夫婦の営みにまで口をだす義母
結婚した当初はやさしい人だと思っていた義母。しかし、結婚から半年ほど経つと「まだ妊娠しないの? 昨日は夫婦の営み、ちゃんとあった!?」と、とんでもないことまでズケケと聞いてくるようになったのです。
あまりのしつこさに耐えかねて、私はA太と一緒に病院で検査を受けることにしました。
検査をしてわかったのは、私たち夫婦は2人とも子どもができにくい体質だという事実……。
落ち込む私に追い打ちをかけたのは、またしても義母でした。
「あなたがA太にストレスを与えているせいで子どもができにくいんだ」「子どもが欲しいなら、A太にもっとやさしくしろ」と、すべて私のせいにされてしまったのです。
夫が不倫!?「お前のせい」と言われ…
子どもが欲しかった私たち夫婦は不妊治療を始めました。ですが、早々にA太が諦めモードになってしまったのです。義母に影響されたのか、「不妊と診断されたのは、お前がプレッシャーをかけたせいだ」とまで言うようになりました。
病院の予約をドタキャンしては、たびたび遊びに行くようになったA太。無理やり治療をしてもしょうがないと考えた私は、しばらく彼を自由にすることにしました。
しかしある日の昼下がり、私が家にいると、突然インターホンが鳴りました。ドアを開けると、そこには真っ青な顔をしたA太、そしてA太の同僚であるB男さんとその妻が立っていました。
状況が飲み込めない私に、B男さんが怒りに震えながら口火を切りました。
「奥さん……突然すみません。妻が、あなたの旦那さんと不倫してるんです!」
以前から妻の言動を怪しんでいたB男さんが、この日、2人が一緒にいる不倫現場(ホテルから出てきたところ)を押さえ、その足でA太を引き連れて私の家にも事実を伝えに来た、とのことでした。
A太は「不妊治療のストレスを彼女に癒やしてもらっていた。責任は取るから離婚してくれ」と言い放ち、対するB男さんの妻も、「夫が仕事で忙しくしている寂しさをA太さんに埋めてもらっているうちに、本気になってしまったんです」と開き直っています。
脳内お花畑状態の2人を見て一気に愛情が冷めた私。隣にいたB男さんも、同じく裏切られた怒りと絶望で言葉を失っていました。
当然、私もB男さんも離婚を決意。私たちはそれぞれ、不貞を働いたA太とB男さんの妻に対し、きっちり慰謝料を請求しました。
元夫とまさかの再会
離婚から3年後。私は病院の産婦人科で、偶然にもA太と再会しました。風の便りで、例の不倫相手(B男さんの元妻)と再婚したことや、慰謝料の支払いによって経済的に苦労していることは耳にしていましたが……。
A太はあからさまに嫌そうな顔をして、私にこう言いました。
「お前もしかして、再婚してまた不妊治療してるのか!? 金のムダだな! 諦めろよ」
本当に最低な言葉でした。
しかし、勘違いしているのはA太のほう。奥から、あの日一緒に怒りに震えていたB男さんがやってきたのを見て、A太は驚いています。
彼の腕に抱かれているのは、私とB男さんの子ども。 そう、離婚後、お互いの慰謝料請求のことで連絡を取り合ったり、同じ痛みを共有したりするうちに、私たちは自然と支え合うようになり、縁あって再婚したのです。
「お前、不妊症じゃなかったのか!? どうして……」とA太は混乱しています。
私は若いころに卵子凍結をおこなっており、それはA太との不妊治療中にも、選択肢の一つとして彼に話したことがありました。ですが、A太は不妊治療に非協力的で、私の話をまともに聞いていなかったのでしょう。私は若いころに卵子を凍結していましたが、治療には夫の協力が欠かせません。それなのに彼は通院をサボったり、検査を受けてくれず、きちんとした治療を受けられませんでした。
離婚後、B男さんと再婚した私は、改めてその凍結卵子を使った不妊治療を始め、幸運にもすぐに子どもを授かることができたのです。
元夫と不倫相手が繰り広げる地獄絵図
悔しそうに私を見つめるA太。すると向こうから、聞き馴染みのあるネチネチした声が聞こえてきました。声の主は元義母。なかなか子どもができないA太の再婚相手(B男さんの元妻)を、しつこく責めています。
あれから3年、いまだに孫を抱けていない元義母の嫌みは、明らかにレベルアップしていました。
私に子どもができたことが悔しかったのか、A太も一緒になって「お前のせいだ」と再婚相手を責め始めます。子どもができない原因をなすりつけ合う夫婦と、その嫁を責める姑……。まるで地獄絵図のような光景が目の前で繰り広げられていました。
A太に不倫されたことは少なからずショックでしたが、自分はあの地獄絵図の一員にならずにすんで、心底安堵した瞬間でした。
あのつらい経験があったからこそ、支えてくれたB男さんと、この腕の中にいる小さな命を、心から大切にしようと思います。不妊治療は、夫婦が本当に支え合ってこそ乗り越えられるもの。あの地獄から抜け出し、本当の幸せをつかむことができて、今、心の底からそう感じています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。