楽しい食卓が一変
その日は金曜の夜で、祖父も機嫌がよかったのでしょう。もともと熱いお風呂が大好きだった祖父は、夕食前にアツアツの湯船に浸かり、その後、祖母の作った天ぷらと、小さなビール缶で晩酌を楽しんでいました。とてもご機嫌そうで、私も安心していました。
私の祖父は昔気質で「我慢は美徳」と考える人。めったなことでは痛みや苦しみを口にするような人ではありませんでした。しかし、そんな祖父が突然、冷や汗をかきながら苦しみ始めたのです。
当時はまだ子どもだった私でも、その様子がただ事ではないことはすぐにわかりました。恐ろしくなった私は「救急車を呼ばなきゃ」と思い、祖母に「じいじがかわいそう、救急車を呼んで!」と必死に訴えました。
けれども祖母は「ご近所の目があるから」「腹痛くらいで救急車を呼ぶのは、救急隊の方に申し訳ない」と言い、呼ぼうとしませんでした。さらに「子どもが口を出すものじゃない」と叱られてしまいました。
のんびりとした祖母の対応に
このままでは本当に祖父が死んでしまうかもしれない。そう感じた私は、離れで仕事中だった母に電話をかけました。普段から「どうしてものとき以外は、仕事中に連絡してはいけない」と言われていたのですが、子どもながらに「今こそがその“どうしても”のときだ」と感じたのです。
とはいえ、当時の私には要領を得た説明などできず、ただ泣きながら「じいじが〜!」と言うことしかできませんでした。それでも、母は私の切羽詰まった声から事態の深刻さを察してくれ、仕事を切り上げてすぐに駆けつけてくれました。
そして、母が目にしたのは、泣きじゃくる私と、まるで色が失われたかのような顔色で苦しむ祖父、当番医を調べている祖母の姿でした。母は「何しているの、救急車を呼ばなきゃ!」と祖母に声を上げましたが、祖母は「もう当番医に連れて行くためにタクシーを呼んだから、今から救急車を呼んでもすれ違いになるよ」とのんびりとした調子で答えました。
当番医も驚いて…
当番医に到着してからも、祖父の苦しみは続いていました。母は祖母に「受付の方に状況を伝えて、順番を早めてもらおう」「この症状は一刻を争うかもしれない」と強く訴えました。しかし、祖母は「他の人も具合が悪いのに、うちだけ先に診てもらうなんて申し訳ない」と言い、母の提案を頑なに受け入れませんでした。
やがて順番が来て診察を受けたところ、医師は祖父の状態を見た瞬間「うちでは対応できません!」と、すぐに救急車を手配。祖父はそのまま大きな病院に搬送されました。
搬送後、祖父は応急処置を受けて即入院となり、検査や経過観察も含めて、最終的に約3カ月の入院生活を送ることになりました。
まとめ
祖父は幸いにも命に別状はありませんでしたが、あの夜、祖父がどれほどの苦しみに耐えていたのかを思うと、今でも胸が痛みます。
もちろん、周囲の人や救急隊員の方々への配慮は大切なことです。しかし、救急車を呼ぶべきタイミングでためらったり、伝えるべきことを遠慮してしまうことが、かえって深刻な事態を招く可能性もあるのだと、この経験を通して強く感じました。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:磯辺みなほ/30代女性。ゲーマー。発達障害持ちの夫と2人暮らし。大変なことも多い中、それ以上にネタと笑顔にあふれる毎日を送っている
イラスト/まげよ
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年8月)
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