「数日、実家に帰る」と夫に伝えたら…
事情を話すと、夫は一応驚いた様子は見せたものの、すぐに「お前がいない間の俺の飯はどうするの?」と言い出し、自分の食事の心配を始めました。その言葉を聞いたとき、「心配するのはそこなの?」と心の底からがっかりしました。本来であれば、母の体調や私の気持ちを気遣ってほしいところ。夫の関心は自分のごはんだけなのだと痛感したのです。
とりあえずカレーなど夫でも食べられそうなものを用意して、バタバタと家を出ました。数日後の19時ごろ、夫から「いつになったら帰ってくる? シャンプーがなくなりそうだ」といった内容の連絡があり、相変わらず自分の生活の不便さばかりを訴えてきました。私は「それくらい自分で買ってきてほしい」と返しましたが、「つい忘れちゃうんだよね」と悪びれる様子もありません。
その流れで「洗濯も回していないのでは?」と尋ねると、「それは大丈夫。母さんがやってくれたから」とさらりと言いました。その言葉を聞いた瞬間、私は思わず固まってしまいました。どうやら義母が家に来て、掃除や洗濯、食事の用意までしてくれているようでした。その事実を知ったとき、一気に力が抜けるような、それでいて怒りがこみ上げるような、複雑な気持ちになりました。
夫に「もう少し家事をして」と伝えると…
母は「認知症の疑い」ではなく、これから進行していくかもしれない段階に入っています。今後、私は実家に帰ることが増えるかもしれないし、ときには長く家を空けることもあるかもしれません。だからこそ、もう少し自分で身の回りのことをできるようになってほしい──そう伝えると、夫は「そのときはまた母さんを呼べばいい」と笑って答えました。
私が「義母だって、いつまでも元気でいられるとは限らないよ」と現実的なことを口にすると、夫は「嫌なことを言うなよ」と不快そうな表情を見せ、さらには「母さんがお前の家事が雑だって怒ってた」と追い打ちをかけるようなことまで言い出しました。私は、母のことで急いで実家に帰る準備をしていたことや、義母が家に来るとは思っていなかったことを伝えましたが、その事情は「言い訳」として片づけられてしまいました。
夫は最後に、「お前がいなくなるなら、ちょくちょく母さんを呼ぶから」「文句を言われないようにしておいたほうがいいぞ」と軽い調子で言いました。その言葉を聞きながら、パートナーであるはずの夫が、こんなにも“自分のことだけ”で頭がいっぱいなのだという現実を、改めて突きつけられたように感じました。
「お前の介護はイヤ」夫のまさかの発言に私は…
それから1カ月後のこと。私は、翌日からまた実家に行く予定でした。そこで改めて夫にそのことを伝え、「作り置きのおかずは冷凍庫に入れてあるからね」「それと、お義母さんにはキッチンに入らないようにしてもらえる?」とお願いしました。
夫は「了解〜」と軽く返しつつ、「なんか母さんの飯、最近まずいし。作らせないことにするよ」と、冗談めかして言いました。その言葉に私は少し引っかかりながらも、「そうなんだ……」とだけ返しました。
すると夫は唐突に「お前も将来はお義母さんみたいにボケるのか? 俺はお義父さんみたいに介護するのは嫌だから、その前に離婚だな」と笑いながら言いました。その瞬間、胸の奥がひやりと冷たくなるのを感じました。けれど私はあえて明るい口調を装い、「そんなこと言って大丈夫?」と返しました。
夫は「は? どういう意味だよ?」とトゲのある反応を返してきました。私は「認知症なんて、いつ誰がなるかわからない病気だよ。基本的には高齢者に多いけどね」と、できるだけ冷静に伝えました。すると夫は「はあ? 俺? 俺もうちの親もピンピンしてるし、ボケてないけど」と鼻で笑いました。私はそこで、ふと思い出したことを口にしました。「さっき、お義母さんの料理がおいしくなくなったって言ってたよね?」と。
義母の様子に違和感…夫に打ち明けると!?
夫が「それがどうした」と返してきたので、私はここ数週間で気になっていたことを丁寧に伝えました。私が実家に帰っている間、義母がうちで掃除や洗濯、料理などをしてくれているものの、家事がどこか中途半端になっていたり、物がまったく別の場所に置かれていたりすることが増えていて……。「味がおかしい」と感じるほど料理にも変化が出ているのだとしたら、一度きちんと病院で診てもらったほうがいいと思っていると——。
それらを落ち着いた口調で説明しましたが、夫は「母さんが認知症なわけないだろ! 普通だよ!」と声を荒らげました。そして私の言葉を「母親をボケ老人扱いしている」と受け取り、「自分の母親がボケたからって、母さんまでボケ扱いするな! お前、本当に最低だな」と吐き捨てるように言いました。
私は「私はあくまで“可能性”の話をしただけだよ」と伝えたうえで、「それと、さっき“私がボケる前に離婚する”って言ってたよね?」と話題を戻しました。夫は「言ったけど? ボケる前に絶対離婚してやる」と、何の悪びれもなく笑いながら答えました。その瞬間、私の中で何かがすっと冷めていくのを感じ……。そして静かに決意を固めながら、「だったら、今離婚してもいいよね?」と切り出しました。
夫のひと言をきっかけに離婚成立…それから半年後
夫は「は?」と戸惑いを隠せない様子でした。私は淡々と続けました。病気になる前に捨てると、今はっきり宣言されたのだから、今離婚しても何も問題はないはずだと伝えました。夫は最初こそ抵抗していましたが、「“捨てられる日”まで夫の世話をしながら生きるつもりはない」と私ははっきり告げました。
すると夫は逆ギレするように、「ああそうかよ! ちょうどよかったわ。俺は若くてやさしくて、なんでも言うことを聞く嫁を見つけて再婚してやる。人の親をボケ扱いするような女、こっちから願い下げだ!」と言ってきました。私は最後に、「じゃあ私は近いうちに引っ越します。離婚届は、実家から戻るときに用意しておくね」とだけ伝えました。
離婚して半年後、元夫から「大変なことになった」と連絡がありました。聞けば、義父が様子のおかしい義母を病院に連れて行ったところ、義母も認知症と診断されたとのことでした。私が無視していると、「どうしたらいいのかわからないから実家に来て手伝ってほしい」と言ってきたので、私は「もう他人だし、私の母が認知症になったとき、あなたは何かしてくれた?」と問い返しました。元夫が「実家に帰らせただろ」と言うので、「じゃあ、あなたも実家に帰りなよ」と突き放しました。
さらに1カ月後、元夫から「母さんの介護を手伝ってほしい」と再び連絡が来ました。元義父は家事が苦手なようで、家の中はぐちゃぐちゃ、「限界だ」と泣きついてきたのです。私は「大変そうだけど私には関係ない。あなたの家まで見る余裕なんてない」と伝えました。それでも元夫は「認知症の介護に慣れてるだろ? 少しだけでいいから助けてくれ」と食い下がり、「俺にはお前が必要だった。離婚は間違いだった」と泣き言を並べました。
その後も元夫から「助けてほしい」という連絡が何度かありましたが、必要な手続きがすべて終わったタイミングで連絡先をブロックしました。そして、自分の両親を大切にしながら、悔いのない人生を歩んでいこうと、改めて心に誓いました。
◇ ◇ ◇
親の介護や病気といった問題に直面したとき、パートナーがどれだけ誠実に向き合ってくれるかは、その後の夫婦関係を大きく左右しますよね。自分の不便さばかりを優先し、相手の状況に無関心でいる姿勢は信頼を失う大きな原因に。いざというときに支え合える関係であるためにも、日常の中で「思いやり」と「分担の意識」を大切にしていきたいですね。
【取材時期:2025年11月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。