パート先の突然の休業
パートとはいえ、数万円は稼いでいた私。ちょっと外食するには十分な金額でした。
「一緒に喜んでほしかったんだけどな」と言うと、「どうせ主婦のガス抜き程度だろ? カフェでのパートってコーヒー運んで皿洗って……働いてるって言えるのか?」「たった数万円でそんなドヤ顔ができるなんて、大したもんだな」と夫は鼻で笑ったのです。
家事と育児をしながら外で働くことは、私にとって大きな決断でした。それにカフェでの接客は立派な仕事です。たしかに夫の給料と比べたらまだまだ少ないですが、それでも夫から「頑張ったね」くらいは言われたかったのです。
しかし仕事に慣れてきたころ、私が働いていたカフェの一時休業が決まりました。どうやら予定していた改装が、業者さんの都合で早まったのだとか。
一時的に仕事がなくなってしまうのは残念ではありましたが、気持ちを切り替えて、お休みの間にコーヒーの勉強をすることにしました。
それを聞いた夫は「本当に改装なの? 体よくお前をクビにするための嘘なんじゃないの?」と決めつけて笑います。私の話を信じることもなく、私のことをダメだと決めつける夫。私は何も言い返さず、くちびるを強く噛み締めました。
思ってもみないチャンス!
数週間後、パート先の店長から連絡が入りました。それはなんと、改装予定だった店舗とは別に、新しくオープンする店舗のオープニングスタッフへのお誘い。社長が力を入れて準備を進めている新店舗で、スタッフも選りすぐりのメンバーが集められているとのことでした。
私は2つ返事でOK! 夫には認められませんでしたが、一緒に仕事をしていた店長からは信頼を得られたことは本当に嬉しかったです。自分の努力を認めてくれる人がいるんだと感じ、私の中に少しずつ自信が戻ってきました。
新店舗は子育て中の女性に寄り添ったものにしたいそうで、子育て経験のある私も、参考意見を伝える立場として会議に参加することになりました。
そこで詳しく話を聞いているうちに、私のパート先のカフェを運営する会社は、夫の取引先だということが判明! 今回のカフェのオープンに向けて、そのコンサルティングをどこに頼むか迷っているそう。そこで、コンサルティングのコンペに参加する会社に夫の勤務先があることに気づいたのです。
不正を要求する夫
その日の夜、新店舗のオープニングスタッフになることや、店舗のコンサルを決める会議に参加することを夫に話した私。どうせいつもどおり話半分でしか聞いてくれないだろうと思っていたのですが、コンペのことを話し始めた瞬間、夫の目の色が変わりました。
「そのコンペ、俺が任されてるんだ……。昇進もかかってる」「お前、意見できるんだろ? どうにか俺の案を通してくれないか?」
私は一瞬言葉を詰まらせましたが、「それはできないよ。私の立場がなくなるから」と、ハッキリ断りました。
「そこをなんとか! 俺が昇進すれば、お前だって働きに出なくても済むだろ? つまらないパートなんかに時間を割かなくてよくなるんだぞ?」と夫。私なりに誇りを持ってやってきた仕事を「つまらないパート」と言われ、私の我慢も限界でした。
「悪いけど、コンペで不正はできない。あなたはあなたの実力で勝負して。私が口添えすることはない!」と言って、私は話を終わらせました。
卑屈になった夫は…
結局、コンペは社長が目指していた「ママの息抜きの場」を本気で目指していることが伝わった会社に決定。私も異論はありませんでした。
コンペに夫が出してきた案は、どこからみても男性目線。女性や家族連れの視点はほとんど持ち合わせていませんでした。もちろん昇進の話はナシ! 夫が狙っていたポジションには、ライバルの同期が就任したのでした。
新店舗がオープンしてしばらくはてんてこまいでしたが、そのときの私の働きぶりが良かったようで、私は店長から「ホール責任者候補として正社員にならないか? 社長にも話してみるよ」とお誘いを受けました。今までの頑張りは無駄じゃなかった……そう思えて、涙が出そうになりました。
昇進を逃し、私が正社員になったことを知った夫は卑屈に……。「どうせ、カフェの給料なんて大したことないだろ」「俺の価値が理解できないカフェなんて長く持たない」などと毎日言われてストレスが溜まる一方でした。
さらに、正社員同士、仕事をしているのだから家事を分担したいという私の申し出は無視! これまで以上に家事をしなくなり「最近正社員になったばかりのくせに、大きな顔をするな」とまで言われる始末。
夫との生活がだんだんと負担になってしまったので、私は子どもを連れて家を出ました。今は離婚に向けて動いています。子どもと2人の新生活は決して楽なものにはならないでしょう。ただ、今の私にはやりがいのある仕事があります。子どもの成長とお店の発展、毎日充実した日々を送っています。
【取材時期:2025年7月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。