夫は「養っているのは自分だ」と大いばりです。ただでさえ余裕のない生活費の中で、食事への文句は日常茶飯事。さらに、義母が来るたびに「恥をかかせるな」と、過剰なもてなしまで求められました。
私には何も文句を言う権利はないと言い、気に入らないことがあると経済的に圧力をかける始末。
どう考えても理不尽な関係性ですが、現在は専業主婦で、自由に使えるお金はほとんどありません。父は早くに亡くなり、母は病気療養中なので、他に行くところもありません。自分の生活を守るためには、夫に従うしかないのです。
我慢の限界
そんな夫に耐えながらも、数年が経ったある日、後輩を連れて帰るので手料理でもてなせと命令されました。
その日は、夕飯は外で済ませると言って出かけていったので食事の支度はしていませんでした。もちろん余計なお金などないので、おもてなしできるような食材のストックもありません。それに加えて、帰る直前の連絡……。どう考えても不可能でした。
そのように伝えると、夫は「言い訳せずになんとかしろ!」と言って、いつものセリフ「俺がいないと生きていけないだろ? 生活費渡さないよ?」と言います。
得意の経済制裁をちらつかせる夫には、もう付き合いきれません。私は 「大丈夫! あなたからたくさんもらえるから」と夫に告げました。もちろんおもてなしの準備はしません。その日はそのまま眠ることにしました。
隠されていた真実
朝起きると、誰かを家に招いた形跡はなかったので、きっとそのまま外で飲んでいたのでしょう。しかし夫がイライラしながら帰宅したことが部屋の様子からわかります。
起きてきた夫は、予想通り私に激怒。私を責めながら、主婦としての役割を果たせない奴には生活費を出さないと言って、私の財布からカードと現金を無言で抜き取り、「頭を冷やせ!」と言い放ちました。
「何年も主婦だったお前は俺がいないと生きていけないだろ? 謝れ」と大きな声を出す夫。しかし私には切り札があります。
「生きていけるよ? お金はあなたからもらうから」という私に対し、夫は不思議そうな顔をしています。
この数年、私が黙って暮らしてきたわけではありません。
妻の反撃
実は夫には不倫相手がいます。気付いて釘を刺したこともありましたが「稼いでいる俺に文句を言うな」と言われ、改善は見られず……。それならば、と思って着実に証拠集めをしたのです。
弁護士にも相談済み。夫や不倫相手から慰謝料をもらう準備は万端です。
それに、夫のこれまでの行動は、経済的DVと言っても過言ではありません。生活費を渡さないなどといった暴言や命令の音声録音、LINEやメールのやり取りの保存はバッチリです。通帳には生活費を止められた履歴も残っています。
「あなたの振る舞いは経済的DVにあたる可能性があって、慰謝料を請求できるかもって弁護士に言われたよ」と伝えると、夫は真っ青になっていました。
夫は、慰謝料の支払いや離婚をどうしても回避したい様子。あの手この手を使い、私を懐柔しようとします。ついには「好きだから離婚したくない!」と、結婚後一度も言われたことがないようなセリフまで飛び出してきました。
じつは、夫は都合のいい妻がほしくて私と結婚しただけ。独身時代からずっと上司の妻と不倫中であることが、探偵事務所の調査で判明しました。その関係が今でも続いていたのです。私はカモフラージュのための妻でした。
何を言っても私が折れないとわかった夫は、離婚を受け入れる代わりに上司へ暴露しないでほしいと懇願してきました。慰謝料は不倫相手と2人分、自分が支払うので、相手には請求しないでほしいと言います。
私を隠れ蓑にし、暴言を吐かれ……、ただでさえ夫を許せずにいましたが、ここにきて不倫相手をかばうような発言をされては、歩み寄る余地などもはやありません。
見下し夫の末路
後日、この件が関係者の耳に入ったことで、職場でも大きな問題になったと聞きました。職場では噂が広がり、肩身の狭い状況が続いた末に、自ら退職したと聞きました。
心が折れ、気力を失った夫は、もう何も抵抗せず、素直に離婚届にサインしてくれました。慰謝料は、夫と不倫相手それぞれから受け取ることができ、再就職も決まりました。
結婚してから、自分の気持ちよりも相手の顔色ばかりうかがう毎日でした。苦しかったけれど、支配される側にいた時間は決して無駄ではなかったと今は思います。あの時間があったからこそ、自分がどう生きたいか? を再確認し、 今充実した人生を歩めているのです。
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大変な環境に置かれる中で、行動に移せたことは本当に大きかったと思います。
もし今、同じように苦しんでいる人がいるなら、内閣府の「DV相談ナビ#8008(はれれば)」に電話をかけると、最寄りの配偶者暴力相談支援センターにつながります。匿名でも相談できるので、ひとりで悩まずにまずは話してみてください。
声を上げることは、逃げではなく「自分を守る選択」と言えるでしょう。
【取材時期:2025年11月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。