夜泣きにミルクの吐き戻し、睡眠不足が続いていたある日、夫から「大事な書類を家に忘れたから届けてくれ」との連絡がありました。その日の午後の会議で使う資料だと言うので、私は急いで赤ちゃんをベビーカーに乗せて届けに行きました。
なんとか午後の会議に間に合う時間に届けることができたのですが、待ち構えていた夫の第一声は感謝の言葉ではなく……?
夫の心ない言葉
「え、鏡見てから来た? 本当にありえない。会社の人に見られたら恥ずかしいだろ」と、感謝の気持ちより先に私へのダメ出しを次から次へと言ってくる夫。わざとらしいため息をつきます。
急いでいたこともあり、その日の私は子連れでも動きやすいデニムのパンツにシンプルなカットソーを着ていました。赤ちゃんのお世話でいっぱいいっぱいだったこともあり、メイクをする余裕もなく、髪もまとめただけでした。
そんな私に夫は「女として終わってる。こんな嫁が来るんだったら、俺が家までタクシーで取りに行けばよかった」と責め立てます。
私は必死に子どもを育てているのに……。「女を捨てた」と切り捨てる夫の言葉に、私は深く傷つきました。涙をこらえてうつむいていると、「俺はもう行くからな、誰かに見られる前にとっとと帰れよ」と言って、夫は去っていきました。
夫の後輩からの思わぬ暴露
ビルのガラス窓に写った自分の姿を見て、「はぁ……」とため息をついた私。たしかに顔に疲労がにじみ出ているのが自分でもわかります。せめてチークやリップで血色を良く見せればよかったかな……今日から食べる量を減らせば、多少は痩せるかな……と思いつつ、ノロノロと帰り支度を始めました。
そこに、「あ! 奥さんまだいらっしゃった!」と声をかけてくれた人が。顔を上げると、そこには夫の直属の後輩がいました。
「会議の資料ありがとうございました! 届けてくれると聞いていたので、オフィスまで上がってこられるかと思ったんですけど、先輩だけ戻ってきたので……ご挨拶したくておりてきました! 赤ちゃん連れで大変でしたよね! よかったらカフェスペースでお茶でも飲んでいってください!」彼は、夫からかけてほしかった言葉を言ってくれました。
彼に促されるままカフェの席に着いた私。お茶を飲む間、子どもを見ていてくれると言います。出産以来、こんなにゆったり過ごすのは初めてだと感謝の気持ちを伝えました。
「先輩、出産特別休暇を取ってましたけど……やっぱり2週間くらいじゃたりないですよね。俺、頑張って先輩が早く帰れるようにしますから!」彼の親身な言葉に嬉しい気持ちでいっぱいですが、ひとつ理解できないことが……。出産特別休暇なんて、初めて聞きました。
私が里帰りしていた2週間、夫は仕事が忙しいと言って一度も会いにきませんでした。しかし彼の話によると、夫は里帰りに合わせて2週間の出産特別休暇を取っていたそう。一体どういうことでしょうか。しかし私は問いただせずにいました。
女を捨てた妻の夫を捨てる決断
それから夫の言動はますますひどくなっていきました。あからさまな暴言は吐かないものの、「今日もおかずの量が少ないな……家にずっといるのにな」「お前と同じ時期に出産したのにあのタレントは細いなぁ〜」とチクチク私を責めるのです。
さらに夫は、赤ちゃんを優先するとイライラするようになりました。赤ちゃんのお世話で食事が遅くなると「金を稼いでいる俺が後回しなんてありえない」と文句を言い、授乳中でも構わずにご飯のおかわりや調味料を取ってくるように言いつけます。
少しくらい協力してほしいとお願いすると「すぐに子どもを言い訳に使う」と聞く耳を持ちません。
私は子どものためなら、自分のことを後回しにできました。しかし、夫は子どもよりも自分優先。その上、妻を全否定するような人間とはこれ以上一緒にいられません。私は夫との離婚を決意しました。
「本当、こんな女を嫁にするんじゃなかったわ~出産したのに体型は戻らないし、スッピンで外に出て平気なんて、信じられない。女捨ててるな!」と吐き捨てる夫。『次に捨てるのはあなただけどね……』私がそう考えていることに夫は気付いていないでしょう。
私の知らない2週間
私はこれまで夫に聞けずにいた出産特別休暇について、聞いてみることにしました。「出産特別休暇とったって聞いたけど? いったい何をしてたの?」と尋ねると、みるみるうちに夫の顔色が変わりました。
「え……なんで!?」と焦った夫。しつこく問いただすと、白状しました。
2週間もの間、夫は久しぶりの独身気分を味わっていたそう。遅くまで友だちと飲み、ゆっくり起き、独身の友だちと沖縄旅行にも行ったそうです。「子どもが生まれたら自由がなくなると思って……」という夫に呆れてしまいました。その間、私は慣れない子どものお世話で寝られない毎日を送っていたのに……。
それに、私が里帰りから帰った後も夫の生活はこれまで通り、飲みに行く日もあれば休日は寝たいだけ寝ています。育児で大変になったのは私だけ……なんだか疲れてしまいました。「そんなに自由でいたいなら離婚しよう」と夫に告げたのです。
夫は必死で謝りますが、今になって謝罪しても産後の2週間は取り戻せません。
夫のその後
その後――。私は弁護士を通して親権と養育費の取り決めたうえで、離婚しました。夫は泣きついてきましたが、取り付く島もないことがわかったのか、最後は離婚に同意してくれました。
離婚して1年ほど経ったころには、元夫は「出産特別休暇中に飲み歩いていたのを会社の人が見ていたらしい、会社でもダメ夫扱いされてつらい」と連絡をよこしてきました。離婚したばかりのころは飲み歩いて独身を楽しんでいたようですが、それも長くは続かなかったよう。「さみしくて仕方がない、どうか帰ってきてくれないか」とも言われています。
しかし、子どもが自分から望まない限り元夫と会わせるつもりはありませんし、私もよっぽどの事情がない限り元夫と会うつもりはありません。
今、私は実家で両親のサポートを受けながら育児に励んでいます。仕事と家事・育児で相変わらず忙しい日々ですが、元夫の心ない言葉がないだけで、こんなにも気持ちが軽くなるのかと驚いています。
シングルマザーは大変なことも多いと思いますが、わが子が立派な大人になるまで頑張ります!
【取材時期:2025年7月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。