しかし、私が父の病状があまりよくないことを伝えると、夫は先ほどまでの嫌な顔をやめて穏やかな表情に。そして「お金のことは大切だから」と、いざというときは手伝うと調子のいいことを言ってきたのです。実は、私の父は地元では名の知れた企業の元役員で、私の実家にはそれなりに資産もあるのです。
どこか楽しそうな表情で、下心を隠すそぶりもない夫の姿に、いい気はしませんでした。夫は、これまで私の実家のことには一切興味を示さず、法事にも顔を出したことがないのです。そんな夫に「いざというときは手伝う」と言われ……。
父の死で露呈した、夫の冷酷な本性
1カ月後、父が他界。私が喪主として葬儀の準備に追われる中、手伝うと言っていた夫は、仕事を理由に準備にも葬儀にも顔を出しませんでした。かつて夫がギャンブルで作った多額の借金を、文句も言わずに援助してくれた父へ感謝の気持ちはないのでしょうか。当時、父の助けがなければ、私たちの生活は破綻していました。
そんな父の葬儀にも来ない夫を責めると、開き直ったように「お義父さんにとっては、あんな金額ははした金だろ。もっとくれていたら葬儀にも行ってやったかもな」と言い放ったのです。私はその恩知らずな言葉に、心底あきれました。
葬儀後、私は1週間ほど実家に残ることにして、片付けをしていると、夫から連絡がありました。
「葬儀から1週間だよ?」
「お義父さんの遺産まだもらえないの?」
葬儀にも来なかったくせに、遺産はまだかと催促する夫からの連絡に、私は怒りが込み上げてきて……。
「ん? 他人には渡さないよ?」
「は?」
私が「他人には渡さない」と返すと、夫は絶句していました。実は私、聞いてしまったのです……。
数日前、喪服を取りに自宅へ戻ったとき、夫が義母と電話で「遺産が手に入ったら、まずは高級寿司を食べに行こう! でも嫁は他人だから連れて行かない」と笑い合っていました。
私は「嫁の私を他人と言うのなら、正真正銘の他人になりましょう」と夫に告げ、離婚を宣言しました。
「嫁は他人」それなら私は…
私の決意を知り、夫は大慌て。「誤解だ!」と必死に言い訳してきましたが、もう手遅れ。それに、離婚したいと思ったのは、今回が初めてではありません。前々から思っていたのです。
ギャンブル好きで、お金の使い方が荒く、借金を抱えることもあった夫。その上、お世話になった父の葬儀にも来ない、薄情で恩知らずの性格です。借金を肩代わりしてもらったときでさえ、感謝の気持ちを十分に示すことはありませんでした。今回のこと以外にも離婚の理由を挙げたらきりがありません。
私から離婚を突きつけられ、このままでは自分が遺産の恩恵に一銭もあずかれないと焦った夫は、その翌日、義母とそろって私の実家にやってきました。仕事が忙しく、お見舞いにも葬儀にも来られなかったのに、お金が絡んだ瞬間、すっ飛んで来たことにも腹が立ちます。
2人は本心とは思えない形だけの謝罪を始めましたが、私は拒否しました。すると夫は「今まで養ってやったのに!」と開き直りましたが、稼ぎのほとんどをギャンブルに使い、月に数万円しか家に入れなかった人が何を言うのでしょう。わが家を支えていたのは、私のパート代です。きっちり家計簿をつけていたので、証明もできます。
まだ片付けも終わらず、お線香を上げに来てくださるお客さまもいる状況。夫たちをかまっている暇なんてありません。さっさと帰ってもらいたかったのですが、「離婚しないでくれ! 謝っているだろう?」などと、粘られて困りました。
遺産目当てで父の死を待ち望んだ夫へ天罰
仕方なく夫と義母の話を聞くと、どうやら2人には差し迫った事情があるようでした。最近、義父が投資で大きな損失を出し、それを取り戻そうと借金までして再び投資したものの、さらに失敗してしまったとのこと。義実家を売却しなければならないほど追い詰められており、私の父の遺産をあてにしていたのです。
「人助けだと思ってお金を恵んでほしい」と涙ながらに懇願されましたが、お断りしました。私が援助を拒み続けると、夫は「心の冷たいやつだ」と逆ギレ。もし夫が、父の葬儀に駆けつけ、普段から私を大切にしてくれていたなら、少しは気持ちも違ったかもしれません。しかし、すべては夫自身の行いが招いた結果です。
その後、弁護士を通して話し合い、私は財産分与をきちんと受け取り、離婚しました。自業自得の結末を迎えた義家族がどうしているかは、わかりませんが、きっと苦しい生活を送っていることでしょう。私は元夫の連絡先をブロックし、父が残してくれた財産を大切にしながら、今は気楽な独身生活を謳歌しています。
◇ ◇ ◇
大切な家族の死を望むような言動……。それだけでも許せないのに、お金のことしか考えていない姿に、ただただ残念に感じますね。離婚して正解だったのではないでしょうか。金銭的な援助をあてにする前に、人として伝えるべき感謝の言葉があったはずです。夫には過去を振り返って、大いに反省してもらいたいものですね。
【取材時期:2025年9月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。