よしかた産婦人科(神奈川県横浜市)産院ごはん

料理に込める想いは「娘に食べさせたいごはん」

よしかた産婦人科の工夫がたくさん詰まった夕食
調理部主任の堤 美知子さん

よしかた産婦人科で働き始めて20年の堤 美知子さんは、調理部主任として夕食の献立を決め、調理をしています。取材日に拝見した、よしかた産婦人科の夕食は、「実に簡単な家庭料理です」とのことですが、割烹料理のようにも感じられる、工夫がたくさん詰まった献立でした。

堤さん「私もそうですが、調理スタッフは元々地元の主婦で、妊婦さんから見ると親世代。娘に食べさせたいものを、娘の母乳が出るようにと、親のような気持ちでごはんを作っています。調理スタッフは9名、朝食・昼食担当、夕食担当で分担しています」

取材日の夕食担当のお2人
カジキマグロのゴマ味噌焼きの調理風景

堤さん「体にいいもの、とくに母乳にいいものをつくるよう心がけています。小麦粉、乳製品は極力避け、野菜中心の手づくりにこだわっています。実際、6~7年前に麺とパンをやめ、野菜中心、とくに根菜類のメニューに切り替えたところ、母乳トラブルが大幅に減り、お通じもよくなって、下剤の処方率も60%減少しました」

スペアリブの煮込み
カジキマグロのゴマ味噌焼き。体にいいゴマや味噌はよく登場します
団子入りレンコンすりおろし汁。旬のレンコンは母乳にもいい食材
カブのサラダ
梅入りとろろ
干し柿のなます
豆もやしと春菊のナムル

堤さん「夕食は毎回、肉と魚の主菜2品、副菜4品、椀物、香の物、御飯の9品です。ボリュームはありますが、野菜中心で油っぽいものはないので、ほとんどの方が残さず召し上がってくださいます。献立では、主菜は事前に決めますが、副菜は手元にある食材で考えています。また、食材は余すところなく使い切るように心がけています。今日の献立で言えば、カブのサラダで余った茎の部分は、スペアリブの煮込みに彩りとして添え、逆にスペアリブの煮込みで余った卵の白身は、茹でてカブのサラダに乗せています。献立自体もそうですが、その献立の考え方、食材の使い方も家庭で真似しやすいようにと意識しています」

”この食材があれば、あれが作れる”というアイディアがどんどん浮かぶという堤さん。まさに主婦のお手本です!

最大のよころびは患者さんからの「おいしかった!」

患者さんからいただいたメッセージの数々

堤さんが満面の笑みで見せてくださったのは、患者さんからいただいた、たくさんのメッセージ。「こちらからお願いしたわけではないのに、みなさん示し合わせたように箸袋などにごはんの感想を書いてくださるんです」とのこと。なかには、ここのごはんを食べたいから、また産みたいという感想も。20年前、堤さんが初めて患者さんに提供した料理はロールキャベツ。そのとき、患者さんからいただいた「おいしかった!」のメッセージに感激し、今でもお守りのように大切に持っているそうです。

離乳食セミナー のきっかけは「お母さんの声」

食育担当助産師の大西彩子さん

離乳食セミナーをプロデュースするのは、食育担当助産師の大西彩子さん。まずは、離乳食セミナーを始めたきっかけをお伺いしました。

大西さん「離乳食セミナーを始めたきっかけはお母さんの声です。よく育児の相談のお電話がかかってくるんですが、離乳食って母乳育児の次にお母さんがつまずくポイントなんですね。作ったものを食べてもらえない、量を食べてもらえない、食べてもらいたい食材や栄養素をとってもらえない……。そんな問い合わせが多く、電話でお答えしていたのですが、『そんなことを教えてくれるところがどこでもない』と、あるお母さんが言ったんです。そこで、『離乳食について病院で教室として開催したら来てくれますか?』と伺ってみたところ、『絶対に行きます!』とおしゃってくださって離乳食セミナーを始めることになりました」

離乳食セミナーの必要性を強く感じ、発案をした大西さんがそのまま責任者に。定員40名で募集しましたが、最初はどれぐらいの人数が来てくれるか不安で、地域外への宣伝も行ったそうです。しかし、その結果、定員40名はよしかた産婦人科でお産をした方ですぐに埋まってしまったそうです。取材日までに、これまで計16回に渡って離乳食セミナーを開催してきた、よしかた産婦人科。いずれの回も定員割れすることなく大盛況で、残念ながらお断りする方も出てきてしまっているのだとか。「それだけ多くのお母さんが離乳食で迷っている」と大西さんはおっしゃっていました。

特別なことはしなくていい「本当はいらない離乳食」?

第10回の講師はは聖マリアンナ医科大学 名誉教授の堀内 勁先生

大西さん「離乳食セミナーは、聖マリアンナ医科大学 名誉教授で小児科医の堀内 勁先生を講師に迎えて開催しています。離乳食セミナーは、『本当はいらない離乳食』という題で実施していて、”特別なものは一切作らなくていい”ということがコンセプト。堀内先生の言葉を借りれば、『離乳食とは、子どもに食べさせるための食事ではなく、その子が何が得意で、何が好きで、どんなものなら食べられるのか、どんな調理をすれば食べられるのかをどんどん見つけてあげる作業』なんです」

セミナーで出している離乳食はすべて助産師さんの手作り!

セミナーでは、離乳食は自分たちから食べているもののなかから、子どもの月齢に合わせて食べられそうなものを選び、おやつは手づくりするようにと伝えているそうです。

大西さん「赤ちゃんのために味のないものや、だしだけで煮たものを出す必要はないと考えています。また、自分が食べているごはんは、赤ちゃんにあげるには、味付けが濃いと感じる方は、この機会に自分が食べているごはんを見直してほしいと思っています。とくに、おやつは手作りすると、お砂糖がどれだけ入っているか、ここまで甘くするには何をどれだけ入れたらいいかがわかるんです。いずれ市販のお菓子を買うことにはなると思うのですが、そこには気付いてほしい、そして、できるだけ赤ちゃんにはお母さんの味をインプットしてほしいなと思います」

離乳食セミナーに参加される方は、初産婦さんはもちろん、経産婦さんも。離乳食作りがはじめてという方から、第一子のときに離乳食がうまくいかなかったと感じている方も参加されるそうです。セミナー後のアンケートでは、「目から鱗でした」「気が楽になりました」「これならやっていけそうです」といった感想が多く、大好評なのだそうです。

よしかた産婦人科に来て、ご自身も変わったという大西さん

大西さん「よしかた産婦人科は、スタッフの食事も患者さんと同じメニューなんです。私も以前、外食が多くてイライラすることが多かったんですね。でも、ここで働くようになり、手作りの料理を食べるようになったときに、ホッとしたというか、イライラすることがなくなったんです。食事ってそれだけの力があると思うんです。不安を抱えたママたちにも、まずここできちんとした食事を摂ってもらって、そのホッとする気持ちを感じていただきたいんです。きちんとしたものを食べていれば、赤ちゃんにもしっかりと愛情を注ぐことができると思います。まずは母乳から、そしてお母さんの愛情のこもった食事を子どもをにあげてほしい。よしかた産婦人科でそのきっかけづくりやお手伝いが少しでもできればと思っています」

「夕食から朝食の間でおなかが減る」という患者さんの声から生まれた夜食

マクロビオティックカップケーキ※は、「鎌倉ツリープ」から取り寄せたもの。よしかた産婦人科専用にサイズを大きくしたオリジナルだそうです。取材スタッフもいただきましたが、とてもやさしい甘味でボリュームもあり、夜食にはぴったりでした!

(※マクロビオティック:卵・牛乳などの動物性食品や精製された砂糖、食品添加物、化学調味料を使用せずオーガニックな穀物や野菜、天然海藻類を中心に用いて伝統的な調理方法で味付けをする体にやさしい食事理論)

産後の体を温める「万能茶」
左から大西さん、善方副院長、堤さん

とっても明るい雰囲気の中で、患者さんへの温かい愛情を感じたインタビューでした。アットホームでホッとするような、よしかた産婦人科の産院ごはん。気になる方は、ぜひ一度訪れてみてください!

ベビーカレンダー編集部


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