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「ミスを連発」「空気が読めない」仕事がスムーズに進まない夫…心療内科を受診してわかったことは

幼少期や学生時代には感じることのなかったコミュニケーションの難しさを、社会人になってから特に感じるようになった夫。人の話に共感しづらく、気持ちや意図をくみ取ることが苦手なことで、対人関係に苦労しています。これは、大人になってから発達障害であるとわかった夫の話です。

この記事の監修者
監修者プロファイル

医師松澤美愛先生
神谷町カリスメンタルクリニック院長

東京都出身。慶應義塾大学病院初期研修後、同病院精神・神経科に入局。精神科専門病院での外来・入院や救急、総合病院での外来やリエゾンなどを担当。国立病院、クリニック、障害者施設、企業なども含め、形態も地域もさまざまなところで幅広く研修を積む。2024年東京都港区虎ノ門に「神谷町カリスメンタルクリニック」を開業。精神保健指定医/日本精神神経学会/日本ポジティブサイコロジー医学会
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人並みの人生を歩んできた夫

夫の発達障害

 

 

 

38歳の夫は、2人兄弟の長男です。真面目な義父と明るい義母に育てられ、大きな病気もなく育ちました。幼稚園・小中高・大学と順調に進学し、就職をして社会人になり、現在もバリバリと働いています。

 

社会人になって数年後に同い年の私と結婚し、子どもも生まれて親となった夫は、人並みの人生を過ごしてきました。

 

家族思いの夫は、誕生日はもちろんホワイトデーや母の日、クリスマスなど、イベントごとにプレゼントを贈るといった、きちょうめんでやさしい一面を持っています。学生時代はサッカーに明け暮れていたそうで、地元の友人とは今も付き合いがあり、よく連絡を取り合っている姿を目にするほど関係は良好です。

 

学生時代の友人たちとの間ではこれといった大きな喧嘩もなく、人間関係で特に困ったことはなかったようです。

 

 

社会人になって感じた対人関係の難しさ

友人と遊んだり勉強したりと、特に変わったことのない学生時代を過ごし青春を謳歌(おうか)していた夫ですが、社会人になってからは対人関係に悩むようになったそう。

 

相手の話に共感しづらく、相手が意図していることや、どんな気持ちで話をしているのかがわからないと感じることが増えたのです。

 

コミュニケーションは、相手から送られた言葉や行動を受け取り、そこに隠された意図や省略された事柄を読みとった上で返答することで成り立ちます。学生時代と違い、社会人になると、本音と建前が入り混じった会話が多くなり、会話の中でも一から十までを丁寧に説明することも減っていきます。

 

社会人生活では、会話から相手の意図や気持ちを読みとることが必要な場面が増え、夫はその点に困難を感じるようになったようです。

 

仕事先では、社内や社外といったさまざまな人との関わりの中で、言われなくても先を読んで行動する、話の受け手に気づかってオブラートに包んだ言葉を使う、本音と建前を使い分ける、といった対応を求められます。

 

しかし、その場の空気を読んだり臨機応変な会話をしたりといったことに対して、夫は難しさを感じることが増えたそう。そのため、仕事自体がスムーズに進まないことも多くなりました。

 

年齢が上がるにつれて役職もついてきたことから判断が必要な業務が増え、ますますその難しさを実感するようになったそうです。

 

夫はもしかして…?

同期で入社した同僚には、仕事中の対人関係でここまで難しさを感じているようなそぶりは見られません。どうして自分だけ、こんなにいろいろなことが「うまくいかない」のだろう……。夫は次第に人と話すことに慎重になるようになりました。

 

そのことでさらに人間関係に悩み、仕事がスムーズにいかなくなったのは言うまでもありません。

 

そんなとき、夫が気分転換に立ち寄った図書館の新刊コーナーで、「発達障害」のことを記した書籍が目に留まったそうです。思い当たる節があったのか、読んでみると「言われたことを言葉通りに受けとり過ぎて、相手が意図していることに気付けないことが多い」「他人が自分に期待したり、望んでいることを理解したりするのが難しい」など、自分が困難に感じていたことがチェックリストにズラリ!

 

「自分はもしかして発達障害なのでは?」と不安になった夫は、早々に心療内科を受診することにしました。

 

一般的に発達障害の診断が確定するまでには、生活上の困りごとについて医師が問診をおこない、必要に応じて発達検査や知能検査などの心理検査が実施されます。これらの検査結果や本人・家族からの情報をもとに、診断ガイドラインに沿って医師が総合的に判断するそうです。

 

夫の場合は、医師による総合的な判断の結果、知的障害を伴わない「自閉スペクトラム症(ASD)」であることが判明しました。

 

まとめ

子どものころは対人関係の困りごとが目立ちにくく、親も気付かないまま、大人になってから発達障害が判明するケースもあるそうです。夫の場合もそうで、趣味嗜好の似た友人との付き合いの中では自覚しにくかったことが、社会人になってから浮き彫りになりました。

 

夫は私と結婚し、子どもも授かりました。この先不安がないと言ったらうそになりますが、夫は自分らしく生きられる環境を見つけて働いています。私はそんな夫を理解できる存在として、家族で寄り添っていきたいと思っています。

 

【松澤先生からのアドバイス】

最近は、「発達障害」という特性に気付かれないまま成長し、大人になって初めて診断を受けるというケースが増えています。

 

なぜ大人になるまで気付かれなかったのかについては、

・児童期には症状が軽度だった

・知的能力が高かった

・家族や教員などによる適切な支援があった

などの理由が挙げられます。

 

そしてこの例にもあるように、大人になり、周囲からの支援が得られなくなったり、大きなストレスがかかる環境に置かれたりしたときに、初めて特性が表面化するケースも少なくありません。

 

診断名に含まれる「スペクトラム」という語は、発達障害を理解する上で重要な概念です。「スペクトラム」は、境界線や範囲が明確ではない状態が連続していることを示しています。人間の特性や能力には個人差があり、一様ではないことを意味しています。

 

「自分は周囲の人たちとどこか違う」と感じたり、違和感を覚えたりしながら日々を過ごしている場合、何らかの生きづらさを感じているかもしれません。もしあなたが自分なりに毎日を頑張って過ごしているのにうまくいかない、日々を生きづらいと感じているなら、発達障害の可能性があるかもしれません。気になる方は、専門家にご相談されることをおすすめします。

 

 

※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。

※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。

 

取材・文/山本さつき・30代ライター。パパ大好きな息子と毎日格闘している。たくさんの情報をわかりやすく伝えるべく、日々スキルを磨いている。

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※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています

 

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