【看護師監修】トキソプラズマ抗体検査の内容や費用、感染の予防方法
妊娠中に気をつけたい感染症のひとつに「トキソプラズマ症」があります。トキソプラズマ症に感染した場合、どのような症状が出るのでしょうか?またおなかの中の赤ちゃんには影響はないのでしょうか?ここでは、トキソプラズマ抗体検査の内容や費用についてご紹介します。
トキソプラズマ症とは
トキソプラズマ症とは、トキソプラズマ原虫によって引き起こされる感染症です。過去に一度でも感染したことがある場合は、その後、生涯に渡って再感染することはありません。
しかし、妊娠中に初めて感染した場合には、トキソプラズマ原虫が胎盤を通じて胎児へ移行し、先天性トキソプラズマ症を発症する場合があります。妊娠中にトキソプラズマに感染した場合、先天性トキソプラズマ症を発症する胎児の割合は約10%とされています。
●原因
原因となるトキソプラズマ原虫は、魚介類を除くほとんどの肉類に含まれています。そのため、日常生活において、トキソプラズマ原虫に感染する機会は多いといえます。
●感染経路と潜伏期間
母体へのトキソプラズマ原虫の感染経路は、加熱が不十分な肉の摂取や猫の糞便に含まれるトキソプラズマ原虫の経口摂取です。
潜伏期間については、感染から症状が現れるまでは、猫の糞便から感染した場合は5~20日、肉から感染した場合は10日~数週間とされています。
●症状
トキソプラズマ症の症状は、健康な成人や小児が感染しても症状が現れないか、軽度で済むことがほとんどです。また、妊娠中に感染しても母体に現れる症状は、発熱や倦怠感、リンパ節の腫れなどです。しかし、妊娠初期に胎児に感染した場合、流産や死産の原因となる可能性があるほか、胎児に次のような重篤な症状が現れることがあります。
・水頭症
・脳室拡大
・脳内石灰化
・髄膜炎
・脳性麻痺
・けいれん
・精神運動発達遅滞
・網脈絡膜炎による視力障害
・肝機能障害
・低出生体重児
・黄疸
・発疹
・貧血
・リンパ節の腫れ
また、症状が出現していない場合でも、思春期頃までは発症のリスクがあるので、定期的な検診が必要になります。
トキソプラズマ抗体検査について
妊娠を希望するのであれば、妊娠前にトキソプラズマの抗体があるかどうか検査をしておきましょう。トキソプラズマが陰性の場合には、妊娠中の感染を防ぐために対策が必要となります。
●トキソプラズマ抗体検査の内容
母体の感染が疑われる場合には、血液検査によって、IHA法やLA法などの抗体検査やELISA法などのIgM抗体検査、IgGアビディティ検査などをおこないます。
母体がトキソプラズマ原虫に感染したことが認められた場合には、定期的な超音波検査によって胎児への感染の有無を調べます。そして、胎児への感染が疑われた場合には、PCR法によって羊水にトキソプラズマ原虫の遺伝子が含まれていないかどうか調べます。
●トキソプラズマ抗体検査の費用
トキソプラズマ抗体検査の費用については、施設によって異なり、施設によって妊娠初期の段階でおこなう血液検査に含まれることもあれば、妊婦さんが希望した場合にのみトキソプラズマ抗体検査をおこなうこともあります。希望者がおこなう場合、トキソプラズマ抗体検査の費用は1,000~5,000円程度です。これはIgM抗体検査、LA法など検査の種類を問わず同程度の金額となっています。
PCR法については、検査に必要な羊水の採取が保険適用外のであるため、10,000~20,000円前後の費用がかかります。
感染の予防方法
妊娠を希望する時点で、トキソプラズマ抗体検査を受けましょう。陽性反応が出た場合には、その後の妊娠で胎児が先天性トキソプラズマ症になる心配はありません。しかし、陰性でこれまでにトキソプラズマ症になったことがない場合には、予防対策をする必要があります。
予防策としては、肉類を食べる際には、しっかりと中まで火を通すようにしましょう。また、生肉を触った場合は、必ずしっかりと手を洗いましょう。
手洗いが不十分なまま野菜に触れ、そのまま野菜を生で食べることでトキソプラズマに感染する恐れがあります。
電子レンジでの加熱だけは、中まで十分に火が通らないことがあり、感染のリスクを完全に取り除くことができない可能性があるので注意が必要です。
猫を飼っている場合、猫がネズミなどの動物を食べることでトキソプラズマに感染する恐れがあります。猫がトキソプラズマに感染しないように外へ出さないようにしましょう。また、妊娠中は猫の糞便の処理を家族に任せるようにしましょう。
猫のエサとして肉を与える場合には十分に加熱し、できればドライフードか缶詰を与えましょう。
まとめ
妊娠中にトキソプラズマに感染した場合、胎児に重篤な影響を与える可能性があるため注意が必要です。
妊娠前、または妊娠中にでもトキソプラズマの抗体の有無を調べて対策することが大切です。
トキソプラズマ症が疑われた場合は、血液検査によって抗体反応を調べます。感染が確認された場合は、超音波検査で胎児への感染の有無を定期的に調べ、場合によっては羊水を採取して精密検査をおこないます。
妊娠中や妊娠を希望している場合には、肉を十分に加熱して食べるようにし、猫の糞便の処理は妊娠していない健康な家族に任せるようにしましょう
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