更年期によくある感情の起伏とその背景
更年期症状はほてりやのぼせ、発汗のほかに関節痛や筋肉痛、情緒不安定、無力感など多岐にわたりますが、個人差が大きかったり日によってムラが出たりするのは、更年期ならではの特徴とも言えます。その理由は、女性ホルモンの一種であり、月経や妊娠、女性らしい体の発達(乳房の成長など)を助ける働きがあるエストロゲンが日によってゆらぎながら減少していくため。常に一定ではないため、調子が良いときもあれば悪いときもあるのが自然なのです。
特に1日の中で気分ムラが出やすいのは、朝方。本来人間の体は、夜間は心身をリラックスさせる副交感神経が優位となっていますが、朝方には活発に行動できるように交感神経が優位な状態になります。しかし、更年期に差しかかるとホルモンバランスの乱れによって自律神経の切り替えがうまくいかなくなり、朝方になっても体が休息モードから抜け出せず、だるさを感じたり、気分が落ち込みやすくなったりするのです。
更年期は思考やライフスタイルを見直す時期
身体的・精神的な変化が訪れる更年期は、親の介護が必要になったり仕事での責任が増したりと、人生の転換期と重なるケースも少なくありません。精神的な負担に加え、女性の健康を支えるエストロゲンが減少するため、今までと同じように頑張れない可能性もあります。結果として、物事がうまく進まず、自分を責めてしまう人もいるでしょう。
しかし裏を返せば、頑張れなくなったということは、思考やライフスタイルを見直す時期に差しかかっているということ。完璧を求めるのではなく、優先順位の低いものは手放す・周囲にサポートを求めるなど新たな価値観を獲得しつつ、これまで無理をしてきた自分をいたわる時期に来ています。
思考を変えるのは簡単ではありませんが、「誰かの力を借りてもいいんだ」「ひとりで頑張らなくてもいいんだ」と思うことは、更年期と向き合う上でとても大きな一歩です。思考やライフスタイルをアップデートすることは、これからの人生をより健やかに、より自分らしく過ごすきっかけになるでしょう。
更年期における感情の波をなだらかにするセルフケア
更年期の気分ムラを和らげる方法は、いくつかあります。
・投薬治療:婦人科医や精神科医によるアプローチ。ホルモン補充療法(閉経などで減少した女性ホルモンを薬で補い、更年期症状を和らげる治療法)や漢方薬、向精神薬などで心身の不調の改善を目指す。
・カウンセリング:カウンセラーが専門的な知識に基づいて、気持ちの整理をサポート。
・セルフケア:自分でできるケア。生活習慣の見直しなどで規則正しい生活を心がけ、自律神経を整える。
今回は、自宅で実践できるセルフケアについて、具体的な方法を紹介します。無理なく続けられる範囲で、心と体を整える習慣を取り入れていきましょう。
質の高い睡眠
睡眠不足は感情を不安定にし、自律神経を乱す一因となります。そのため、更年期特有の気分ムラや不安感を和らげるには、睡眠の質を高める工夫が重要。なるべく毎日同じ時間に起床、就寝することを心がけ、生活リズムが一定になるよう意識しましょう。
また、就寝前のスマホやパソコンの使用はNG。眠れない夜についやってしまいがちな習慣ですが、スマホやパソコンによる刺激は脳の覚醒を促します。良い睡眠を得るためにも、寝る1時間前には使用を控えるようにしましょう。
栄養バランスの整った食事
食事は心と体の健康維持に欠かせません。栄養バランスを意識した食事を、3食きちんと食べるといった基本的なポイントに加え、更年期の女性におすすめなのが大豆製品を積極的に取り入れることです。
大豆製品に含まれている大豆イソフラボンはエストロゲンと似た作用を持ち、更年期特有の不調を和らげるのに役立つとされています。ただし、大豆イソフラボンは体内に貯蔵することができず、1~2日で排出されてしまうのが難点。豆腐や納豆、豆乳など、手軽に続けられるものを毎日の食事に取り入れると良いでしょう。1日の目安としては、1食に納豆1パックを取り入れれば、そのほかは味噌汁やコップ半分程度の豆乳で補うことができます。
適度な運動
適度な運動は、女性ホルモンのゆらぎに影響を受けにくい体づくりをサポートしてくれます。中でも、ウォーキングやヨガ、水中歩行などのうっすらと汗をかくような軽い運動がおすすめです。
適度な運動は、心身の解放感やリフレッシュにつながり、自律神経を安定化させることがわかっています。そのほか、ストレス耐性を付けたり、抑うつ症状を和らげたりする効能も。慣れないうちはストレッチや体操など、簡単な運動で構わないので、無理のない範囲で体を動かすことを習慣にしていきましょう。
感情日記や気分記録アプリの活用
感情日記や気分記録アプリなどを使用し、日々自分が抱いている気持ちを書き出すと、心の状態を客観視することができます。特に、普段から自分の気持ちを抑えてしまうタイプの人は、感情の表現やストレスの発散が苦手な面も。うれしいときや悲しいとき、落ち込んだとき、ありのままの感情をアウトプットするだけで、気持ちが軽くなる場合もあります。
記録の仕方は自由なので、ノートに書き出すも良し、日記アプリを活用するも良し、自分に合う方法で構いません。大切なのは、自分の感情を否定せずに受け止めること。それが結果として、自分をいたわることにつながります。
誰かに気持ちを話す
イライラや不安感をため込まずに人に吐き出すのも、心の負担を軽くします。気持ちを打ち明けられるのなら、専門家や医師でなくてもOK。家族や友人などの信頼できる人に聞いてもらえるだけで、精神的に落ち着くでしょう。
ただし覚えておきたいのは、家族や友人は話を聞くプロではないという点です。同じ内容を繰り返し話したり、ネガティブな感情ばかり吐き出されたりすれば、聞き手がつらくなってしまう可能性もあります。お互いの関係性を悪化させないためにも、医師への相談を検討しましょう。
年齢にかかわらず女性が不調を感じたときは婦人科、気分ムラが続いてしんどいときには精神科、ストレスなど体の不調が感じられる場合は心療内科を受診するのがおすすめです。また、カウンセラーなどの専門家に頼るのも良いでしょう。
まとめ
更年期の不調は、ホルモンバランスの変動によって引き起こされる自然な現象です。気分の浮き沈みが激しいからという理由だけで、自分を病気と決めつける必要はありません。大切なのは、我慢することではなく感情との向き合い方を知ること。もちろん、症状が強い場合は医療機関を受診する必要がありますが、この記事で紹介したようなセルフケアを取り入れれば、気分の波をなだらかにできる可能性もあります。更年期は、自分の心と体を見つめ直すための大切な時期です。ひとりで抱え込まず、適切なケアを取り入れながら、穏やかに過ごせる方法を探っていきましょう。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
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取材・文/生垣育美
産科・婦人科領域の医療現場において医師の事務作業を専門にサポートする産婦人科ドクターズクラークとしての勤務を経て、第1子出産をきっかけにWebライターへ転身。夫・息子と3人暮らし。やんちゃな息子に振り回されながら、なんとか仕事と家庭を両立させる日々……。