パートさんとは親しくするな?
ある日、私がうっかりワゴンを倒してしまい、商品を床にぶちまけてしまいました。慌てて拾い集めていると、総菜担当のパートのAさんが駆け寄ってきて「大丈夫? 無理しないでね」と声をかけてくれました。Aさんは勤務歴の長いベテランで、何かと私を助けてくれる頼れる存在です。
ところがそのとき、店の奥から「Aさん! 仕事中に話してないで!」と鋭い声が飛びました。店長です。Aさんはすぐに持ち場へ戻りましたが、店長は私に向かってこう言いました。
「社員がパートと仲良くし過ぎると、いろいろ面倒なの。社員は社員、パートはパートで線を引いてちょうだい」
同じ店で一緒に働いているのに、どうしてそんなふうに区別するんだろう。私はなんとも言えない気持ちになりました。
「まずい」と言われた総菜コーナー
うちのスーパーはチェーン展開していて、他店舗と比べると「総菜がおいしくない」とお客さまに言われることがよくありました。原因は、業務用の冷凍食品を詰め替えて販売しているからです。
設備的には店内調理が可能なのに、店長は「手間がかかるし、どうせ利益にならない」と取り合いません。Aさんたち総菜チームは「手作りにすればお客さまも喜んでくれる」と提案していましたが、店長はいつも聞く耳を持たないのでした。
200人分のオードブル予約が入った日
そんな中、ある日突然、200人分のオードブルの予約が入りました。近隣に新しく移転してきた会社の懇親会用だそうです。
店長は大喜び。「これで今月の売上目標は達成ね!」と上機嫌でした。私たちスタッフは張り切って準備を進めようとしましたが、店長は「いつもの冷凍品を詰めとけばいい」と軽い指示を出すだけ。
そして迎えた予約当日――信じられないことが起きました。なんと、店長が食材の発注をすっかり忘れていたのです。
「今からじゃ到底間に合いません。他店に応援を頼むしか……」と進言すると、店長は「そんなことしたら私の評価が下がるでしょ!」と怒鳴り、解決策を考えようともしませんでした。
プロの技が光った手作りオードブル
そのとき、Aさんが一歩前に出ました。「大丈夫、なんとかするから」と言い、青果・精肉・鮮魚の担当者を呼び集めたのです。
Aさんを中心に、皆が店内の食材をかき集め、総菜チームが総出で調理を開始。3時間後、無事に200人分のオードブルが完成しました。
でき上がった料理は、どれも彩り鮮やかで見た目にも美しく、味も抜群。Aさんはもともと料理人として働いていた経験があり、ほかのパートさんにも元ホテルの調理担当など、腕の立つ方が多かったのです。
その後の意外な展開
あの日のオードブルは大好評。口コミで評判が広がり、オードブルや総菜の予約が次々と入るようになりました。お店の売上も伸び、ようやく「手作りの味」が認められた瞬間でした。
その一方で、店長は本社からの指導を受け、別店舗へ異動となりました。私はその後、本社勤務に異動。今でも時々あのスーパーに立ち寄って、Aさんたちの作った総菜を買っています。
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スーパーの総菜は、忙しい毎日の中で私たちの食卓を支えてくれる存在です。あの日のように、現場の努力と知恵が集まれば、お客さまに喜ばれる“味”を作り出せるのだと、勇気をもらえた人も多いのではないでしょうか。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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