夫は見栄っ張りで高級志向なところがあります。会社の後輩が高級な腕時計を買ったと聞けば、「先輩の威厳がなくなる」と言って、対抗してさらに高い時計を買おうとしたり、相談もなく借金を繰り返したり……。
そのたびに何度もきつく注意してきたので、最近は無断で高価な買い物をしてきたり、借金をしたりはなくなりましたが、そんな過去があるので、私の不安は完全には拭いきれていません。
そのため、私は夫に「次に黙って借金をしたら、即離婚」と約束させていました。
突き返された誕生日プレゼント
あと数日で、夫の誕生日です。夫がハイブランドの新作ネクタイを欲しがっていたので、私はそれをプレゼントすることにしました。
プレゼントを買いに出かけた際、ついでに自分用のノートパソコンも購入した私。家には私が独身時代から使っている古いパソコンがありましたが、最近は夫が動画視聴などで占領することが増えて不便だったため、自分用の新しいものを買ったのです。
そして誕生日当日――。
夫にネクタイを渡すと、なんと夫は喜ぶどころか「こんなのいらない! 返品してこい!」と言い放ったのです。予想外の反応にぼう然とする私に、「昨日出た限定色のほうがいいんだよ! これは返品して、そっちを買ってきてくれ!」と、さらに身勝手な要望までしてきました。
あまりにも頭にきてしまって、私は怒りのままに部屋を飛び出し、その後しばらく、夫と口をきかない日々を過ごしました。そんな中、兄から衝撃的な連絡が……。
「この間、偶然彼を見かけたけど、お前があげたって言ってたブランドのネクタイしてたぞ。あの、限定のめっちゃ高いやつ! 奮発したな!」
兄の言葉に、私は驚愕しました。私が夫にあげたのは、確かにそのブランドでしたが、限定ではなく通常のネクタイでした。さらに、「でも、ちょっと気になることあって……」と続けた兄。
聞くと、夫が消費者金融の入ったビルから出てきたところを見たと兄が言うのです。不信感が募り、私は夫が留守の間にクローゼットを見てみることに。すると、奥のほうに隠すようにブランド物の服や小物がたくさん置かれていました。その中には、兄が言っていた限定のネクタイも。夫は私からのプレゼントを突き返したあと、自分で限定のネクタイを買っていたのです。
これは隠れて借金しているに違いない……そう思い、上着のポケットやバッグ、引き出しの中などを探すと、やはり借入明細書がいくつも出てきました。夫はこっそり借金をしてブランド物を買い込んでいたのです。
夫から突然の離婚宣言
その日の夜、さらに衝撃的な出来事が起こりました。夫は帰宅するなり私にご丁寧に証人欄まできちんと記入された離婚届を突きつけてきて、こう言ったのです。
「お前と老後を過ごすのは耐えられない。離婚してくれ。俺、経営者の娘と知り合ってさ、彼女と再婚して、逆玉に乗るわ!」
あまりに身勝手な言い分にあきれつつも「はい、喜んで。こちらこそお願いします」と、私も記入済みの離婚届を取り出し、夫に見せました。
「勝手に借金したら離婚って約束だったものね。消費者金融に行っていたのも知っているわよ」そう告げると、借金がバレていることも、私から離婚届を出されることも予想外だったのか、夫はあぜん。
私が「家の中も整理して、出ていく準備はできているから」と言うと、夫はきょろきょろと家の中を見回し、「俺がいつも使っていたパソコンがない!」と慌て始めたのです。
「ああ、あの古いパソコン? あれはもともと私が独身時代に使っていた私の物でしょう? 新しいのを買ったから、初期化して今日リサイクルショップに売ってきたわよ」と伝えると、夫は「ふざけるな! 明日の商談で使う資料が入っていたんだ! 上司になんて説明すればいい!」と絶叫。
どうやら夫は、会社のセキュリティ規定に違反して、個人のパソコンで社内データにアクセスし、資料を作成していたようなのです。あきれるのはそうしていた理由。会社のパソコンを持ち歩くのは重いからという、それだけの理由で、家にあった私のパソコンで作業していたと言うのです。
「私には関係ないし、そもそもあなたが規定違反をしていたせいよね? 正直に上司に謝罪するしかないんじゃない?」私はそれだけ言うと、夫が突きつけてきたほうの離婚届と、まとめていた荷物を持ち、家を出ました。
借金まみれの転落人生
翌日、夫から何十回も電話がかかってきました。電話には出ず、離婚届を提出したことだけメッセージで伝えると、すぐさま着信が。仕方なく電話を取ると「そんなのどうだっていい! 離婚で結構だ! それどころじゃない! お前のせいで大変なことになった!」と怒鳴り散らす元夫。
昨夜、会社に戻り、徹夜で資料を作り直したものの、結局、朝イチだった商談には間に合わず、大失態をしでかしてしまったそうです。「何もかも自分のせいでしょう? もう赤の他人なんだから、これ以上連絡してこないで」私はそう言うと、電話を切って元夫の連絡先をブロックしました。
ほどなくして、元夫は自主退職に追い込まれたそうです。今回の商談のミスをきっかけに、パソコンの不正使用や、取引先へ他社のデータを誤送信、打ち合わせのダブルブッキングなど、今までの誤魔化していた数々のミスが社内調査によって明るみになり、厳しい注意を受けたあと、その事実が社内で噂になってしまい、居場所がなくなったのだとか。
頼みの綱だった「経営者の娘」という女性も、元夫が職を失い、借金まみれだと知ると、あっという間に去っていったと元夫と兄の行きつけの居酒屋の店主が言っていました。そもそも、元夫が一方的に「逆玉に乗れる」と思い込んでいただけだったのかもしれませんが……。
現在は借金を返すために、アルバイトを掛け持ちして昼も夜も働き詰めで、大変な生活を送っていると聞きました。断ったそうですが、行きつけの居酒屋の店主にも働かせてほしいと言いに来たのだとか。
一方私は、高校の同窓会で再会した男性と仲を深め、結婚を前提に交際することに。もうすぐ同棲もスタートする予定で、今は幸せな毎日を送っています。
◇ ◇ ◇
人目ばかりを気にして見栄を張っていると、本当に大切なものは見えなくなるのかもしれませんね。お礼も言わずにプレゼントを突き返す、黙って借金をする、会社の信用を裏切る行為……本当に身勝手な夫でした。家族、会社、自分とかかわりのあるすべての人に対して、感謝と敬意を忘れずにいたいものですね。
【取材時期:2025年11月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。