高熱で休むと、上司が“仮病扱い”
自己最高記録の「40.2℃」という熱にうなされながら、僕は会社の上司に欠勤の電話を入れました。
「申し訳ありません、40度を超す熱がありまして……本日お休みをいただけないでしょうか」
すると、返ってきたのは心配の言葉ではなく、疑念に満ちた声でした。
「はあ?昨日までピンピンしてたのに欠勤だぁ?まさか仮病を使ってサボっているんじゃないだろうな」
「いいか、これは俺だけの意見じゃない。社長が『信頼に欠ける社員は、今後の処遇について検討する』と言っているんだぞ!」
社長の発言までちらつかせ、一方的に「今からお前の家まで確認しに行くからな!」と告げると、電話は乱暴に切られました。
しばらくして、玄関のインターホンが鳴り響き、ドアを開けると案の定、腕を組んだ上司が立っていました。
「ほう、本当にパジャマ姿か。だが、大したことなさそうじゃないか」
人の顔を見るなりそう言い放つ上司。その時でした。
「信頼できない社員は、あなたでは?」妻がピシャリ
「あら、玄関先で騒がしいけれど、どなたかしら」
リビングにいた妻が心配する声がしました。上司は声の主に気づかないまま、さらに言葉を続けます。
「なんだ、奥さんか。アンタの旦那、大事な時期に仮病で会社をサボってんだよ!」
「仕事を舐めてると、クビになっちまうぞ。社長も『信頼に欠ける社員は許さない』とご立腹だ。奥さんからもなんとか言ってやってくれ」
その暴言と同時に、声の主がリビングから姿を現しました。その顔を見た瞬間、上司はカッと目を見開き、凍りつきます。
「しゃ、社長…!?な、なぜ、ここに……」
そう、僕の妻は、この会社の新社長だったのです。最近入籍したばかりで、上司は僕たちが夫婦であることを知りませんでした。 妻は氷のように冷たい視線で上司を見つめ、静かに言いました。
「私の夫に、なんの用かしら?本気で仮病だとでも?」
そして、ゆっくりと続けます。
「体調不良で休む部下の自宅まで押しかけ、挙句の果てには私の言葉を勝手に使って部下を脅す。そもそも、そのような不当な理由で社員を一方的に解雇できると本気で思っているのですか?」
「あなたが先ほど言っていた『信頼に欠ける社員』とは、まさにあなたのことではないかしら?」
自らが招いた結末
ぐうの音も出ないとは、まさにこのことでしょう。上司の顔はみるみるうちに青ざめていきました。
「もうお引き取りください。あなたの今後の処遇については、今回の件を踏まえ、私が直接検討します」
妻にそう告げられた上司は、「申し訳ありませんでした……」と絞り出すのがやっと。力なく肩を落とし、すごすごと帰っていきました。
後日、上司は社長である妻から厳重注意を受け、深く反省したと聞きました。
理不尽に振りかざした言葉は、ブーメランのように自分に返ってくる。そのことを、彼は身をもって知ったことでしょう。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。