私たちは働くばっかりで……でも、私はずっと家にいるなんて無理そう。家事だけじゃ満足できなさそうだし、自由に使えるお金も少ないし!」と言ってきた義妹。
義妹夫婦は世帯年収3,000万円のパワーカップル。もともと義妹は、結婚を機に仕事を辞めて専業主婦になった私のことを良く思っていないようでした。ただ、こう遠回しに嫌味っぽいことを言われると……どうも私は言い返せないのでした。
「毎日ずっと家の中で過ごすのって、正直飽きません? 私には厳しいかなぁ~……専業主婦ってすごいですね!」と言う義妹に、「……買い物とかもあるし、料理もするし、飽きることはないわよ」と返答するので精いっぱいでした。
「そうなんですか! 私たちは家事も全部外注だし、そのあたりよくわかんなくって……」「それに、今どき夫の稼ぎにだけ頼るって心もとなくありません? ……あ、でもお兄ちゃんいいところに勤めてるから、関係ないかぁ。うちの旦那も、早くお兄ちゃんみたいにもっともっと稼いでくれないかなぁ~」
あからさまではないものの、専業主婦を下に見ている義妹。私は何も言えず、ただ困ったように笑うしかできないのでした。
新築での特別なおもてなし
夫と義弟と合流し、ルームツアーが終わったあと――。
「おなかすいているでしょ? お昼ごはんを用意したの」と言って、義妹夫婦を座らせ、夫とともに料理を運んだ私。「え! いいんですか! お義姉さんの料理食べるの初めて……専業主婦だし、きっとめっちゃおいしいんだろうな~」と言う言葉にトゲを感じながらも配膳しました。私の隣には、にこにこと微笑む夫。しかし、その笑顔は瞬く間に消え失せたのでした。
テーブルにつくなり、義妹は眉をひそめていました。
「……どうしたの?」と聞いても、「いえ、なんでも……」としか言わない義妹。そして結局料理には手をつけず、「やっぱり帰りますね。ほら、帰るよ!」と義弟を急き立て、うちを出て行ってしまったのです……。
専業主婦を見下す義妹の末路
義妹夫婦たちが出て行ってから10分後――。
急に帰られてキョトンとしている夫と、残された料理の間でおろおろしていた私。そこに、義妹からメッセージが届いたのです。
「お義姉さんたちの新築一戸建てのルームツアーなんて来なきゃよかった!」
「お祝いもあげたのに、私たちに安物の弁当出すとかありえないから!」
「私たちはね、稼ぎがいいだけあって、毎日いいもの食べてるの。ひと目見れば、安物の弁当を買ってお皿に移しただけだってわかるのよ!」
どうやら料理が気に入らなくて帰ったようです。思わず「わかってないじゃない……」と返信した私。
義妹から返ってきたのは「は?」というひと言でした。そして電話をかけてきたかと思えば、すごい勢いでまくしたててきたのです。
「私も旦那も忙しい中、時間を作ってお祝いのためにわざわざ来て、お祝いまで包んだのに、そのお返しがこんなおもてなしなんて失礼すぎるじゃない!」
私は義妹に答えました。
「私たちはきちんとおもてなししようとしてたのよ。それに安物弁当なんかじゃないわ」
すると義妹は「まだ言い張るのね。あ、専業主婦のくせにいつもお惣菜でごまかしてたのが、お兄ちゃんにバレそうだから必死なんだ」とあざ笑います。さらに「専業主婦として素敵なおもてなしがあると思ったのに、本当にガッカリ。もう二度と行かないから」とまで言ったのです。
するとスピーカーホンで聞いていた夫が、とうとう口を挟みました。
「安物で悪かったな。そりゃ、お前らがいつも食べてる高級料理とは違って、近所のスーパーの特売品を使っているよ」と夫。
「でもな……あれは俺が作った料理なんだよ!」
「……え? お兄ちゃんが作ったってどういうことよ!」「専業主婦の妻が作るのが仕事でしょ!?」と義妹。
夫は「俺の家族を俺がもてなすのは当然だろう」と言って、朝早くから料理の仕込みをしていたのです。「俺が作ったって言ったらびっくりするかな……喜んでくれるといいな」と言いながら作っていた夫を、私は穏やかな気持ちで見守っていました。
「俺の料理、安物弁当な見た目で悪かったな! 調理師専門学校の課題で作ったやつだったんだ。 見た目は地味だけど、習ったことをすべて注ぎ込んだつもりだったんだが……」と言葉に悔しさをにじませた夫。それもそのはず、夫は地元の料理コンテストで優勝しただけでなく、先日、調理学校の講師を自宅に招いた際に手料理をふるまったところ、腕が認められ大絶賛されたのです。義妹は「……調理師専門学校、ですって? お兄ちゃんが?」と質問してきました。「去年、会社を辞めたんだよ。そして今年から調理学校に入学したんだ」と夫。
実は、もともと調理師を夢見ていた夫。しかし、まわりの期待にこたえるため、専門学校への入学を諦め、有名大学へ進学。そのままエリートコースを突き進んでいました。
私と結婚してからも、着々と出世していった夫。ただ、その心労はかなりのものだったようです。「仕事が楽しくない……」「もっと自由な時間がほしい……」「本当はいろいろなことをやりたいのに……」と言う夫のつぶやきを聞いて、私は思わず「……仕事、辞めたら?」と言ってしまったのです。
もともとそこまで贅沢をしていなかった私たち。派手な生活をしなければ、この一軒家を建ててもなお、当分の間2人で暮らしていけるだけの蓄えはすでにあったのです。
「うちの妻は、家事も家計管理もばっちりしてくれてたんだ。それに、『いざとなったら私が働くから!』って言ってくれてる理解のある妻なんだよ……そのおかげで、俺は今、夢を追いかけられてる」と言った夫に、「そ、そんな……せっかく有名企業で働いてたのに……。エリートなお兄ちゃんが私の自慢だったのに! 調理師なんてお兄ちゃんには向いてないよ! 早く目を覚まして、私の憧れのお兄ちゃんに戻ってよ!」と義妹。その言葉は火に油を注ぐこととなりました。
「たしかに、まだまだ俺の料理技術は拙いかもしれない……。お前たちに喜んでもらえるように頑張ったけど、まさかあんな態度を取られるとは思わなかった」「わが家には二度と来るな。もうお前の顔も見たくない。俺たちの新しい生活の邪魔をしないでくれ」
義妹は「待ってよ! 私、何も知らなかったの!」「ごめんなさい!」と叫んでいましたが、夫は冷静なトーンで「じゃあな」と言って電話を切りました。
その後――。
義妹はうちの夫が会社を辞めて専門学校に通っていることを、「ありえない!」と言いながら義弟に話したそう。すると、義弟は夫に影響されたらしく、仕事を辞めると言い出したのだとか。
「お義兄さんと一緒で、俺も働くのがつらくなってきたんだ……」「俺は本当は声優になりたかったんだ。だから、お義姉さんみたいに、お前も俺を応援してくれ!」と、義弟は自前のいい声で言ったそう。義妹から「なんとかしてよ!」と言われましたが、それについては夫婦で話し合うように諭し、私たちは義妹夫婦の連絡先をブロックしました。
義両親から聞いたところによると、義弟は声優になるため、養成所に通い始めたそう。さらに、「勉強のために」と言ってアニメ関連のものに浪費しているのだとか。
世帯年収が半分以下になったうえに、支出が増え、家事を外注できなくなった義妹は、義両親に「手伝ってよ!」と泣きついてきたそうです。すべてを知っている義両親は、「自分たちでなんとかしなさい」と断ったと言っていました。
私たちはようやく、念願の新居で落ち着いた生活を送れています。夫が「練習だから」と言って3食おいしいごはんを作ってくれるので、私の家事の負担も減りました。これからも夫婦仲良く、つつましく暮らしていくつもりです。
【取材時期:2025年5月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。