【助産師監修】妊娠中のアルコールの影響とは?飲酒が及ぼす影響
一般的には妊娠5週から6週ごろに吐き気や嘔吐、全身の倦怠感といったつわりの症状が現れ始めると言われています。しかし、つわりの症状は個人差が大きく、妊娠超初期は目立った症状もないことから、妊娠に気がつかずに飲酒してしまったという方も少なくありません。妊娠初期に飲酒してしまった場合、生まれてくる赤ちゃんにどのような影響があるのか、妊娠中の気をつけたい飲み物などと一緒にお話ししたいと思います。
アルコール代謝の仕組み
口から入ったアルコールは胃や小腸で吸収され、血液を介してまず肝臓に送られます。肝臓に送られたアルコールは、酵素によって「アセトアルデヒド」という物質に分解されます。アセトアルデヒドは飲酒したときに顔が赤くなったり、動悸や吐き気、頭痛などの原因となる物質です。さらにアセトアルデヒドはまた別の酵素によって「酢酸(さくさん)」へと変化します。肝臓でできた酢酸は、最終的には体の外に排出されます。
肝臓で分解しきれなかったアルコールは、全身を巡り、再び肝臓に戻って分解されますが、一部は、体内で処理されないまま、尿や汗、呼気となって、体の外に排出されます。
摂取したアルコールの約90%は肝臓で分解されます。女性ホルモンであるエストロゲンが肝臓を守る作用があり、男性よりも肝障害が少ない半面、女性は男性よりも小柄で肝臓も小さいので、アルコールによる肝障害は男性よりも早く出ると言われています。
妊娠中の飲酒が赤ちゃんに与える影響
アルコール飲料から摂取されるアルコールのほとんどはエタノールです。妊娠中に飲酒すると、エタノールは分子が小さいので容易に胎盤を通過し、おなかの中の赤ちゃんに移行します。おなかの中の赤ちゃんの肝臓は未熟で、アルコールを分解する機能が低いため、さまざまな影響が生じるおそれがあります。
妊娠中、ママが習慣的に飲酒していると、「胎児性アルコール症候群(FAS:fetal alcohol syndrome)」の赤ちゃんが生まれる頻度が高まります。胎児性アルコール症候群の赤ちゃんは、①成長障害 ②精神遅滞 ③種々の奇形の3つの徴候がそろっている場合を言い、わが国の研究では、1~2万人に1人の頻度と考えられています。
胎児性アルコール症候群は、1日に、ビールでは中瓶約2.5本(1,250ml)、清酒では約2合(400ml)、ウイスキーではダブル約2.5杯(150ml)、ワインではグラス約4杯(500ml)以上を摂取することで発症の頻度が高まると言われていますが、これよりも少ない量でも胎児性アルコール症候群を発症した例もあるため、どのくらいまでならアルコールを摂取しても良いということが言えないため、妊娠中の飲酒は控えたほうがよいでしょう。
そして、赤ちゃんの奇形は妊娠初期、発達遅延や中枢神経系の機能不全は妊娠後期のアルコール摂取に関連があり、また、妊娠中のアルコール依存は、乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症リスクを増加させるという研究結果もあるようです。
超妊娠初期のアルコール摂取は大丈夫?
はじめにお話ししたように、妊娠の徴候に気づかず、妊娠超初期にアルコールを摂取してしまったという方も少なくないのではないでしょうか?
妊娠超初期というのは、妊娠0~4週、つまり着床前の段階を指します。アルコールによる胎児の異常は妊娠4週以降すべての期間に起こりうるとされており、妊娠超初期のアルコール摂取は問題ないと考えられています。
しかし、妊娠4週以降に妊娠が判明することが多いので、妊娠を希望している方や妊娠の可能性のある方は、アルコール摂取をひかえたほうが安心ですね。
ノンアルコール飲料や養命酒は飲んでもOK?
酒税法では、アルコール分が1度以上含まれているものを酒類と定義しているため、含有アルコール量が1%未満の飲み物はノンアルコール飲料として販売されています。つまり、「ノンアルコール」と銘打った飲料でも、アルコールがわずかに含まれているものもあるため、妊娠中は飲まないのがベストです。また、滋養強壮や栄養補給を目的とした薬用養命酒なども、アルコール分を含んでいるケースがあるため注意が必要です。
一方、料理に使用する料理酒やワインなどは、焼く、煮るなどの加熱中にアルコールが飛んでしまうようなお料理に使用する分には問題ありません。お料理に使用するアルコールは、普通に飲酒するときの量に比べて少量ですが、やはり使い過ぎには注意しましょう。
まとめ
妊娠中の飲酒がよくないとわかっていても、妊娠していると知らずに飲酒してしまうことはあります。しかし、妊娠を予定している場合や妊娠している可能性があるときは、飲酒を控えるのがベストです。また、飲酒により生活リズムや食生活のバランスも乱れる可能性もありますので、規則正しい生活を送るよう心がけましょう。
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