母子家庭で育った夫は、いつも義母の言いなり。結婚前は、「仕事を続けたいなら続けていいよ。君を応援するよ」と言ってくれていたのに、義母に口出しされるとコロッと意見が変わりました。「母さんも、ああ言っているし、君には家にいてほしい」と。
しかし私は、少しでも社会との繋がりを持ちたかったので、パートタイムで働くことを許してほしいと義母に頼み込み、会社に時短勤務の相談をして、今はパートとして働いています。義母が「パートなら……」と、しぶしぶ認めてくれた形です。
嫌がらせをしてくる義母に天罰?
そうして、働く私が気に入らない義母から毎日嫌みを言われる日々が始まりました。家事の手抜きは許さないと言って、わが家に押しかけてきて家中をチェックされたり、トイレットペーパーがなくなったと言って、夜中に買い物に行かされたり、嫌がらせを受ける日々が続き……。
そんなある日、仕事の会議を終えて私が自分の席に戻ると、置きっぱなしにしていたスマホに夫からものすごい数の着信が残っていました。慌てて折り返すと、パニック状態の夫から「母さんが事故に遭ってけがした! 入院した!」と告げられたのです。
私は上司に事情を話して、急いで病院へ駆けつけました。しかし、病室で私を迎えた義母は「遅い!」と叱責。元気な様子で「パートのくせに、どうしてすぐ来られないのよ!? 本当に不出来な嫁ね」と嫌みを言ってきたのです。心配していたのが馬鹿らしくなるほどの毒舌ぶりに、私は怒りが込み上げてきました。
そんな義母の傍には、すっかり肩を落とした夫の姿が。病室を出て夫に話を聞くと、退院後の介護をどうするかで頭を悩ませていたのです。ピンピンして見えた義母でしたが、実は半身に麻痺が残る大きなけがを負っていました。医師によると、リハビリである程度の回復は見込めるものの、日々の生活には人の助けが必要だろうとのこと……。
義母の介護問題、夫の暴論
退院後は在宅介護か、施設に入ってもらうかの選択を急に迫られることになった私たち。私は介護の専門家などに相談して決めるべきだと考えましたが、義母は在宅介護一択。夫も「母さんがそうしたいなら」と義母に賛成。
そして2人は揃って、私に「仕事を辞めて介護してくれ」と要求してきたのです。もはやお願いではなく命令でした。夫は義母との同居を勝手に宣言し、義母は「嫁の義務を果たせ!」と。そのとき、私の中で何かがプツリと切れ、離婚を決意しました。
後日改めて、私が離婚の意思を伝えると、2人は「家事も介護もする人がいなくなる」と大慌て。夫が放った「じゃあ、俺の飯は誰が作るんだ?」という言葉には、心底あきれて思わず笑ってしまいました。
「そんなの自分でやればいい。介護する相手はあなたの親でしょう? 私は介護要員じゃない」と言い返すと、夫は「俺は仕事がある。それに母さんは女だから、介護は男の俺より女の君がするほうが……」と言い訳を始めます。
「じゃあ、もし私のお父さんが倒れたら、お父さんは男だからあなたが介護してくれるの?」と私が問うと、夫は言葉に詰まり、「介護は女の仕事だ……」と蚊の鳴くような声で呟いたのです。そんな理不尽な理由で夫と義母のお世話を引き受けられるほど、私は心が広くありません。私は早々に夫との話を切り上げ、あとは弁護士に一任することにしました。
嫌みな義母と言いなり夫の末路
その後すぐ、弁護士に離婚の相談をした私。夫はしばらく「離婚したくない」と抵抗していましたが、長引く話し合いに疲れてしまったのか最終的には合意し、きっちり財産分与もしてようやく離婚が成立。
離婚後、元夫は仕事を辞めて実家で義母の介護を始めたそうです。しかし、自分の貯金と義母の年金だけでは生活が苦しく、日中は介護、夜はアルバイトという厳しい生活を送っていると聞きました。経済的な困窮と介護のストレスからか、親子喧嘩も絶えず、近所から苦情が来るほど怒鳴り合っているようです。
一方、私は時短勤務のパートからフルタイムの正社員に戻していただいて、今は仕事に打ち込んでいます。もともと仕事が好きだったこともあり、自分の力で人生を切り開いていける今に、大きなやりがいと幸せを感じています。
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夫婦は対等なパートナーであり、親の介護はどちらか一方に押し付けられるべき問題ではありませんよね。「家族」という言葉で個人の人生を縛り付けることは、誰にもできないはずです。夫婦や家族の問題には、お互いの気持ちを尊重し合って、その上できちんと向き合いたいものですね。
【取材時期:2025年9月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。