妻に断りもなく予定を変更する夫
急な育休取り下げにショックが隠しきれない私。産後すぐにワンオペ育児になると思うと、私の不安は大きくなるばかりです。
さらに夫は、以前から事あるごとにシングルマザーで双子を育てている幼なじみと私を比較します。たしかに彼女はすごいと思いますが、私と彼女は違う人間です。何より、そんなふうに比べられて、いい気分なわけがありません。
「一緒に子どもを育てていこうって話だったでしょ? サポートしてくれるって言ったじゃない……」と気持ちを吐露しても、「出産前で情緒不安定になってるんだな……でも、おまえも頑張れるって!」と空気を読まない励ましを続ける夫。
なにを言っても無駄だということを悟った私は、口を閉じるほかありませんでした。
産後、夫に告げられたのは…?
不安が拭えないまま無事出産。退院を翌日に控えた日の夕方、夫は「急なんだけど、あいつんとこの双子を預かることになった!」と言います。
私は呆然としました。明日から新生児との生活が始まるというのに、3歳児2人のお世話などできるわけがありません。
「急に休暇が取れたらしくて、数年ぶりに友だちと旅行に行きたいんだってさ!」「今朝急に連絡が来て……ついOKしちゃったんだよね」と夫。今日、この後子どもたちを迎えに行き、預かることになっているとのことでした。
開いた口がふさがらない私。夫は「今日は俺が見るとして、退院したらおまえに交代してもらえばいいだろ?」とあっけらかんとしています。
「私に断りもなく……? うちに今日から他人の子どもを連れてくるの?」と苛立ちを隠さずに言うと、「まぁまぁ、そんなに怒るなって! 育児の練習にもなるだろ?」と夫。
退院したら、育児の練習どころかわが子の育児でせいいっぱいなはず。それに、産後すぐのボロボロの体で、自分の子どもと過ごすだけでも体力も精神もギリギリでしょう。そこに他人の子どもの世話まで加えようとするなんて……正気の沙汰とは思えませんでした。
幼なじみにいい顔ばかりして、私の状況も体調も心も何も考えてくれない夫。私はこのとき、夫に愛想を尽かしつつ、「わかった。明日帰るね」とだけ返信したのでした。
夫にブーメラン!
翌日の夕方、「もう退院手続き終わったか? 早く帰ってきてほしいんだけど……」と夫から連絡が入りました。心なしか、声に元気がありません。
「双子がめっちゃ元気でさぁ。俺、一瞬も休めなくてもう限界で。早く交代してほしいんだよね! コンビニ飯もレトルトも飽きたから、今日は手作りのハンバーグが食べたいな! だから早く帰ってきてくれよ~!」もうため息しか出ませんでした。
「ごめんね、私もう実家に帰ってきてるから」
「え? ……実家に帰ってるって……冗談だよな!? 出産が終わったら帰ってくるって言ってたじゃん!」と言う夫に、「だから、帰ってきたよ? 自分の実家に。だから、双子の世話もあなたのごはんの準備も……私には無理かな」と返した私。
「じゃあこのまま俺が双子の世話を見るってこと!? そんなの無理! 絶対無理!」と喚く夫に、「私だって何度も無理だって言ったじゃない……」と私は呆れを隠せませんでした。
「勝手に引き受けて連れてきたのはあなたでしょう。だから、あなたが責任をもってその子たちのお世話をしたらいいのではありませんか?」「私も今日から産後ボロボロの体で新生児のお世話があるから……両親が助けてくれて本当に良かった。事情を話したら、『もう離婚して戻ってきたらいい』とまで言ってくれてるの」
「え……離婚? 俺、そこまで悪いことしてないだろ? 困ってた友だち助けただけじゃん? 悪気なんてないんだって!」と夫。悪気がないなら何をしても許されると思っている時点でアウトです。
それに、離婚の決め手は勝手に双子を預かってきたことだけではありません。相談もなく育休を取り下げたこと、私の不安を軽々しくあしらったこと、なにかあればすぐに幼なじみと比較すること……その積み重ねが離婚に至ったのです。
「ひとりで子育てなんてできるのかよ!」と言った夫。私はかつて夫に言われた通り、「あなたのお友だちだってシングルマザーだけど、双子育ててるでしょ? 私だってできるって!」と返すと、夫は黙り込んでしまいました。
悪気がなければ何をしてもいいのか?
その後、私は義両親にも事情を話し、両家の両親と一緒にわが家に帰りました。そこにはいまだに双子がいるだけでなく、幼なじみ本人までいたのでした。
「あいつが勝手に居座って、帰ろうとしないんだ!」などと叫んでいた夫に、私は幼なじみのSNS投稿の写真を見せつけました。そこには双子に挟まれて幸せそうに眠っている夫の写真が。知らない人が見たら、本当の家族と見紛う写真です。
なんとなく、私たちが離婚したら、彼女と夫は再婚するのでは……? という予感がしています。いくら友だちとはいえ、産後すぐの赤ちゃんがいる家に子どもを預けるでしょうか? とはいえ、それに乗ったのは夫なので、彼女だけが悪いわけではありませんが……。
その後、義母によって幼なじみと双子は即日帰され、私たちは正式に離婚の手続きを進めることにしました。最後まで「悪気はなかった」と繰り返す夫に、私は一言だけ告げました。「悪気がなくても、相手を思いやる気持ちがなければ同じことだよ」
こうして私は、生まれたばかりの娘との生活を静かに始めたのでした。
【取材時期:2025年7月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。