【医師監修】出産時の呼吸法「ラマーズ法」とは?

この記事の監修者
監修者プロファイル

医師天神尚子 先生
産婦人科 | 三鷹レディースクリニック院長

日本医科大学産婦人科入局後、派遣病院を経て、米国ローレンスリバモア国立研究所留学。その後、日本医科大学付属病院講師となり、平成7年5月から三楽病院勤務。日本医科大学付属病院客員講師、三楽病院産婦人科科長を務めた後、退職。2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。

ラマーズ法イメージ

 

出産時の呼吸法として「ラマーズ法」という言葉を聞いたことのある人は多いと思いますが、実際にどのようなものかわからないという人もいるのではないでしょうか。そこで今回はラマーズ法について、方法やメリット・デメリットをまとめました。

 

 

和痛分娩「ラマーズ法」とは

個人差はあるものの、出産時の痛みに対し恐怖や不安を抱くのではないでしょうか? 痛みへの恐怖や不安は全身の緊張をもたらし、疲労に繋がります。出産時の痛みや疲労を緩和し、順調にお産が進むようおこなわれるのが、和痛分娩です。

 

和痛分娩の1つに「ラマーズ法」があります。ラマーズ法は、フランスのラマーズ博士が1951年に提唱した「心理的無痛分娩法」で、痛みに対する恐怖心がさらに痛みを強くさせるという条件反射を、呼吸法などによって断ち切ることで痛みの緩和を図るというものです。フランスで生まれたラマーズ法はのちにアメリカに渡り、1970年代に日本に普及されたと言われています。そして現在日本では、さまざまなラマーズ法の変法が存在しています。

 

 

ラマーズ法のおこない方

ラマーズ法は、お産の進みに合わせて呼吸法と弛緩法、そして補助動作を組み合わせておこないます。

 

 

お産の状況:子宮口1~3㎝ 陣痛は30~60秒 陣痛が遠のく時間は5~10分ほど

■呼吸法:ワルツの呼吸
1)おなかが張ってきたらゆっくり大きく深呼吸をします
2)3秒くらいかけて鼻から息を吸います
3)3秒くらいかけて口から息を吐きます
4)ワルツのリズムに合わせて2)3)の呼吸を繰り返します
5)おなかの張りがおさまってきたらゆっくり深呼吸し、全身の力を抜きリラックスします

 

■補助動作

ラマーズ法補助動作ワルツの呼吸
 

 

 

お産の状況:子宮口3~8㎝ 陣痛は40~60秒 陣痛が遠のく時間は2~4分ほど

■呼吸法:ヒッ・ヒッ・フーの呼吸
1)おなかが張ってきたらゆっくり大きく深呼吸をします
2)浅く・軽く・早く、「ヒッ」と口から息を吐き、鼻で息継ぎをしたあともう一度「ヒッ」と口から息を吐きます
3)軽く息継ぎをした後、口をすぼめて「フー」と息を吐きだします
4)痛みにに合わせて2)3)の呼吸を繰り返します
5)おなかの張りがおさまってきたらゆっくり深呼吸し、全身の力を抜きリラックスします

 

■補助動作

ラマーズ法ヒッ・ヒッ・フーの呼吸

 

 

 

お産の状況:子宮口8~10㎝ 陣痛は60~90秒 陣痛が遠のく時間は30~90秒ほど

■呼吸法:ヒッ・ヒッ・フー・ウンの呼吸(いきみのがしの呼吸)
1)おなかが張ってきたらゆっくり大きく深呼吸をします
2)浅く・軽く・早く、「ヒッ」と口で息を吐き、鼻で息継ぎをしたあともう一度「ヒッ」と口から息を吐きます
3)軽く息継ぎをした後、口をすぼめて「フー」と息を吐きだし、いきみに合わせて「ウン」と言います
4)痛みにに合わせて2)3)の呼吸を繰り返します
5)おなかの張りがおさまってきたらゆっくり深呼吸し、全身の力を抜きリラックスします

 

■補助動作

ラマーズ法ヒッ・ヒッ・フー・ウンの呼吸(いきみのがしの呼吸)

 

 

 

お産の状況:子宮口全開大 陣痛は60~90秒 陣痛が遠のく時間は30~90秒ほど

■呼吸法:いきみ
1)おなかが張ってきたらゆっくり大きく2回深呼吸をします
2)3回目に大きく鼻から息を吸い、息を止めて10~14秒ほどいきみます
3)息が続かなくなったら、再度大きく鼻から息を吸い、息を止めて10~14秒ほどいきみます
4)おなかの張りがおさまってきたらゆっくり深呼吸し、全身の力を抜きリラックスします

 

 

 

発露 ※赤ちゃんの頭が出てきたとき 数秒間

■呼吸法:短促(たんそく)呼吸
1)合図に合わせて両手を胸におき、「ハッ・ハッ・ハッ……」と軽く口から息を吐きます

 

 

ラマーズ法には練習が必要?

お産のときには助産師さんが息を吸うタイミングや吐くタイミングを言ってくれるため、必ず練習が必要というわけではありません。ですが、妊娠中にお産の経過をイメージしながら呼吸法の練習をすることで、実際のお産でも主体的に痛みと向き合えると思います。

 

妊娠中には、「ラマーズ教室」や「母親学級」が開催され、呼吸法やリラックス法についての説明や練習があります。立ち会い分娩をおこなう際にはこの教室に参加しておくことが条件とする産院もありますので、事前に確認しておくと安心です。

 

呼吸法の練習は、妊娠24週ころから継続的におこないましょう。無理に毎日おこなう必要はありません。お産の流れをイメージしながら、ご自身の体調に合わせておこないましょう。その際、いきみの練習はNGです。

 

 

ラマーズ法のメリット・デメリット

ラマーズ法における呼吸法には以下のようなメリットがあります。
・呼吸法に集中することで、緊張と痛みの緩和が期待できる
・お産の経過中、おなかの中の赤ちゃんに十分な酸素が供給できる
・分娩経過中のエネルギー消費を節約できる

 

その一方で、妊娠出産 Minds版ガイドラインでは、「呼吸を止めて長くいきむという方法は子宮口から赤ちゃんが生まれるまでの時間を短縮する以外に有用ではないため、第2期分娩遷延や胎児機能不全(胎児心拍異常)のような特別の適応に限定してすべきである」と推奨しています。また、妊婦さんの主体性に合わせて特定の呼吸法を取り入れない産院も増えてきています。

 

 

まとめ

出産が近くなると、もすぐで赤ちゃんに会えるというドキドキやワクワクと同時に、出産時に対する不安も大きくなるものです。出産の痛みを和らげる方法は、ラマーズ法やソフロロジー法など、さまざまな方法がありますが、産院によって取り入れている方法が違います。出産する産院でどの呼吸方法が取り入れているのかの確認や母親学級に参加するなどして、出産時のイメージをしておくことも大切です。

 

参考:

・系統看護学講座 専門分野Ⅱ 母性看護学各論 母性看護学2(医学書院)
公益財団法人日本医療機能評価機構 妊娠出産 Minds版ガイドライン

 

 

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