面接で感じた小さな違和感
面接官のAさんは、私が名乗っただけで「すぐに採用したい」と言いだしました。さらに、施設の代表という女性のBさんが現れ、自ら案内までしてくれるなど、やけに歓迎ムード。ありがたい話ではあるものの、どこか不自然なほど親しげな対応に、胸の奥でわずかな違和感が残りました。
その夜、祖父母に内定を報告すると、祖父は「よく頑張ったな」と笑顔で祝ってくれましたが、祖母だけはなぜか表情がくもり、「この施設、本当に大丈夫かしら」とパンフレットを見つめていました。
祖母の態度が一変した瞬間
数日後、Bさんから「もう一度お話ししたい」と連絡があり、私は施設に向かいました。玄関の前で面接官のAさんが待っており、軽いあいさつを交わしていると、途中まで一緒に来ていた祖母が声をかけてきました。
「まぁ、ここが面接の施設なの?」
祖母はにこやかに話しかけていましたが、Aさんが「初めまして」と言った瞬間、その表情が一変し、私に想定外のひと言を告げたのです。
「あなたとは以前お会いしていますね。……今すぐ辞退しなさい」
いつも穏やかな祖母からは想像もつかないほどの厳しい口調。Aさんは顔を強張らせ、そのまま施設の中に戻っていきました。
明らかになった過去
帰宅後、私は祖母に理由を尋ねました。祖母はしばらく黙っていましたが、やがて重い口を開きました。
「Aさんね、あなたのお母さんが勤めていた職場の上司だったの。当時、仕事の責任を押しつけられて、心身をすり減らしてしまってね……。それがきっかけで体調を崩したのよ」
祖母の言葉を聞いて、胸が締めつけられました。母が亡くなる前、なぜか急に仕事を辞めたことは知っていましたが、その背景までは知りませんでした。祖母があの瞬間に怒りをあらわにした理由が、ようやくわかりました。
私は翌日、施設への入職を辞退することを伝えました。Aさんからは何も返答はありませんでしたが、それでよかったのだと思います。
「人を見る目も、仕事のうちよ」と祖母が穏やかに言いました。その言葉に、これからも自分の信じる道を進もうという気持ちが強くなりました。
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普段は穏やかな祖母が見せた、たった一度の強い表情。その裏には、家族を守れなかった悔しさと、二度と同じ目に遭わせたくないという思いがあったのかもしれません。祖母の直感に救われた今回の出来事を胸に、これから介護の道を突き進んでほしいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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