営業マンだった僕が定食屋で働く理由
現在は定食屋で働いている僕ですが、以前は企業に勤めていて、営業職に就いていました。人と接する仕事がしたいと思っていたこともあり、営業の仕事はとてもやりがいがありました。けれど、当時から「本当に自分のやりたいことはこれなのか?」と悩むことも多くあって……。「お客様の喜ぶ姿をもっと間近で見られたら」という思いがあり、僕は思い切って会社を辞め、会社の近くにあった定食屋で働くことにしたのです。
今の職場では、仕込みから調理、接客まで担当させてもらい、食事をしてくれるお客様が喜んでいる姿を間近で見ることができて、会社員以上にやりがいを感じています。ありがたいことに、常連様も多くいて、そんな常連様と何気ない会話をするのも仕事の楽しみのひとつになっていました。
そんな常連様の中に、いつもひとりで来る女性がいました。僕自身、彼女とは気が合うなと感じていて、話していても自然と笑顔になれ……そんな彼女のことが気になっていました。
その女性を巡って思わぬことが起きたのです。
元同僚から「俺のものだから、諦めろ」
ランチタイムが終わり、夕方からの営業に備えて一度店を閉めようとしていたときです。お店のドアが開き、中に入ってきたのは、なんと以前勤めていた会社の元同僚でした。
久しぶりに見る顔にうれしくなり、僕は「久しぶり!」と声をかけ、中に通したのですが、彼はなんだか不機嫌そうで……。彼は「話したいことがあって来た」と切り出しました。
彼から語られたのは、お店の常連として来ていたあの女性は、僕が以前勤めていた会社の社長の娘さんなのだとか。彼から「彼女は俺が好きなんだ。彼女は俺のもの。身を引けよ」と、突然言われたのです。
彼女のことは少し気になっていたのが正直なところではありましたが、自分の気持ちを誰かに打ち明けたことはなかったので、同僚の言葉に僕はびっくりしてしまいました。
どういうことかと尋ねると、彼は彼女のことが好きなのだそう。彼女は、社内でよく僕が働く定食屋の話をしてたそうで、店員……つまり僕のことが気になっていると、同僚女性に話しているところを聞いてしまった、と同僚。
実は彼とは、会社員時代、同じ営業部で成績を競い合っていた仲。僕はいいライバルだと思っていましたが、彼からは敵対視され、嫌なことを言われることも多かったです。だからこそ、彼は「自分の好きな相手が、僕に好意を寄せている」ということが許せなかったのでしょう。
ただ「諦めろ」と言われても……という気持ちでした。僕や彼の気持ち云々は関係なく、選ぶのは彼女だと思ったからです。
偶然、渦中の人物がやって来て!?
僕が困惑していると、彼は僕を見て「俺はエリート。たかが定食屋の店員のお前が、彼女に釣り合うと思うか?」と言いました。なんだか見下されたような棘のある言葉に、会社員時代の嫌な記憶が蘇ってくる感じがしました。
そのときです。「すみません、忘れ物をして……」とお店のドアから顔を覗かせたのは、話題の中心だったあの女性。まさかこんな偶然ある!?と自分でも驚いた瞬間でした。
元同僚はすかさず彼女に駆け寄り、「ちょうど彼と話をつけていたところなんです。彼より僕のほうが絶対にいいと思います」と声をかけましたが、彼女は彼に、冷ややかな視線を向けて……。彼を無視するように僕のほうへやってきて、僕の目をじっと見てこう言ったのです。
「いつも、おいしいごはん、ごちそうさまです。もしよかったら、今度2人でゆっくり食事をしませんか?」と。
彼女の言葉にはびっくりでした。まさか気になっていた女性が、僕に好意を抱いてくれているなんて。そして、その様子を見ていた元同僚が、呆然とした顔をしていたことは今でも鮮明に覚えています。
これきり元同僚はお店に来ることはありませんでした。彼女は今も食事をしにお店に来てくれます。変わったことといえば、2人でプライベートでも食事をしたり、出かけたりするようになったこと。お互いのことを知りながら、この温かい関係を、これからも大切に育んでいこうと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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