実家を見た彼女の反応
「どれだけ素敵なのかしら、楽しみ!」
ある日、彼女のAと一緒に実家の旅館へ向かっていたのですが、旅館に到着したとき……Aの表情が一変しました。
「え?この旅館が実家…違うわよね?」
実家の旅館は、趣のある日本建築の旅館。決してボロボロではありませんが、彼女が思い描いていたような豪華さではなかったのでしょう。Aは見た目の豪華さやステータスを重要視する性格でした。
「ごめんなさい、急用を思い出して…」
僕の説明も遮り、Aは足早にその場を離れてしまいました。
帰り道。僕が運転する車の助手席でスマホをいじるAが、ぽつりと口を開きました。
「私たち、もう限界じゃない?」
僕も、心のどこかで別れたほうが良いと感じていました。Aは僕のことを「旅館を継いだ経営者」としか見ていない。Aのそんな態度に疲れていたのです。僕はAの言葉を受け入れ、別れることになりました。
数年後の再会と、立場の逆転
数年後、僕は実家の旅館と新たにホテルチェーンを立ち上げて経営するように。
ある日、高級ホテルの視察に訪れたとき、偶然Aと再会しました。
「あれ?まさかこの高級ホテルに泊まるの?(笑)」
「いや、俺は泊まらないよ」
そう返した直後、女性のホテルスタッフであるBが僕に近づいてきて、「お待ちしておりました、オーナー」と一言。Bは僕がホテルチェーンを立ち上げるときから一緒に仕事をして長い付き合いです。
Bの発言に、Aの表情が一瞬で固まりました。そんなAに、Bは続けて「僕がこのホテルのオーナーで、複数の旅館・ホテルを経営する企業の代表をしている」ということを説明してくれました。
Aの顔はますますこわばっていきました。
旅館で明かされた真の価値
後日、Aがどうしても実家の旅館を見てみたいというので、僕とスタッフ、Aで改めて実家の旅館を訪れました。
「全然変わってないのね…」
外観を見て、Aは皮肉交じりに言います。
しかし旅館の中に入ると、丁寧な接客や日本庭園の美しさなど、見た目では測れない魅力に、Aも次第に圧倒されていきました。
「世界中からお客様が来てくれているんですよ。最近は特に海外のお客様が多いんです」
Bがそう補足してくれました。
「歴史もあるし、立地もあるから資産価値もそこそこあるんだ」
「な、なんでそんなこと、前には言ってくれなかったじゃない!」
焦るAに、僕はただ一言だけ返しました。
「言おうとしたけど、聞いてくれなかったからね」
本当に大切なもの
Aが急に僕のほうへ向き直りました。
「この旅館に来て、良さを理解したわ。ねぇ、もう一度私と…」と泣きついてきたA。
僕は「悪いけど、それはできない。Aとは、もう終わった話だから」と言うと、その場が静まり返りました。
そのとき、Bが微笑みながら続けました。
「私たち、もうすぐこの旅館で結婚式を挙げるんです」
実は、僕とBは1年前からお付き合いしています。Bと仕事をしていくなかで、目に見える豪華さよりも、心に残る温かさを大切にしたいという気持ちが同じだとわかり、僕たちの距離が近づいていったのです。
しばらくしてから、Aは婚活に励んでいるという話を聞きました。
結婚式当日。僕とBは実家の庭園で、和装姿のウェディングフォトを撮影。実家の旅館にまた1つ、忘れられない思い出が増えました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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