前村医院(東京都大田区)院長インタビュー

先代の意思を引き継ぎ、地域に愛される産婦人科に

前村医院の院長、前村由美先生

「平成21年に、先代院長の義父から引き継ぎ、理事長兼院長に就任しました。前村医院が開業当初から掲げるモットーは、”地域に根ざした医療の提供”。看板こそ産婦人科ですが、先代院長のもとには、ケガをした方、おなかを壊した小さなお子さんなど、いろいろな方が来院されていました。待合室では、妊婦さんの隣に杖をついたおじいさんが座っていることも。先代院長から地域医療の大切さを多く学びました。先代がこれまで築き上げた地域との信頼関係を大切に、私なりの要素を加えていけたらと思っております」

患者の緊張をほぐす、温かみのある空間

前村医院の入口と受付。壁にはめ込んだ大きなガラス窓で明るい雰囲気に

「現在の前村医院は、5年前に同地域内で移転したものです。新しいビルを建てるにあたり、こだわったのは”清潔で温かみのある空間”。来院する妊産婦さんに少しでもリラックスしてもらいたいという想いから、床は遮音性のある木目素材を採用。マタニティルームには青空の壁紙を貼り、仕切りのない螺旋階段で開放感を演出しています。壁にはめ込んだ大きなガラス窓や3階中央のデッキテラスから日差しが差し込むため、院内は常に明るい雰囲気が保たれています」

3階中央にあるデッキテラス
やさしい色調で統一された清潔感のある院内

調理法を工夫して、カレーや揚げ物もメニューに!

「病院での食事は、産婦人科専門のスタッフが院内で調理。毎月ミーティングを開き、患者さんの意見を取り入れながらメニューを企画しています。授乳期は、刺激物はダメ、油っこいものはダメと食事が制限されがちですが、何でもダメダメではストレスが溜まり、せっかくの育児が楽しめなくなってしまうことも。味付けや調理法を工夫すれば食べられるという調理指導の意味も込めて、当院では、カレーやトンカツ、揚げ物もテーブルに並びます。調理スタッフには、退院後、自宅で調理する際に参考になるようなメニューづくりを心がけてもらっています」

ひとりでも多くの赤ちゃんを救うために

「無痛分娩に対応する産婦人科として利用していただく一方で、私が最も力を注いでいるのは“お産に関わる院内スタッフ全員が、新生児の初期蘇生技術を習得すること”です。私は大学を卒業したあと、救命蘇生に興味を持ち、東邦大学医療センターの麻酔科に入局しました。現在も同センター客員講師として週1日勤務しています」

「お産は、お母さんと赤ちゃんともに元気で異常がないことが当然と思っている方がいらっしゃいますが、実際は妊産婦死亡の最も少ない日本であっても、年間40数名の方がハイリスク妊婦、難産、産後母体の急変で亡くなられています。赤ちゃんにおいても出生時に約10%の新生児には何らかの蘇生処置が必要となります。出産に立ち会うすべてのスタッフは、ひとりでも多くのお母さんに元気な赤ちゃんを抱っこさせてあげるため、母体救命、新生児蘇生法を習得することや高度医療センターとの地域連携を大切にしています」

広い分娩室

先輩ママとして妊産婦さんにアプローチ

「産婦人科はふだん利用する機会がない分、女性にとっても入るのに抵抗がある場所だと思います。とくに初期妊婦さんは不安がいっぱい。緊張をほぐすためにも、初めての健診では、先輩ママとして自分の体験を織り交ぜながら、患者さんのお話をじっくり伺うようにしています。患者さんの背景を知ることで、以降のケアがより円滑になるからです」

「現在は妊娠中の母親教室、出産3カ月後にベビーマッサージ教室を開催していますが、妊娠前は体調管理・食生活・日常生活を指導するセミナー、産後は授乳・栄養指導など、より長い期間、妊産婦さんに寄り添える機会を増やしていけたらと思っています。ベビーマッサージ教室を実施する生後3カ月は、ちょうどお母さんが職場復帰を考える時期なんですね。教室に来られた方同士、保育園の環境など、情報交換の場として会話がはずんでいます。都内という土地柄か、核家族が多いので、当院が妊産婦さんの集いの場になればという想いもあります」

スタッフの親子旅行で旭山動物園に

前村医院のエントランスと外観

「前村医院には、ここで出産を経験したママスタッフがたくさんいます。結婚、出産、子育てのため、一時医療現場から離れたお母さんたちです。みなさん医師、看護師、助産師などのライセンスをお持ちで、育児もひと段落してもっと働きたい、もっともっと勉強をしたいという方たちです。これまでの経験も生かして、輝きながら働き、前村医院を支えてくれています。最近は年に一度、院内旅行も実施しているんですよ。一昨年は2泊で北海道の旭山動物園に、昨年は伊豆大島にも行きました。もちろんパパも参加します。スタッフ同士、家族ぐるみの付き合いで仲がいいのが自慢ですね。院内の家具が壊れたときは、スタッフのパパが日曜大工で修繕してくれたこともあります(笑)」

終始、おだやかな笑顔とやさしい口調が印象的な前村院長。今後の活躍に注目です。

ベビーカレンダー編集部


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