古い体質の会社にIT化の波が到来
弊社は創業50年以上の老舗企業。良くも悪くも昔ながらの体質でしたが、時代の流れには逆らえず。経営陣が「このままでは取り残される」と危機感を抱き、全社員を対象とした大規模なIT研修がスタートすることになりました。
研修は年齢や役職に関係なく、ランダムにグループ分けされ、20代の新人と50代のベテランが同じチームになることも。最初は戸惑いの声も多かったものの、「みんなで一から学ぼう」という前向きな雰囲気が広がっていきました。
3カ月の集大成、緊張のオンライン発表会
3カ月間の研修を経て、ついに迎えた最終発表会。各グループが学んだ成果をオンラインでプレゼンテーションすることになりました。
私たちのグループで発表を担当したのは、40代の課長。普段は営業一筋で、パソコンはできるものの新しいツール操作などにはちょっと戸惑うタイプ。それでも研修期間中、若手メンバーに質問しながら一生懸命取り組んでいました。
発表当日、課長の番がやってきました。画面越しに映る課長は、普段のトークの達人ぶりとは裏腹に、明らかに緊張している様子。
「それでは、第3グループの発表を始めます……」
少し震える声でスタートしましたが、資料はわかりやすく、説明も丁寧。10分間の発表は、大きなトラブルもなく無事に終わりました。

マイクオフ忘れの衝撃
発表を終えた課長。ホッとしたのか、大きく息を吐きました。
そして次の瞬間――
「あーーーやっと終わったーーー!緊張したーーーー!!」
マイクをオフにし忘れていたのでした。
一瞬緊張が走りましたが、画面越しにみんなが微笑んでいる様子が写ってほっこり。緊張感漂う発表会の空気が、一気に和やかになりました。
思わぬ失敗が生んだ温かい交流
数秒後、真っ赤になった課長がチャットに書き込みました。
「大変失礼いたしました。思わず叫んでしまい、申し訳ございませんでした」
すると、チャット欄には次々とメッセージが。
「とてもわかりやすい発表でした!」
「資料のまとめ方、参考にしたいです」
「みんな同じ気持ちです(笑)」
若手社員からベテラン社員まで、温かい言葉が飛び交います。普段は部署が違って話す機会のない人たちが、この一件をきっかけに打ち解けていきました。
発表会の後に会社で会ったとき、課長は照れくさそうにこう言いました。
「恥ずかしかったけど、みんなの優しさに救われたよ。IT研修で一番学んだのは、マイクのオンオフかもしれないな(笑)」
始めはみんななんだか惰性で取り組んでいた研修でしたが、この一件で思い出深いものに。なんども話題にのぼり、一緒に取り組んだグループにも絆のようなものが産まれました。
そしてもちろん、私自身もマイクのオンオフはこれまで以上に気をつけようと学んだ体験でした(笑)。
※AI生成画像を使用しています。
※本記事は、編集部メンバーの知人が体験した実話です。編集部がヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。