もうひとりの赤ちゃん
「やっぱり私と彼はなるべくしてなったカップルだよね! 彼をパパにしてあげられたんだから」「お姉ちゃん、1人で寂しいだろうから赤ちゃんに会いにきてもいいよ♡」と続ける妹。昔のことを蒸し返されて、気分が良いわけがありません。
略奪を正当化するような妹の物言いに、思わず言い返してしまいました。「赤ちゃんならうちにもいるから大丈夫!」
実は、ひっそり子どもを出産していた私。婚約破棄後に元婚約者の子を妊娠していることに気付きました。さんざん悩みましたが、ひとりで産んで育てることを決意したのです。元婚約者には最初は拒まれたものの、話し合いを繰り返して、認知と養育費について合意を取り付けていました。
「な……なにそれ!? そんな話、彼からはひと言も聞かされてなかったんだけど!?」と騒ぐ妹。この様子では何も知らされていなかったのでしょう。根掘り葉掘り聞くので、私は妹にすべてを話してしまいました。
「養育費はちゃんともらってるからね。認知届も出してあるから、戸籍上もちゃんと父親だし……少なくとも彼に父親としての責任感があってよかったよ」と言うと、「なによそれ! これからいろいろお金がかかるのに養育費って! 私たちの家計はどうなるのよ!? 養育費って月いくらなの!?」と妹。
「気になることは全部、彼に聞いて。こっちにはこれ以上連絡してこないで」とだけ言って、私は電話を切りました。
養育費をめぐる衝突
3年後、出産報告以来連絡がなかった妹から、「ねぇ、養育費なんだけど……本当にまだ必要なの? もう十分じゃない?」と連絡が来ました。
「毎月5万も払ってるから、うちの家計はカツカツなの! ただでさえうちの子も成長して、いろいろとお金もかかるのに……」とぼやきます。しかし、5万の養育費は不当な金額ではありません。
「それにね! お母さんから聞いたけど、お姉ちゃん昇進して、お給料たくさんもらってるんでしょ? そんなに稼いでるなら、もう養育費いらないじゃない……」
妹の言うとおり、私はこの3年で飛躍的な昇進を遂げました。子どものためにと必死に頑張った結果です。
「経済的に厳しいって言うなら、まずは彼と話し合ったら? 2人で育てて2人で稼げるんだから恵まれてるでしょ。こっちは私ひとりで乗り切らなきゃならないんだから……」と言うと、妹はなぜか怒っている様子。
「本当は養育費なんて必要ないのに、嫌がらせで請求してるんでしょ? いつまでも略奪ごときで怒って……」と言われ、私もカチンと来ました。養育費は子どもの権利です。子どもが成人するまで払うと、元婚約者とも合意しています。
妹が知らなかったこと
「それに、私は『減額してもいい』って言ったよ。でも、彼のほうが『払わせてくれ!』って頼み込んできてるのよね」実はしつこいくらいに彼から連絡をもらっている私。
彼のご両親はもともと女の子が欲しかったそう。私のところに娘が生まれたのを知って、「会いたい」と熱望していると聞いています。それを受けて、彼は「毎月の養育費を増額してもいいから、自分や両親と面会させてほしい」と言ってくるようになったのでした。
「なによその熱量の違い……うちの子は夫にも義両親にも怒られてばかりなのに……」とつぶやいた妹。いずれにせよ私にできることはありません。
「『面会はしない』って言ったのは彼だから。今さら増額をちらつかせても会わせるつもりはない! だから、あなたからも彼に言っておいてくれる?」と言うと、妹はうなだれていました。
呆れた元婚約者の提案とその末路
翌日、今度は元婚約者から「なんで妻にいろいろ話したんだ!」と連絡がありました。隠されていた真実を知った妹は、荒れて手がつけられなくなっているようですが、黙っていた元婚約者にも問題があるでしょう。
「妻が家事を放棄してる!……もう家が地獄だ!」と嘆く元婚約者に「減額でもいいから、まずは家庭を一番に考えたら?」と伝えると、「そんなことできない!」と彼は首を振りました。
すると彼は「俺はお前の娘との縁を切りたくないんだ。正直、うちの両親も『女孫が欲しかった』『女孫に会えないのはお前のせいだ』って俺を責めるし……」「お前さえよければ、戻ってきてほしい! 俺も男の子より女の子が欲しかったし」と話します。
まさか、子どもの性別だけで復縁を求められるとは……。そんな人と復縁しようなんて、到底思えません。私は、一度裏切った人間に二度目はない、会わせるつもりもない、と元婚約者を突き放しました。
その後、妹夫婦の仲は完全に冷え切ってしまったようです。元婚約者は「養育費は払うから、子どもを連れて出ていってくれ」とまで言っているようで、妹は何度か「実家にも帰れないし、お姉ちゃんのところに泊まらせて!」と泣きついてきましたが、そのたびに私は断っています。妹たち夫婦の問題には関与するつもりはありません。子どものためにも、良い解決法を見つけてほしいと願うばかりです。
私はというと、娘のおかげで仕事を頑張れていて、毎日も充実しています。産むときは不安で仕方ありませんでしたが、今はその決断が間違いではなかったと確信しています。娘の笑顔を守るためなら、どんなことでも頑張れます。これからも仕事に育児に、全力で取り組んでいくつもりです。
【取材時期:2025年7月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。