さらには、高給取りの義父に経済的にも精神的にも依存しきっており、私が将来への懸念を口にしても、まったく聞く耳を持たない夫。
それどころか、私が少しでも夫や義父に意見しようものなら「専業主婦は、俺たち男のおかげで生活ができているんだ」と言ってきます。お互いの役割があってこそ家庭は成り立つはずなのに、あまりに傲慢な物言いです。私や義母が家を守っているからこそ、安心して仕事に集中できるというのに、本当に頭にきます。
そもそも私が専業主婦になったのは、夫と義父からの強い希望があったからです。それにもかかわらず、私や義母に対して「家のことだけして飯が食えるなんて専業主婦はお気楽だ」「何の苦労もせず生きている」などと私たちを見下すのは、どう考えても筋が通りません。優位に立つために私に家庭に入らせたのでしょうか……。
度を越した夫と義父の態度…
わが家も義実家も、お金の管理はそれぞれ夫と義父が担当。しかし、光熱費も自分のスマホ代さえも義父に頼りきりの夫の姿に不安を覚え、ある日、私も家計の状況を把握したいと伝えました。
いくら義父が高給取りでも、いずれ定年を迎えます。義両親が老後のことをどう考えているのかわかりませんが、いつまでも甘えているわけにはいけません。私たちが義両親を支える日がやってくるはずです。
そんな将来のための貯蓄について尋ねると、夫は「俺が稼いだ金に口を出すな」と激怒。しまいには「お前が管理して好き勝手に俺の金を使うつもりなんだろう」と、私をさげすんできました。あまりにひどい言いようであきれる私に、夫はさらに「主婦は養ってもらっている立場なのだから、黙って夫を支えろ。おとなしく従順な母さんを見習え」と続けたのです。
それから1カ月後、ついに私の怒りは頂点に。義父が長年不倫していた事実を知ったのです。驚くことに、夫は以前からその事実を知っていました。夫は、義父の女性関係は昔からのことで、義母もそのことには気づいていたはずだと言います。そして、「女を捨ててる母さんが悪いだろ? それに、外に女を作る財力と魅力がある父さんはかっこいいだろ」と義母を非難し、義父を肯定しました。
夫は、義母がこれまでどんな気持ちで過ごしてきたか考えようともせず、実の母親に対してひどすぎます。
義父はこれまで、義母にプレゼントひとつ贈ったことがなく、感謝の言葉すらかけたことがありません。その一方で、不倫相手には高級ブランド品を買い与え、旅行に連れて行き……その事実を平然と、むしろ誇らしげに語る夫の神経に、私は強い憤りを感じました。
素晴らしい妻であり、母である義母
そして、何よりも私に衝撃を与えたのは、夫が放った次のひと言でした。
「父さんが母さんを一生愛せると思うか? 老けてるし、みすぼらしい。いつも父さんに『のろま』って言われてるじゃないか。何の取り柄もないんだから、結婚してもらっただけでも感謝すべきだろ」
夫の目は節穴なのでしょうか。義母がどれほど素晴らしい妻か、そして母か、まったくわかっていないのです。義母は料理じょうずで、家も常にピカピカ。義父や夫をうまくなだめて、どれだけバカにされても黙って2人に快適な暮らしを提供。どんな家事も完璧にこなします。義母に相談すれば解決しない悩みはありません。
しかし夫は、「そんなことができても一銭にもならない」と笑い飛ばすだけ。夫にとっては当たり前の日常でも、義母の行いや振る舞いは、誰にでも真似できるものではないのです。
自分を育ててくれた、そんな素晴らしい母親を、どうしてここまで無下にするのか私には理解できません。確かにお金を稼ぐことは大変ですが、それが家族を軽んじていい理由にはならないはずです。私が抑えてきた気持ちをぶつけると、夫は「うざい」とひと言。
「黙れ。俺にもっと感謝しろ。それ以上文句を言うなら親父に言いつけるぞ」と脅してきました。その後も夫の態度は変わらず、私たちは口論に。
「気に入らないなら出ていけ」
「俺はいつ離婚してもいいぞ!」
そう言って私の意見を遮った夫。私としては離婚で構いません。むしろありがたいくらいです。しかし、それで夫は大丈夫なのでしょうか。私はこう続けました。
「義両親も離婚になるけど……?」
「は?」
私からの言葉に一瞬ひるんだ夫。しかしすぐに調子を取り戻し、「そんなの父さんからしたら願ったり叶ったりだろ」と言ってのけました。
後悔するのはどっち?
今から数カ月前のある日、義父と夫からいつものようにひどい言葉を浴びせられたあと、私は義母に相談しました。「お義母さん、私もう限界です。真剣に離婚を考えています」そう告げると、義母も私に打ち明けてくれたのです。
「私ももうこれ以上、あの人たちのために生きるのは嫌よ。いつでもあの人たちを捨てられるように準備していたの」と言う義母。続けて「もしあなた(私)が離婚するなら、私も同じタイミングで離婚するわ」と言いました。
そして義母は、探偵に依頼したという義父の不倫調査書とサイン済みの離婚届、さらに弁護士の名刺を見せてくれたのです。「離婚を切り出す前にあなたも息子の調査してもらいなさい。あの人の子だもの、きっと何か出てくるはず」と促され、夫の素行調査をすると夫も不倫していることが明らかになりました。
そうして私と義母はそろって、それぞれの夫に事実を突きつけ離婚。弁護士を通して慰謝料もきっちり請求したのです。
当初、夫と義父は「離婚して惨めになるのはお前たちだ」と高をくくっていましたが、状況はすぐに一変。それぞれの不倫相手を家に住まわせようとしたそうですが、そううまくはいかず……家事が一切できない男2人の暮らしは、想像に難くありません。
私も義母も「戻ってきてくれ」と泣きつかれましたが、あんな人たちの元に戻るわけがありません。風の噂では、生活がすさんだせいか2人は仕事がうまくいかなくなり、今では見る影もないほどに落ちぶれてしまったのだとか。
一方私と義母は、それぞれひとり暮らしを始めました。義母は家事代行の仕事を見つけ、生き生きと働いています。私も結婚前に勤めていた会社に戻ることができて、メリハリある毎日を楽しんでいます。短い同居生活でしたが、理不尽な親子と対峙する中で、私と義母の間には固い絆が生まれました。家族ではなくなってしまいましたが、これからは戦友として良い関係を続けていきたいと思います。
◇ ◇ ◇
父と息子、ひどい親子でした。家族を見下す横暴な義父の姿を見て育った夫は、もしかすると被害者かもしれません。しかし、そんな環境下でも、自らの力で誤りに気付くチャンスはたくさんあったはず。今回の痛い経験をもとに、これからの生き方を変えていってほしいと思います。深く心に傷を負った妻たち2人には、幸せが訪れることを願うばかりです。
【取材時期:2025年9月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。