そんな夫にうんざりしながらも、私は必死で育児と家事、仕事をこなしています。
家事は女の役目!? 古い考えの夫
「家事は女の役目だろ?」――夫はそんな古い考えを平気で口にする人。
共働きなのに、たまに皿を洗っただけで「俺、家事やってます」みたいな顔をするのです。休日に娘がおでかけしたがっても「面倒だから俺は行かない」と言い、娘をがっかりさせてしまうこともしばしば。
そんなある日、会社で上司から呼び出されました。
「実は、役員クラスからも『課長として推したい』って声があってね。家庭との両立もあるだろうし、正式な返事は今度でいいから、ぜひ前向きに考えてほしい」と言われたのです。
妻の昇進の話を聞いた夫の反応は
突然のことに驚きつつも、これまでの努力を評価してもらえたことが何よりうれしく、心の奥から喜びが湧き上がりました。家に帰り、夫に昇進の打診の話を伝えました。
「今日ね、会社で昇進の打診を受けたの。課長にならないかって。仕事は増えるけど、やってみたいなって思ってるんだ」
ところが夫の返事は冷たいものでした。
「でもさ、家のこととかどうするつもりだよ? 子育てしながら課長なんて無理だろ? 家のことがおろそかになるんじゃない?」
さらに彼は眉をひそめて言いました。
「それに俺の立場もあるんだけど。嫁が俺より高い給料もらうなんて嫌だわ。断れよ」
私は呆れて深いため息が出ました。家事も育児も私がやるべきもの、自分がやろうなんて微塵も考えていない夫に心底がっかり。しかも私の昇給を一緒に喜んでくれることもなく、自分勝手な理由でやめさせようとするなんて……夫がここまで嫉妬深いとは思いませんでした。
そもそもこれまで育児も家事も一切してくれない夫に不満がありましたが、ここまでとは……。
私は会社の昇進の話を受ける決断をしました。家庭が回らなくなったとき、それでも夫が自己中な考えのまま育児も家事もしてくれないなら、その時は離婚を考えればいいと思ったからです。
予想外の事態に直面して
そんなある日、夫が帰宅するなり、重たい声で言いました。
「……俺、リストラだってさ。来月いっぱいで退職することになった」
続けて、しょんぼりとした表情でつぶやきました。
「この前、俺よりお前の給料が高くなるのが嫌だなんて言って悪かった。悔しくて嫉妬していたんだ。ごめん」
不安そうに頭を下げる夫の姿を見て、彼なりにプライドと現実の狭間で葛藤していたのだと思い、怒りがスッと収まりました。
「昇進の話って……どうなったの?」
「今さら何言ってんの? とっくに返事済みだよ。こんなありがたい話、喜んで受けたに決まってるじゃない」
驚く夫に私は、正直に考えを伝えました。
夫が育児、家事を一切しないことが不満だということ、昇進後に仕事が忙しくなっても夫が変わらなったら離婚しようと思っていたこと……その話を聞くと夫は「今までごめん。できることから、やるようにするよ。できないことは、できるように努力する」と言いました。
家族のために変わった夫、そして……
それからの夫は変わりました。「今日は俺が洗い物するよ」「娘を迎えに行ってくる!」と、少しずつ家事や育児をするようになったのです。
夫は再就職に向けて資格の勉強をしながら就活をおこない、退職から期間を空けずに再就職先が見つかりました。私は昇進後、ますます仕事が忙しくなりましたが、夫の仕事がフレキシブルに働ける環境だったため、急なお迎えなどは夫が対応してくれるようになり、助かっています。
一度は離婚も考えましたが、夫が家族のために変わってくれたおかげで乗り越えることができました。すれ違っても、歩み寄る心があれば家族は強くなれます。これからも娘と夫と三人で、支え合いたいと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。