両親の思い出が詰まった大切な実家に…
「すっかり気に入っちゃったわ! 娘も2階の書斎を気に入ったみたいで、そこを自分の部屋にしたいって! 引っ越しはいつにしようかしらね?」と義母。義妹に至ってはスマホで家具を探し始めていました。
何の話か理解ができませんが、義両親と義妹が私の実家に住もうとしていることだけはわかります。
「何の話かよくわかりませんが、勝手に見てまわらないでください……。片付け中なので、用事が済んだらお帰りいただけますか?」と私。すると義母は「なんでそんな他人行儀なことを言うの? ご両親だって親戚である私たちがこの家で楽しく暮らしたら嬉しいに決まってる!」と言い張るのです。
遺品整理が済んだ後は、今住んでいる1DKの賃貸を出て、夫婦2人で実家に引っ越すつもりでいました。そう伝えると義母は、夫が義母たちに引っ越しと同時に同居を持ちかけたと言うのです。私は、夫に電話で確認してみることにしました。
同居は私のため?
「どういうこと!? お義母さんたち、私の実家に引っ越してくるって言ってるんだけど!?」と聞くと、夫は「俺なりにお前のことを考えて声をかけたんだけど?」と言います。
夫の言い分では「両親を一気に亡くして寂しいだろ? 特に実家ってご両親との思い出の場所だし、お前にとってつらい場所になると思うんだ。でも、みんなで暮らすようになれば、そこに新しい思い出ができて記憶も薄れていくんじゃないかなって!」とのこと。たしかに寂しいのは事実ですが、両親のことを忘れたいわけではありません。
両親との思い出が詰まった家を、当然のように使おうとする姿に強い嫌悪感を覚え、「実家にお義母さんたちを住まわせるつもりはないからね」とはっきり拒絶しました。
「広い家に俺たち家族だけなんてもったいないだろ! にぎやかなほうがいいに決まってる!」と夫は譲りませんが、私も折れたくありません。
「すぐに帰るように言って!!」と強く言うと、急に夫は丁寧な口調になって「俺の家族も困ってるんだよ……だからそんな冷たいこと言わないでくれ。実は、タイミングを見て話そうと思ってたんだけど、俺の親も妹ももう居場所がないんだよね」と衝撃の告白!
どうやら義父は1年前に仕事を辞めていたよう。もともと借金もあったため貯金も底をついて、実家はすでに手放したとのこと。今は3人で狭いアパートに身を寄せているそうです。
義父の再就職は難航し、義母は働く意志が見えず、義妹は気まぐれなフリーター……。そんな中、「あの家なら住める」と話が進んでいたようでした。
私は冷たい嫁?
たしかに事情は気の毒かもしれません。でも、実家での同居を受け入れられるほど、気持ちの整理はついていないのです。何より、両親の49日も済んでいないのにそんな気分にはなれません。
「こっちはいきなり両親が亡くなって、まだ心の整理もついていないのに……。夫として、私の気持ちに寄り添おうとはしてくれないの!?」と言うと、「そんな言い方ないだろ! こっちだって大変なんだよ! お前こそ、俺の気持ちをわかってくれよ!」と夫はまさかの逆ギレ。「家も土地も、嫁のものは夫のものなんだよ!」とまで言われてしまいました。
「そんな考え方をする人なら、ご両親のもとに帰ったら? リボン巻いてプレゼントするね!!」あまりの怒りから、ついそんな言葉が口から出てしまった私。
大切な思い出の場所を土足で踏み荒らすような人を招きいれたくはありません。義母と義妹には帰ってもらう。納得がいかないなら離婚も考える。と夫に伝えました。
義母と義妹の手を取ってなんとか玄関まで連れて行った私に「なんて冷たい嫁なの!」と義母は言いますが、離婚を決意した私はもう何を言われても気にしません。
すると今度はコロっと態度を変え、「うちは本当に苦しくて……。かわいそうだと思わない? 少しくらい支えてくれたっていいじゃない?」と泣き落としにかかりました。もちろんそんな手にはのりません。
「家計が苦しいなら働いたらどうですか?」と至極当たり前のことを言うと「冷たいにもほどがあるわ! うちの家族が崩壊したらあんたの責任よ!」と怒鳴りながら、義母と義妹は足早に帰っていきました。
1DKに大人4人!?
その後、夫とは正式に離婚しました。あの最低な発言は忘れることができません。
私が出て行った後、義母たちは私たち夫婦が住んでいた賃貸マンションに引っ越してきたと、元夫から聞きました。しかしその部屋は、元夫が独身時代から住んでいた決して広くはない部屋。大人4人が暮らすにはあまりに狭い空間です。
プライベートな空間が一切ないからか、元夫は早々に根を上げて私に謝罪し、ヨリを戻して実家で一緒に暮らしたいと懇願されましたが、そんな気はさらさらありません。
私は両親が遺してくれた実家でひとり暮らしをしています。あのとき私の知らないうちに引っ越して来られていたらと思うとゾッとします。平穏な暮らしが守れたことに感謝し、これからもこの家を大切にするつもりです。
【取材時期:2025年7月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。