酒本産婦人科医院(奈良県橿原市)院長インタビュー

カテゴリー│インタビュー 2017/08/24 12:00

妊娠期から出産、産後まで、ていねいに診たい

酒本吉俊院長の地元、奈良県橿原市に開業して32年になる酒本産婦人科医院
やさしい雰囲気の待合室

「酒本産婦人科医院では、月20件の分娩数を理想として、実際もそれに近い分娩数を取り扱っています。なぜ月20件かというと、一から十までていねいに私ひとりで患者さんを診られる最大数が20件だからです。20件を越えてしまうと、診察や指導、ケアなどが行き届かなくなってしまいます。

大きな病院になると、働く医師の数も取り扱う分娩数も多くなります。そうすると、お産のときに初めて担当医が患者さんにお会いすることになったり、お産が流れ作業のようになってしまったりする可能性もあるのではないかと思います。やはり私が担当させていただくからには、妊娠期から出産、産後までていねいに向き合いたい。その思いが開業のきっかけにもなりました。

一人目のお産でつらい思いをした患者さんは、二人目、三人目のお産に対するハードルが高くなってしまうと考えています。お産と産後のケアが患者さんの満足のいくものになれば、子育ても主体的にできるうえに、次のお産にも前向きになれると思います。

ですから、酒本産婦人科医院では産後のケアはもちろん、妊娠中の保健指導にも力を入れています。切迫早産や不要な帝王切開の予防に努めたり、患者さん自身に努力してほしいことなど、一人ひとり個別に指導しています」

ゆったりとしたケアを目指しています

患者さん一人ひとりに向き合う場所のひとつ「保健指導室」
特に気を付けてほしいことは、その都度ていねいに指導

「私たちが考える『ゆったりとしたケア』とは、産院の方針を押し付けないこと。たとえば母子同室に関して。患者さんの希望に沿って、患者さんが疲れているときは赤ちゃんをお預かりし、患者さんが赤ちゃんと一緒にいたいと希望されたときは母子同室にしています。ただ夜間は、基本的に赤ちゃんをお預かりして、患者さんには疲労回復に専念してもらっています。

また、酒本産婦人科では母乳育児に力を入れていて、経験豊富な助産師が患者さん一人ひとりにていねいに指導をしていますが、これも決して押し付けることはしません。『授乳をがんばらないお母さんはダメなお母さん』ということはありませんからね。

母乳育児に対するプレッシャーも母乳の出に悪影響なうえに、産院の方針だからといって母乳育児を患者さんに押し付け、その影響で患者さんが“うつ”になってしまっては元も子もありません。患者さんそれぞれのライフスタイルや考え方を尊重して、応援していきたいと思っています。また、しんどいときはスタッフに甘えてもらいたいですね」

立ち会い出産はフリーです!

最大で13名立ち会ったことも!

「酒本産婦人科医院は立ち会い出産に関してフリーなんです。あくまで患者さんご本人が希望すればの話ですが、出産には誰でも立ち会えるうえに、帝王切開の場合でも立ち会えます。

上のお子さんが出産に立ち会うと、いろいろな反応をしてくれるので興味深いですね。泣いている子もいれば、ぼーっとしている子、びっくりしている子もいます。そして、『この子、どこから来たの?』とか聞かれたりもします」

お産は人となりが凝縮されている。だからおもしろい!

ご家族でゆったり過ごせる特別室

「患者さんを理解しないと、お産もうまくいきません。産科はほかの科とは違う、人間に向き合うおもしろさがあるんです。患者さんへの対応も、『この人にはこういう対応をしなければならない』と、相手をしっかり見ながら考えています。患者さんによってはやさしいだけでなく、ときには叱咤激励も必要だと思っています。

開業して30年以上になりますが、今がいちばんおもしろいと感じています。

私自身、昔では考えられないくらい、今、満足感があるんです。お産が終わると、患者さんに対して『よくがんばりましたね』『ご苦労さまでした』と思いますね。お産は本当に患者さんの人間のすべてが出ます。がんばる患者さんに感動し、その患者さんが成長した瞬間、変わった瞬間を感じられるとありがたいと感じます。本当に開業してよかった、あと10年続けられたらと思っています」

小学生のころから産婦人科医を目指していた

「私が、産婦人科医を目指したのは小学生のころ。脳神経外科に勤務する青年医師の活躍を描いたアメリカのテレビドラマ『ベン・ケーシー』に憧れたことがきっかけです。

医者もいいなあと思ってね。ヒューマニズムに溢れるところや、弱いものを助けるという志に共感したんです。産婦人科なら外科も内科もできるという考えから産婦人科医になり、開業に至りました」

患者さんだけじゃない、スタッフの希望も叶えたい

スタッフ全員の顔が分かるように写真が掲示されています
スタッフのみなさんの明るい雰囲気が伝わってきます

「酒本産婦人科医院には、患者さん一人ひとりにしっかり向き合うという方針に共感したスタッフが集まってくれているため、スタッフに対しても夢を叶えてあげたい、やりたいことをやらせてあげたいという思いがあります。

今いるスタッフの中には、以前働いていた産院で自分のやりたいことができなかったり、意に反した産院の方針に沿った指導をしないといけなかったりというような葛藤を抱えながら働いていたという人もいるようです。小規模医院の強みでもありますが、助産師の『自分の裁量の中でいろいろなことをやりたい』という希望に沿えるよう、見守っています」

今回のインタビューでは、酒本院長の一つひとつの言葉の中に、患者さんやスタッフへの深い愛情を感じることができました。最後に酒本院長から「妊娠・出産までが満足したものになれば、その後の育児も楽しくできる」というメッセージをいただきました。

じっくりと自分に合ったお産を考えていきたい方は、ぜひ酒本産婦人科を訪れてみてはいかがでしょうか?

ベビーカレンダー編集部


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