以前、友人から嫁いびりの話を聞いたことがあったので、私は夫を頼りにしていました。
ところが、夫は久しぶりの帰省ということもあり、地元の友人から飲みに誘われているとのこと。「夜遅くに少し顔を出すだけだから」と聞き、ひとまず安心したのですが……。
そして当日、緊張しながら義実家に伺った私を待っていたのは、想像以上にひどい対応で、戸惑いを隠せませんでした。実は、義父がとんでもない人だったのです。
「俺が一番偉い」横暴な義父
夕食のとき、義父からお酒を買いに行くよう頼まれた私。しかし、出かける直前に親戚の方から別の用事を頼まれ、それを済ませていたら出発が遅れてしまいました。すると店へ向かう途中、義父からお叱りの電話が……。
「俺は本家の跡取りで親戚中で一番偉いんだから、俺の言うことを最優先にしろ。早く帰ってこないと、東京の嫁はお使いすらできないと笑われるぞ」と言われ、私はあ然としました。
買い出しから戻っても、お説教の嵐でした。義父いわく、私には「嫁の自覚」が足りないそう。「女は愛嬌があって家事ができ、男に従順なのが絶対条件だ」と力説され、「嫁は家政婦だ。酒を注げ」と命令され……。その後は休む間もなく、義母の料理の手伝いや親戚の男性たちへのお酌回りと、本当に大変でした。
義父が私に暴言を吐いても、夫は見て見ぬふりで、何も言ってくれません。私がそんな地獄のような時間を過ごしているうち、なんと夫は、約束の時間より早くこっそり義実家を抜け出していたのです。夫の行動も、義父の発言も信じられません。
お酒が入って、ますますひどい態度になる義父。あまりにつらいので私は電話で夫に助けを求めたのですが……。
「お義父さん、私のことを家政婦だって言ったのよ!?」
「何で怒らないの?」
友人と飲み会中の夫に電話で助けを求め、詰め寄った私に夫から返ってきたのは、信じられない言葉でした。
「嫁なんだから我慢してよ……」
頼りにならない夫に失望した私は…
「は?」
嫁だから我慢しろだなんて……夫から返ってきたまさかの発言に私は耳を疑いました。
夫は、私が義両親に嫌われないよう穏便に済ませるべきだと言います。自分の発言がどれだけ私を傷つけているのか、まるでわかっていませんでした。挙げ句の果てには「楽しく飲んでいるのに変な連絡をしてくるな」と文句を言い、「ネチネチ言うな、話を聞いて損した」とまで吐き捨てる始末。結局夫は、深夜に義実家に戻ってきました。
さらに、親戚の男性たちも厄介でした。私がお風呂に入るとき脱衣所をのぞこうとしてくる人や、肩もみを強要してくる人もいました。私が断ると、義父に「生意気だ。いいからやれ! 家長命令だ!」と怒鳴られました。
夫に失望し、義父や親戚の男性たちに腹が立ち、私は翌朝、まだみんな寝ている時間に、誰にも告げずに義実家を出て、ひとりで自宅へ帰りました。
その後、起床して私がいないことに気付いた義父から連絡が。黙って帰ったことや嫁として不十分な振る舞いなどについて怒られ、最後には「俺に従わないなら離婚させる」と脅されました。しかし、決意を固めた私にはもう義父は怖くありません。夫も頼りにならないので離婚で結構です。
義父からお叱りの電話を受けたあと、お昼ごろになって、起きてきて私がいないことに気付いたのか、夫からも電話がかかってきました。寝起きの声で「黙って帰られたら困るよ……父さんがカンカンだよ……」と言う夫に、私は本気で離婚を考えていると告げ……。
そして、結局離婚したのは…?
すると夫は動揺し、「すまなかった! 離婚を避けられるなら何でもする! チャンスをくれ!」と必死に。そこで私は義父との絶縁を提案。夫はそれで離婚を回避できるならと承諾しました。
そのあとすぐに帰宅した夫は、電話で義父に絶縁を宣言。その後は、義父からの連絡を無視していました。夫と連絡が取れなくなり、怒って再び私に連絡してきた義父は「跡取り息子がなぜ俺と縁を切る必要があるのだ! 嫁の言いなりになるなんて」と激怒。さらに義父は、義母の姿が見当たらないと言い、義母にも何かを吹き込んだのかと私に詰め寄ってきました。
私は、義母が今、わが家にいることを伝えました。私が出ていったことに気づいた義母は覚悟を決め、最後の務めとして義父や親戚たちの朝食を準備すると、私を追って義実家から逃げてきたのです。横暴でひどい言動が目に余る義父に30年も耐え続けてきた義母は、もう我慢の限界だったようで、私の行動に勇気をもらったと言い、わが家を訪ねてきました。そして、義母から熟年離婚の相談をされたのです。
もう口も聞きたくないという義母に代わって私が義父にすべてを告げると、義父は低姿勢になりましたが、義母の決意は固く、もはや手遅れでした。
その後、義両親は弁護士を交え話し合い、ほどなくして離婚。この一件で夫は義父を反面教師として心を入れ替え、私たち夫婦の関係は良好になりました。離婚後、ふさぎ込む義父とは対照的に、義母は私たち夫婦と同居して、第二の人生をいきいきと楽しんでいます。
◇ ◇ ◇
つらいときに寄り添ってくれない相手とは、一度距離を置いて関係を見つめ直す時間も必要なのかもしれませんね。理不尽に対し、ただ我慢するのではなく勇気を持って行動したことが、義母を助けることになり、夫を変えるきっかけとなりました。この先も、幸せな未来を自らの選択で作っていけるといいですね。
【取材時期:2025年7月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。