私は不幸の象徴!?
ある日、義妹から電話がかかってきました。用件は私の婚約破棄について。「婚約破棄されたって本当ですか……?」と言いづらそうに聞かれたので、私は一部始終を話しました。
それを聞いた義妹は「ひどい! 耐えられない!」と言い、 「気分が乗らなかったら、私たちの結婚式も欠席でいいですからね」と私を気遣ってくれました。しかしそれとこれとは話が別。「せっかくの弟の結婚式なんだから、必ず参加するね!」と返しました。
すると、義妹は「でも……」と言って譲らず「お義姉さんの事情を知ってる人も来るかもしれないし……」「当日は来るのをやめて、別の日に写真だけ一緒に撮りましょう」と頑なに私の参加を避けるような口ぶりです。
どうやら私を気遣っているのではなく、私に来てほしくない様子……。まるで、婚約破棄された私が不幸の象徴かのようです。たしかに、昔は結婚式のようなお祝いごとの席には「不幸が伝染する」と考えられ、婚約破棄や死別を経験した人を招待するのは縁起が悪いとされる風習もあったようです。
そうはいっても、そんな扱いをされる筋合いはないので、「まわりの人もわざわざお祝いの場で私のことを言ってこないと思う。だから、できれば最後まで参列したい」とはっきり伝えました。
義妹は渋っていましたが、「お願い、弟の晴れ舞台を私に見せて!」と言って押し切ると「できるだけ私たちの結婚式はハッピーな感じにしたかったのに……」と呟き、電話を切りました。
弟からの「一生のお願い」
その数日後、今度は弟から、結婚式のことで話があると言って電話がかかってきました。
「結婚式、ちょっと予算オーバーしちゃってさ……。それとなく聞いたけど、慰謝料で少し余裕あるって……ご祝儀、少し多めにしてもらえないかな?」
弟からのとんでもない要求に、思わず「はぁ?」と言ってしまった私。すると弟は焦ったように、「姉ちゃん、自分の結婚式費用も貯めてたし、ずいぶん余裕あるだろ!」「俺たちが姉ちゃんの分まで幸せになるからさ! 一生のお願い!」と言ってきたのです。
まるで、私がこの先一生幸せになれないかのよう。私がどんな気持ちでいるかも知らないで、こんな要求をしてくるなんて……。
私は弟に幻滅しながらも「考えておく」とだけ言って、電話を切りました。母に愚痴をいうために連絡をしてみると、弟夫婦はご祝儀をあてにして、相場より少し多く包むであろう親族を多く招待し、相場通り包むであろう友人はあまり招待していないそう。そんなことを考える弟夫婦に少しガッカリしました。
私は招かれざるゲスト!?
1カ月後の三連休中日、ついに弟夫婦の結婚式がやってきました。私は相場よりも少しだけ多くご祝儀を包み、式場に向かうと、私以外には誰もまだ来ていなかったようでした。
挨拶をしようと思い、新郎新婦の控室を訪ねると、義妹が支度中でした。鏡越しに私を見た義妹は「来てくれてありがとうございます! でもお忙しいと思うので長居は無用ですからね!」とあまりに失礼なひと言。
当日を迎え、きれいなドレスを着たら気が大きくなったのでしょう。「せっかくのおめでたい席に"負のオーラ"を持ち込まれても迷惑なんです」「不幸が伝染する前にご祝儀を置いて帰ってください♡」とまで言われてしまいました。
それでも式の開始を待っていると、母が「披露宴、家族しか来てないのよ……」と不安そうに言いました。話を聞くと、直前の体調不良や、連休でどうしても外せない用事が入ったなどの欠席の連絡が続いたそう。
それぞれが「自分くらいはいいだろう」とドタキャンしたのでしょう。しかしそれは弟夫婦の自業自得。自分は人に祝儀とはいえお金を払いたくないと、ドタキャンばかりしてていたツケがまわってきたのです。
そんな状況でも、私を目にして舌打ちする義妹。私は、自分が歓迎されていないことを痛感しました。なんだか私もお祝いをする気持ちがなくなってしまったので、スカスカになった披露宴会場を横目に、私は式場を後にしたのです。
友人にボイコットされた結婚式
結局弟夫婦の結婚式には、お互いの両親と親族しか来なかったと母から聞きました。
招待した友人たちは皆欠席し、会場は身内ばかり! 私とも仲が良い弟の友だちに後から聞いた話では、中には、義妹の「前の彼女さんから奪っちゃったんですよ~」と悪気なく笑う様子を見て祝福する気分を失くし、欠席した人もいたようでした。
これは私もびっくり! 弟に長年付き合っている彼女がいたことは、もちろん私も知っていました。彼女とのお付き合いに区切りをつけてから、義妹との交際を始めたと思っていたのですが、そうではなかったようです。彼女の境遇につい自分を重ね合わせてしまい、私は腹が立って仕方ありませんでした。
弟夫婦の末路
お金がない上、予算管理が甘かった弟夫婦。当てにしていた友人からのご祝儀分のマイナスをどうにかまかなったことで貯金は尽き、新婚旅行もキャンセルしたそうです。
人との約束を簡単にドタキャンしたり略奪を悪びれずに話したりしていたという義妹……。招待客が来なかったのは自業自得でしょう。私も他人事とは思えず、彼らとは距離を置くことに決めました。私からのご祝儀は、手切れ金だと思うことにしています。
母によると、その後も弟夫婦は友人たちから距離を置かれ、夫婦仲もうまくいっていないそうです。人のものを奪ったところで本当の幸せにはたどりつけないのかもしれませんね。
【取材時期:2025年7月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。