義妹の出戻り
どう考えても、大人4人に子ども3人、計7人が暮らせる広さではない義実家。子どもたちも自分たちの部屋が欲しいでしょう。それに、義妹一家が帰ってくるのなら、私たちが一緒に暮らす理由ももうありません。
そこで私は、部屋を義妹一家に譲り、自分たちは家を出ると伝えました。すると、義母は目を丸くして「ちょっと待って! あなたたちが出ていったら、結局私が子どもたちの面倒を見なきゃいけなくなるじゃない!」と言ってきたのです。育児を私に任せようとしていたことに驚きました。もちろん少しは手を貸すつもりでいましたが、そこまで背負うつもりはありません。
そのように伝えても「だって、ひとりで育てることになってかわいそうじゃない!」と義母。ひとりで育てるきっかけになったのは、義妹の浮気なのに……。
「私たちには私たちの生活がある」と言っても、義母は聞く耳を持ちません。
その後すぐに、義妹からも連絡が入りました。「お義姉さん、私が戻ってくるの嫌なの? お母さんから聞いたんだけど……」と言うので、私はきっぱりと「あなたたちが実家に戻るのは構いませんが、私たちは出ていきます」と告げました。
すると義妹は泣きながら、離婚するつもりはなかった、育児の息抜きのつもりでほかの男の人と関係を持っただけ、それで離婚しようとする元夫が冷たい、と訴えてきたのです。
「子ども3人も抱えて働きにも出られないし……お義姉さんは私を見捨てるの?」義妹の涙に、一瞬だけ「手を貸すべきなのかも……」と思いかけた自分もいました。でも、その感情の奥にある、罪悪感を利用するようなやり方に気づいた瞬間、私ははっきりと距離を取るべきだと感じました。何より、育児の息抜きで浮気に走るような人に同情なんてできません。
家族は互いに支え合うもの
義妹は必死に説得を試みますが、話は平行線のまま……。ただひたすら生活の悲惨さをアピールし、私に手伝ってほしいということを回りくどく言ってくる義妹に、私は次第にイライラし始めますが、それは義妹も同じ。
ついに「子どももいないくせに……『家事もろくにやってくれない』ってお母さん言ってたよ? こういうときこそ、嫁として役に立たないといけないんじゃないの?」と、義妹の本音が炸裂しました。
義母と私は同居開始時に家事の役割分担を決めたはずです。私は自分の担当分は、どんなに仕事が忙しくてもこなしていました。義母は「今日は腰が痛くて……」などと言って、ときどき私に家事を丸投げしていたのに……。
義妹の言葉で、私の中の迷いはすっかり消えました。こんな家にはもういられない、と思ったのです。
夫は誰の味方?
その日の夜、私は夫に義妹が子どもたちを連れて帰ってくることになったと話し、同時にこの家を出ていきたいという私の意思も伝えました。
すると夫はため息をついて、「妹が大変なのに出ていくって本気? こういうときこそ家族で助け合わないと!」と呆れ顔。「助け合う」と言っても、その実情は家事や育児を私が一方的に助けるだけです。
そもそも、すでに義母は私に家事を押し付け気味なのに、これ以上大変な生活は送りたくありません。
「誰かが困ってたら手を差し伸べるもんだろ? 自分が冷たすぎるって思わない?」といい、夫は私をなだめるように言ってきましたが、私の決意は揺らぎませんでした。
「家族で助け合うべきっていうなら、本当の家族だけで頑張ってちょうだい。私はあなたと離婚して、家族じゃなくなるから」
私の言葉に夫は目をむいて「離婚!? 待ってくれよ、俺、離婚なんて嫌だよ!」「お前がいなくなったら、家のことも、妹たちのことも全部回らなくなるよ!」と言ってきましたが、私は無言でサイン済みの離婚届を差し出しました。
このときは、夫が私の気持ちをわかってくれて、義実家を一緒に出てくれるのであれば、離婚はしないつもりでした。しかし、夫が義母や義妹の肩を持つなら、すぐに離婚しようと決めていたのです。
「戻ってきてほしい…」その真意は?
結局夫は私と家を出る選択はせず、実家に残ることを選びました。離婚届を出し、私たちは正式に家族でなくなったのです。おかげで私は、義妹やその子どもたちのお世話を回避できました。
しかししばらくすると元夫からは「お願い、戻ってきて!」と何度か連絡がありました。義妹は子育てを丸投げし、「新しいお父さんを探さないと」と言って夜遊び三昧。義母は、3人の子どもの世話で毎日てんてこまいだとか。
元夫も、義妹の子どもたちの夜泣きや騒ぐ声に悩まされ、まともに眠れない日々が続いているそうです。それに、家事の大半を担っていた私がいなくなったことで、家の中は散らかり放題とのこと。あのとき、家に残らなくてよかったと思わずにいられません。
その上元夫は「母さんが毎日つらそうで……」とポロリ。なんだか義母を助けるために私を求めているように感じてしまい悲しくなりました。
今までは「嫁だから」と思って頑張ってきましたが、それは義母や元夫の面々が"支え合い"を口実に私に甘えていただけ。私は私自身の人生を守るために、離婚を選びました。その選択が間違いだったとは思いません。今は静かで、自由で、自分のことを大切にできる生活を謳歌しています。
【取材時期:2025年7月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。