よしかた産婦人科(神奈川県横浜市)副院長インタビュー
患者さんの幸せとは何か?
「大きな話になりますが、当院は『患者さんの幸せとは何か?』を追求しています。女性の一生は、男性に比べて変化が多いんです。思春期、性成熟期、更年期、老年期と、女性ホルモンがそれぞれのライフステージにすごく関わってくるんですね。ライフステージが同じでも、患者さんがそれぞれ置かれている環境や望んでいることは違うので、その方にとっての幸せは何なのかを考えながら、いろいろなケアを行っています。とりわけ、当院はお産を取り扱っているので、どんなお産、どんな育児が女性の一生にとって満足のいくものになるか、どうしたら幸せだろうかということを日々考えています」
100人の妊婦さんがいれば、100通りのお産がある
「初産婦さんでもあっという間にお産になる場合もあれば、経産婦さんでもお産に時間がかかる場合もあります。お産って、ひとつとして同じものはないんですね。100人の妊婦さんがいれば、100通りのお産があります。ご本人とご家族がどうしたいかを聞いて、専門家としてアドバイスをしたり、選択肢を示したりして、その方にとっての幸せなお産とは何かを一緒に探していきたいと思っています」
よしかた産婦人科では自然分娩、母乳育児を推奨していますが、「絶対にこうでなければダメなんてものはありません」と話す、善方先生。患者さん一人ひとりに寄り添うオーダーメイドのお産が、よしかた産婦人科の人気の理由のひとつなのだと思いました。
安全の土台がしっかりしているからこその自然分娩
「私たちはお産に対して、『女性の持っている力を最大限に引き出す』というポリシーを持っています。基本は『待つお産』なんです。まずは陣痛が始まるのを待つ、次に陣痛が乗ってくるのを待つ、子宮口が開くのを待つ、赤ちゃんが産道を降りてくるのを待つ……。当然、状況に応じて赤ちゃんとママを守るために必要な医療行為を行っていますが、『待つお産』と『放任』は違います」
「たとえば、陣痛がきているけど、なかなか進まなくて……というときに、私たちがそのまま待つと放任になってしまうので、医学的に微弱陣痛だと判断した場合は、ご本人やご家族の方とお話をして陣痛促進剤を使うこともあります。促進剤ってそれだけで悪に言われたりもしますが、適切なタイミングでしっかり管理をして使えば、とても有用な薬剤です。ですから、状況によっては使うこともありますが、医療者の都合では使いません。高次医療機関との連携やNCPR(新生児蘇生法)などの医療技術のスキルアップに力を入れているのですが、すぐに対応できる安全の土台がしっかりしているからこそ、自然なお産をサポートできると自負しています」
会陰切開は絶対に必要?
「会陰切開についてですが、当院は基本的にしない方針なんです。それは、『待つお産』だと、会陰がやわらかく伸びて、切れずにお産ができるからです。会陰切開は何のためにあるのかというと、赤ちゃんを守るためなんですね。もし赤ちゃんが苦しがっていて、早く外に出さないといけないと判断した場合は、当然、会陰切開や吸引分娩、鉗子分娩など、急速遂娩が必要になります。でも、順調にお産が進んで産道もやわらかくなってきていて、赤ちゃんも元気な場合は、会陰切開をする必要がありません。また、初めてのお産だからという理由で会陰切開をするということもしていません」
「なかには、結果的に自然と会陰が切れてしまうこともあります。会陰切開の傷のほうがきれいなんじゃないか?治るのが早いのでは?傷が小さくて済むのでは?などと勘違いされる方も多いんですが、実は逆なんです。自然に切れたほうが、傷も小さく、治るのも早いうえに、痛みが少ないことが多いです。会陰切開は決められた場所を切りますが、お産のときに必ずしもその部分に最も力がかかっているというわけではないんです。自然に切れた場合は、最も力がかかったところが切れるのですが、その傷は会陰切開より小さく、きれいに治ります」
「当院で、1人目のお産は自然に会陰が切れて、2人目のお産時は会陰切開をした方が実際にいらっしゃいました。その患者さんは、1カ月健診のときに『いかに自然にできた傷の方が楽か分かった。会陰切開ってつらい。世の中の人はよくがまんしていますね』とおっしゃっていました。ほかにも当院で出産されて会陰切開をしなかった方たちは、とても楽だったとおっしゃっています」
取材スタッフも会陰切開をすることが当たり前に近い認識だったのですが、よしかた産婦人科では、ほとんどの方が会陰切開をせずに出産することができるのだそうです。とても興味深いお話でした。
当院のいちばんの自慢はスタッフです!
「当院では、スタッフそれぞれが自分がやるべきこと、やりたいことを一生懸命考えていて、さらには楽しそうにしているんです。ここで働くことを楽しく思ってくれていること、それが私にとってはうれしいです。スタッフみんな、思いが強く、私も教わることが多いですね。たとえば、たくさんある院内教室も、それぞれ助産師が自分で提案して行っています。私から『やりましょう』とは言っていないんです。スタッフから『やりたい』と言ってくれるんです。また、とにかくみんな、赤ちゃんとママが大好きです。患者さんから『スタッフのみなさんが楽しそうでいいですね』なんて言われることもあります。そういうところも、患者さんに伝わっているのではないでしょうか。それから、スタッフはみんな希望して当院で赤ちゃんを産んでくれています。みんなで助け合い、よろこび合い、大家族のような感じです」
笑顔でうれしそうに話してくださった善方先生。院内の雰囲気が温かく、居心地がいい、いちばん理由はスタッフの方々の力だったようです。
「みんなで幸せになろう!TAKE IT EASY!ポジティブシンキングが幸せの秘訣です」
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