熱で寝込んだ嫁に義母が放った言葉
義母は意外にも「あらそう、わかったわ」とすんなり引き受けてくれました。しかしそのあと、あからさまに大きなため息をつき、こう言ったのです。
「ちょっとの熱でこんなにも『具合悪いです』みたいな感じを出されるとね……見てるこっちも体調悪くなりそうね」
体調不良もあって、何ひとつ言い返せませんでした。夫に視線を向け助け舟を求めても「母さんも疲れてるからさ……」とだけ言って目を反らしたのです。
起き上がれない日が3日も続きましたが、病院に連れていってくれる人もなく、薬も買ってきてもらえず、まだ5歳の娘に頼んでなんとか水分補給だけしていました。
ハンバーガーやピザなど、家族はデリバリー三昧。一度夫が「食べる?」とピザを持ってやってきましたが、具合の悪い私には重すぎて口にできません。断ると「スタミナつけたほうが早く治ると思ったのに!!」とヘソを曲げてしまい、それ以来食べ物を届けてくれることもなくなりました。
やっと体を起こせるようになった4日目。リビングに行ってみると、家の中はぐちゃぐちゃ、義父のお世話も最低限しかしていませんでした。私を目にした義母の第一声は体調を気にするものではなく「もう掃除くらいできるでしょ? 何日寝てたのよ!」と信じられないひと言。
私に家事や介護を押し付けておきながら、私が困っているときには何もしてくれない義母と、義母と一緒にいるからかいつまでも父親や夫の自覚が芽生えない夫に囲まれ「私がここにいる意味ってなんだろう」と虚しくなってしまいました。
これ以上、娘にこんな家庭環境を見せたくない。何より、自分の心が壊れてしまいそう——そう思い、私は娘を連れて家を出ました。
義父の他界
家を出て数カ月後のこと。夫や義母からは時々「いつ帰ってくるんだ!」「早く家のことをやりに来い」という連絡が届いていましたが、私への謝罪や感謝の気持ちは一切感じられませんでした。
しかし、その日に送られてきたのは義父の訃報。私が家を出たときはそんな兆しはなかったのに、急な他界に言葉を詰まらせてしまいました。義母からは「葬儀があるから戻るように」という指示と、葬儀の日程が送られてきました。
あの家で唯一私を大切に思ってくれた義父の存在を思い出すと、胸が詰まります。しかし私は欠席の連絡をしたのです。
すると義母は「あなたって人は、非常識にもほどがある! 家族なのに欠席ってどういうつもり?!」と激怒! しかしもう私たちは家族ではありません。
葬儀に参列しなかったワケ
実は私は、義実家を出るときに離婚届を持っていました。それは以前、私と夫が喧嘩をしていたときに割り込んできた義母が、夫に書かせたもの。義母に言われた「こっちはいつ離婚してあげてもいい!」という言葉。そしてそれにうなずくだけだった夫の姿が、今も忘れられませんでした。だからこそ、私は離婚届を手元に残していたのです。
体調不良だったあの数日、こんな人たちと一緒に生活することは娘にとって本当に良いことなのか? と自問自答の末、離婚を決意し、私は離婚届を提出しました。
だからこそ、もう家族ではないと割り切り、葬儀には参列しない選択をしました。義父には心から感謝していますが、それとこれとは別の話です。
それを説明すると「まさか本当に離婚するなんて、聞いてないわよ!」と騒ぎ立てた元義母。「告別式だけでもいいから来てちょうだい! このあたりじゃ噂がすぐ広まるのよ……離婚なんて知られたら、うちの息子の印象が悪くなるじゃない!」「それに、葬儀中もいろいろやってもらいたいことがあるし……」と、この期に及んで世間体を気にし、私を小間使いとしか思っていないようです。
なぜ他人のために、嫁のフリをして世間体を守り、ついでに労働力にまでならなきゃいけないのでしょうか。あまりの図々しさに、私は呆れかえってしまいました。
「親戚やご近所の方には、ありのままを伝えられてはいかがでしょうか。私は何を言われても気にしませんので」「お義父さんには生前お世話になりましたが、葬儀には出ません」とだけ言って、私は電話を切りました。
明かされた義父の遺言
それからしばらく経って、再び義母から連絡がありました。電話口の声はいつもより大人しく、私の機嫌をとっているような様子が感じられます。
話を聞くと、義父の遺言書に、遺産の相続人として私の名前が書かれていたそう。親身になって介護をしてくれたお礼に……とあったとのことでした。家族の中で、唯一きちんと私に感謝の気持ちを示してくれていた義父。亡き後のことまで考えていてくれたのだと思うと、目頭が熱くなりました。
義母はしきりに「離婚したのだから放棄してくれ」と言いますが、私は義父の気持ちを大切に受け取り「お義父さんがせっかく遺してくれたものだから……相続させてもらいます」と答えました。
義母は「あなたなんか結局血のつながりのない他人じゃない! 遺産を受け取るなんてずるいわよ! 空気読んで放棄しなさいよ!」と言いますが、何を言っても私の気持ちは変わりません。
「……その血のつながりのない他人に、お義父さんの世話を押し付けていたのはどちらでしょうか? 本当にずるいのは、どっちなんでしょうね」と言うと、元義母は言葉に詰まったようでした。
義母の見栄っ張り、そこまで!?
その後、人の口に戸は立てられぬとはよくいったもので、元義実家周辺では私たちの離婚理由が噂されているようです。世間体を異様に気にする義母は、毎日コソコソと買い物に出掛けているのだとか……。
そして親族には遺産を元嫁に持っていかれたとは知られたくないようで、遺留分しか受け取れていないことを隠し「たくさん遺産が入った」と見栄を張っているよう。仲良くしていた夫のいとこから聞きました。
義父の遺産のおかげで、今私と娘は安定した2人の生活が送れています。義父の思い出を胸に、感謝を忘れず、遺してもらったお金は大切に使うつもりです。
【取材時期:2025年7月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。