ある日、接待だと言って深夜に帰宅した夫は、ひどく酔っていました。ソファでスマホを確認しながら眠り込んでしまった夫。すると、誰かとメッセージのやり取りをしている途中だったのか、複数回の通知音が立て続けに鳴ったのです。
ロックが解除された状態のスマホには、女性とのハートだらけのトーク画面が表示されていました。
「次はいつ会える?」
「さっき別れたばかりなのにもう会いたい♡」
「寂しいよ~♡ ダーリン愛してる♡」
という言葉と、事後としか思えない2人の写真が届いていたのです。このメッセージが届く前に夫が送ったメッセージには「今日もかわいくて癒された〜! またすぐ会おう! 俺の天使ちゃん♡」と綴られていました。
これ以前のメッセージからも、不倫は明らか。私とは行ったことのない高級店での食事、私はもらったこともないブランド品のプレゼント。それどころか、2人はすでに再婚の約束まで交わしていたのです。他にも、証拠となり得そうな写真もたくさん残っていました。
さらに、私に不倫の濡れ衣を着せて、夫が慰謝料を受け取る計画まで立てていたのです。あまりに身勝手な内容に、怒りを通り越してあきれてしまいました。私は冷静に、2人のやり取りや写真を自分のスマホで撮影し、保存しました。
夫と不倫相手が考えた計画
すぐに弁護士に相談し、探偵に依頼してさらなる不倫の証拠集めを始めた私。約1カ月間の調査ののち、受け取った調査報告書を確認すると、不倫相手は、夫と同じ会社の新人女性社員だとわかりました。ついこの前まで学生だった10歳以上年下の女性と再婚の約束までしているとは……。
調査報告書には、2人は毎日定時で仕事を終え、デートを楽しんでいました。残業も休日出勤も、すべて不倫相手と会うための嘘だったことが判明。それどころか、私が夜勤の日には、不倫相手を自宅へ招き入れていたこともわかりました。私と寝ているベッドで、2人は情事にふけっていた……そう考えると吐き気がします。
さらに、以前から飼い猫の見守りのためにリビングに設置していたペットカメラを確認すると、そこには衝撃的な映像が。2人がソファで不貞行為に及ぶ様子だけでなく、私を陥れるための計画を笑いながら話す声まではっきりと記録されていました。
「AIで奥さんの不倫写真、でっち上げちゃう?」
「もし俺らの関係がバレそうになったら、妻の不倫の相談に乗ってもらっていたって言い訳するか!」
AIで写真を作ったところで、そんなものすぐに嘘だとバレるはず。それに妻の不倫を、10歳以上年下の新人女性社員に普通、相談するのでしょうか……。少し考えれば無理があるとわかることが、本気でまかり通ると思ってしまうのですから、恋愛感情とは恐ろしいものです。
そんな愚かな会話がすべて録音されているとも、私がすべて把握しているとも知らずに夫は……。
迫真の演技で私に迫る夫
そして、ついにその日はやってきました。珍しく早い時間に帰宅した夫は、改まった様子で「話がある」と切り出し、テーブルに数枚の写真を叩きつけました。
「お前、不倫しているだろ? ずっと俺を裏切っていたのか……」
そう言って夫が出した写真は、AIで合成されたであろう、私と見知らぬ男性の親密そうな写真。夫の迫真の演技に思わず笑ってしまいそうになりましたが、私はなんとか笑いを堪えて、「何よこれ。こんなの知らない」と無実を訴えました。
「これだけの証拠があるんだ! 言い逃れはできない!」
夫は声を荒げ、「離婚だ! 慰謝料も請求する! 素直に応じるなら、裁判沙汰にはせず内々で済ませてやる!」と続けたのです。
すべて想定内だった私は、夫の提案に対し冷静に「離婚には応じます」と即答。あまりにあっさり離婚を受け入れた私に、夫は一瞬戸惑いの表情を浮かべました。
さらに私が「離婚は構わないけど、慰謝料を支払う気はない」と告げると、顔色を変えた夫。「なぜだ! 証拠もある! 不倫しておいてお前……」私が素直に応じなかった場合のプランは用意していなかったのか、夫は言葉を詰まらせました。
「慰謝料を支払うべきなのは、不倫をしていたあなたよね? 合成ではない証拠もあるし、もう準備できているのよ」
私は、弁護士を立てて準備を進めていたことを告げ、不倫の証拠写真やUSBを机に広げました。2人がラブホテルに入って行く写真、デートを楽しんでいる写真、そして決定打となった自宅での映像。
自分たちの情事や悪巧みが筒抜けだったと知り、夫の顔はみるみる青ざめていきました。
形勢逆転、慰謝料を支払うのは?
完全に形勢逆転すると夫は、態度を変え「彼女にしつこく迫られて断れなかったんだ」と言い訳を始めました。しかし、もう手遅れ。私は弁護士を通じ、夫と不倫相手の2人に慰謝料を請求すると告げ家を出ました。
後日、弁護士事務所で行われた話し合いの場。家を出た私に何度も連絡してきていた夫は、その間に不倫相手とはすっかり仲違いした様子でした。意気消沈した夫は「離婚したくない」とゴネましたが、私の意思が固いと悟ったのか最終的には離婚にも慰謝料の支払いにも合意しました。
その後すぐに離婚が成立。慰謝料は、夫が不倫相手の分もまとめて支払うことになり、私は一括できっちり受け取りました。夫は、支払いのために借金することになったそうです。今はもうどこで何をしているか知りませんが、きっと苦しい生活を送っていることでしょう。
私はひとり暮らしを始めて、今は穏やかで幸せな毎日を送っています。
◇ ◇ ◇
AIで嘘をねつ造とは……怖い世の中になりました。しかし、人を陥れようとする浅はかな計画には、必ず綻びが生じるものなのかもしれません。家族や友人、自分と関わる人たちには、嘘なく誠実に向き合いたいものですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。