久々に実家に帰ると、妹はいつものように「ねぇ、お姉ちゃ~ん! 聞いて聞いて!」と話しかけてきました。どうせ、また自慢話が始まるのだろうと内心で身構えていると、満面の笑みで「ついにね、超ハイスペックな彼氏ができちゃったの! これでもう人生勝ち組って感じ! 」と言ってきた妹。
私は心の中で小さくため息をつきながらも、「へぇ、そうなんだ。よかったじゃん」とだけ返しました。そして聞いてもいないのに、妹はその彼氏の年収や職業、居住地まで誇らしげに話し続けてきたのです。
妹の彼氏は地元の有力企業に勤めるコンサルタントで、年収は4桁。妹の言葉に、私は冷めた笑みを浮かべずにはいられませんでした。妹が見ているのは、その男性の肩書きだけ。彼の内面に興味がないのはもはや明白でした。
私が「その人自身のことをちゃんと見てあげなさいよ」と諭すと、妹は口を尖らせて……?
どこまでも姉にマウントを取りたがる妹
「説教くさくてうざーい!」と反発してきた妹。そして、私のことを馬鹿にし始めたのです。
「お姉ちゃんは私と違って、ず~っと彼氏いない歴更新中だもんね! お姉ちゃんに言われなくても、彼のことは私が一番わかってるんだから!」
昔から、こうして私を貶めてきた妹。過去を思い出して、私の心にじわりと痛みが広がりました。私は努めて冷静を装いながらも、「……まぁ、一応、彼氏はいるよ」とつぶやくように言いました。
すると、途端に目の色を変えた妹。私の彼氏のスペックを矢継ぎ早に聞いてきて、自分の彼氏と比べ始めたのです。私はある程度はぐらかして答えていたのですが、妹はそんなことには気づかないようでした。
「どうせお姉ちゃんの彼氏だもん。見た目も雰囲気もパッとしないでしょ? 地味な人には地味な彼氏がお似合いよね」
普段なら聞き流せていた妹の言葉ですが、そのときは違いました。私自身のことなら我慢できましたが、妹は私の大切な人を馬鹿にしたのです。
「……悪気がないにしても、その言い方はよくないよ。聞いてて気分が良いものじゃない」と言うと、妹は一瞬びっくりしたようでした。しかし、すぐさま「マジトーン? もしかして本当のこと言われて傷ついちゃった感じ?」とさらに私を煽ってきたのです。
その妹の態度に、私は閉口しました。そして、妹から距離を置きたいとあらためて思ったのでした。
勘違いから始まった、妹の暴走
3日後――。
「ちょっと、最低なんだけど! お姉ちゃん、うちの彼氏に手出したの!?」と妹から電話が。
私は大きくため息をつきました。私自身も予想していなかったのです。まさか、私の目の前で財布を落とした男性が、妹の彼氏だったなんて……。
財布を拾ったときには、その男性はもうカフェの中にいました。そこで財布を返したのですが、その様子を妹の友人が見ていたそうです。妹は友人から女性の服装や髪型などの特徴を聞いて、私だと確信したよう。
「絶対わざとでしょ! 無理やり……なにか彼とつながるきっかけを探してたんでしょ? 財布なんて口実で、狙ってたとしか思えないんだけど!?」
勝手な思い込みでまくしたてる妹。私がいくら説明しても、妹の耳には入らないようでした。そして、「お姉ちゃんなんてもう知らない! 今後一切、連絡してこないで! ブロックするから!」と言って、妹は一方的に電話を切ってしまいました。
厄介なことになったと思った私は、すぐに財布を返した男性にメッセージを入れました。今度お礼がしたいと言われ、とりあえず連絡先を交換していたのです。念のため妹の名前を伝えて、妹の彼氏なのかを確認しましたが、間違いありませんでした。
すでに彼のほうにも妹から激しいメッセージが届いているようで、さんざん責められて疲労困憊の様子。「許してほしかったら、ハイブランドのバッグ買ってきてよ! 反省の気持ちをちゃんと示して!」と妹は追い討ちをかけているようで……怒りやあきれを通り越して、私はもはや笑うしかありませんでした。
妹の彼氏は「正直なんかもう、疲れちゃって……しばらく距離を置こうかと思ってます。お財布のお礼は別でさせてくださいね」と送ってきました。
一度感情的になると、話が通じなくなる妹をさんざん見てきた私。「それが良いと思うよ、無理しないでね」と返したのでした。
奪ったつもりがすべてを失った妹の末路
それから2週間後――。
私をブロックしたはずの妹から「お姉ちゃ~ん! スペシャルな報告がありまーす!」と連絡がありました。
「お姉ちゃんの彼氏、奪ったから!」
そして妹は続けました。「実はSNSでつながって、試しに『ごはん行きませんか?』って誘ってみたらOKしてくれたの! お姉ちゃんの彼氏、私のこと気になってるっぽいし? それに私の彼氏よりハイスペック! お姉ちゃんにはもったいないから奪っちゃった!」と妹は得意げに言葉を続けます。
妹は私から得た断片的な情報をつなぎ合わせ、SNSを駆使して私の彼に辿り着いたようでした。
「お姉ちゃんの彼氏は、絶対に今日で私のものにしてみせる」
「そして……そのまま一気にゴールインよ」
「無理だと思うけど?」
「は?」
私の言葉に、妹は一瞬フリーズしたようでしたが、私は「私たち、もう結婚してるの」と続けました。すると、「 ウソでしょ!? 入籍してるの!? 私、そんなの聞いてないし!」と妹。
私は夫や両親と相談のうえ、意図的に妹に黙っていたのです。私がなにも言わないことで、それを感じ取ったのでしょう、妹はさらに続けました。
「どうして教えてくれなかったの!? なんで私には内緒なの!?」
「昔から、あなたは私のことを見下しているでしょう……? 結婚したって言ったら、どうせまた馬鹿にされるか、面倒なことを言われるんだろうってわかってた。だから、夫と相談してあなたには秘密にしていたの」「それと、夫が私を裏切るわけないから!」と言うと、「勝手に決めつけないでよ!」と妹は喚きました。
そして、「彼はもう私に夢中だから!! 地味なお姉ちゃんはすぐに飽きられて捨てられる運命なの! ほんとに奪うから!」と言って、妹はまた一方的にやり取りを終えてしまったのです。
3時間後――。
妹から電話が。「ちょ、ちょっと、どうしよう!!」と焦った声に、私は状況を把握しました。
妹から電話が来る前に、夫からも連絡を受けていた私。実は夫は、SNSでの妹からの誘いに困っていたのです。何度断っても自分勝手に都合よく解釈して、話を進める妹に疲弊していた夫。DMのスクショを見せてもらいましたが、夫はOKなどしていません。妹が、私から奪おうと躍起になっているのが一目瞭然でした。
そこで私は両親に相談し、夫と妹の食事の場に両親に行ってもらい、同席して妹を叱ってもらうことにしたのです。
「もう本当、最悪なんだけど! 私とのDMのやり取りをパパたちに晒すし!」「『人として恥ずかしい』『どうしてそんなひどいことができるの』って怒られるし……『姉夫婦に関わるな!』とまで言われて! そんなの不公平じゃない!!」
「不公平? 姉の彼氏を奪おうとする妹なんて最低だよ!」「だいたい夫は断ってるのにどうしたらそんな風に勘違いできるの? そんなに私から奪いたいの!?」「この結果はあなた自身が招いたことだよ。もう二度と、私にも夫にも連絡してこないで」と言って、私は自分から電話を切りました。ふーっと息を吐き出すと、長年ため込んできた怒りと悲しみがようやく報われた実感がわいてきました。
その後――。
父が「もう二度と、姉夫婦に関わるな。これ以上、お前を姉の家族に近づけるわけにはいかない」と言ってくれたおかげで、私たち夫婦は妹と距離を置くことができました。
長年、妹との関係に囚われていた私でしたが、ようやく真の幸せと穏やかな日々を手に入れることができました。妹のように肩書だけにとらわれると、本当に大切なものまで見失ってしまうのだと、改めて感じました。心から信頼できる人と築く深い絆を大切にしながら暮らしていきたいと思います。
【取材時期:2025年6月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。