欲に任せて離婚した同級生
あんなに仲が良かったのに、まさか離婚したとは……。私は彼女の話を聞くことにしました。
「彼、働かなくていいって言ってくれたけど、今どき年収1,000万じゃたりないじゃん? やっぱ、2,000万以上はないと専業主婦なんて無理だよね!」と笑う友人。年収1,000万でも充分、元旦那様は頑張っていたのではと思いますが、彼女は満足いかず離婚したそう。続けて「まわりにいい男がいたら紹介してくれない? もちろん、年収2,000万以上じゃないとダメよ!」と言ってきたのです。
私は苦笑いするしかありません。たしかに収入もひとつの判断材料になると思いますが、それだけでお付き合いする人を選ぶ彼女の感覚は、私には理解し難いものでした。
さらに「あ、でも、あなたまだ独身かぁ……。まぁいいや。自分の彼氏探しの前に、私の相手探し手伝ってね!」と言ってきた彼女。しばらく連絡をとっていなかったので知らなかったようですが、私はすでに既婚者です。「私、結婚してるよ? 去年入籍して、今は夫と2人で暮らしてる」と伝えました。
次に聞こえたのは「……は?」と、不可解そうな彼女の声でした。学生時代、学年一の美人と言われていた彼女。私は彼女の引き立て役のひとりでした。地味で真面目なことしかとりえのない私は、彼女からバカにされることもしばしば……。そんな私が、まさか結婚しているとは思わなかったのでしょう。
「……嘘でしょ? あんたが!? 相手はどんな男!? 年収は?」ここでも年収を聞いてくる彼女に若干呆れながらも、私は「やさしい人だよ。私にとっては最高の夫」とだけ返したのでした。
友だちの夫にアプローチ!?
数日後、夫が「この人知ってる? 急にDMが来たんだけど……」と戸惑った表情でSNSのアカウントを見せてきました。そのDMの送り主は例の友人です。もちろん夫の名前やSNSのアカウントなどは教えていませんでしたが、私のSNSをたどって見つけたのでしょう。
メッセージの内容を見ると、友人は明らかに私の夫にアプローチをかけていました。「奥さん地味で飽きるでしょ?」「誰にも言わないから、今度ごはんでもどう?」などと平気で言う彼女にはゾッとしました。
私は恥ずかしさと申し訳なさ、そして同級生への怒りでいっぱいになりました。夫は変なアカウントだと思ってすぐにブロックしたようですが、まるで私を知っているかのような彼女のメッセージを見て不安になり、私に報告してくれたそうです。
夫に、友人が迷惑をかけたことを詫び、一部始終を説明しました。「学生時代から地味で冴えない私が結婚して幸せそうなのが気に入らなかったんだと思う」と言うと、「それは失礼すぎるでしょ……」と夫。明らかに彼女にひいていました。
自意識過剰なSNSにうんざり
夫がアカウントをブロックしてからも、友人の行動はなぜかエスカレート。
おそらく、他の同級生たちに私がどんな暮らしをしているのか聞いたのでしょう。彼女のSNSには、私が住んでいるタワマンを写して「このタワマンも~らい!」と書いた投稿や、自撮り写真に「年収3,000万の旦那は私のものよ」と書いた投稿などがたくさん並んでいます。
さらに、夫の会社の前で待っていた日もあって、常識では考えられない行動に驚きました。夫と目が合って「運命を感じた」とまで言ったそうです。夫は適当にあしらったと言いますが、その日の彼女のSNSには「運命の人との出会いがあった♡ 彼はシャイなので恥ずかしそうにしていたけど、落とせるのは時間の問題」と投稿されていました。
その投稿を見て、私たちは呆れるしかありませんでした。
その翌日、友人から電話があり、弾んだ声で「あなたの旦那、もう少しで振り向いてくれると思うんだよね〜。あとはタイミングかなって!」と言われました。
夫のことは疑いたくありませんが、私は少し動揺してしまい「何言ってるの? 私の夫があなたと浮気なんて、バカなことするわけないでしょ!」と声を荒らげてしまいます。そんな私に、彼女は気を良くしていました。
「私を見るあの目でわかる! 彼は私に気がある!」と彼女は続けます。話を聞いていると、おそらく友人と夫の間には何の関係もないでしょう。やはり彼女の思い上がりに違いありません。
少しでも疑ってしまったことを後悔しながらも、私は引き続き困惑していました。どこからそんなに自信が出てくるのでしょう。
略奪女の勘違い
「年収3,000万がどこから出てきた数字かは知らないけど、わが家の大黒柱は私! 夫は私を支えながら家事をすべて引き受けてくれているからそれ以上の価値のある人だけど、彼の収入ではあのマンションの家賃は払えないの」
「そんなの私に諦めさせる嘘でしょ? こんなに地味なあなたがありえない!」と友人。地味な見た目と年収は関係ないと思うのですが、彼女はそうは考えていない様子。今の私の年収は、私がコツコツ努力を続けてきた結果です。
「うちの夫を狙っているのかもしれないけど、あなたが思い描いている暮らしはできないかもね」と私。すると友人は「お金があるからって偉そうにしないで!」と逆ギレします。勝手に勘違いしたのはそっちなのに……。
そうは言っても私の収入は彼の支えがあってのもの。彼女に渡すわけにはいきません。「今後、二度と私の夫に関わらないでくれる?」と言うと、彼女は悔しそうにブツブツ言うばかり。話にならないと思い、電話を切りました。
略奪女の手のひら返し
翌日、一件落着したかと思いきや、またもや友人から電話がありました。「昨日はごめんね」としおらしく話す彼女。反省したなら許そう……と最初は思っていました。
しかし用件は謝罪ではありませんでした。「それで……お願いがあるんだけど。誰か年収2,000万以上の男、紹介してくれないかな? 経営者仲間、いるでしょ?」私はため息をついて、「悪いけど、あなたに紹介できる人はいない」と答えました。
「あと、あなたの元旦那様、共通の経営者仲間がたくさんいて時々話題に上がるよ。今勢いあるよね! 年収2,000万なんて余裕なんじゃないかな」と追い討ちをかける私。経営者仲間に聞いた話では、年収のことをバカにされ離婚したことをきっかけに、彼はかなり頑張ったよう。とある資格をとってバリバリ仕事をしているそうです。
「え……?あいつ、転職したの!? ……でも、それって私がきっかけを作ってあげたんだから、私のおかげじゃない!?」と彼女。また自分にとって都合の良い方向に解釈しているようです。
嬉しそうに「久しぶりに連絡とってみる」と話す彼女。きっと相手にされないでしょうが、これ以上話しても無駄だと思い「まぁ頑張って!」と伝えて電話を切りました。
逃した魚は大きい
その後、経営者の交流会で友人の元旦那様に出会った私。元妻の友人だと聞くと、愚痴が止まりませんでした。
友人はあの後すぐに連絡を取り、復縁を迫ったそうです。当然、彼はきっぱり断ったとか。それでも「今の成功は私のおかげ。そのお礼として毎月いくらかちょうだい」と、厚かましいことまで言ってきたそうです。さすがに呆れてしまいました。彼が困惑しきって話す姿は、冗談では済まされないレベルで、あまりに気の毒でなりません。
私の夫のように、友人も旦那様をしっかりサポートしていたら、願っていた年収2,000万円の生活が手に入ったのかもしれません。そんなことをふと思いながら、友人の元旦那様に法律に詳しい知人を紹介し、会話を終えました。
それ以来友人のことを避けているので、彼女が今どうしているかはわかりません。もし次に結婚する機会があるのなら、しっかり相手を支えてほしいなと願うばかりです。
【取材時期:2025年7月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。