入店時に起きたちょっとした行き違い
予約していた時間にお店へ到着すると、受付には若い男性スタッフが立っていました。私が「予約していた者です」と伝えると、彼は父の服装に一瞬目を留め、少し戸惑ったような表情を見せました。
「こちらはフォーマルなお店ですので……上着をお預かりしてもよろしいでしょうか?」
その言い方がやや強かったためか、父は「服装を注意された」と感じたようです。「すみません、やっぱり別の店にします」と静かに言い残して踵を返しました。
母も私も驚きましたが、父は「気持ちよく食べられないだろう」と穏やかに笑うばかり。せっかくの還暦祝いが台なしになりそうで、私は思わずスタッフに声をかけました。
誤解が解けるまで
慌てた様子で支配人らしき男性が駆け寄ってきて、「お待ちください」と頭を下げました。事情を聞くと、先ほどの若い男性は研修中の新人スタッフで、「お客さまの上着を丁寧にお預かりしようとしたところ、言葉選びを誤ってしまった」とのこと。
どうやら、「フォーマルなお店ですので」という言い回しを、父は「服装を注意された(ドレスコードを注意された)」と受け取ってしまったようでした。
父に事情を説明すると、「そういうことか」と苦笑しながら戻ってきてくれました。
父の対応に店内が温かい空気に
その後、改めて案内された席で食事を楽しむうちに、先ほどの新人スタッフが恐縮しながらお詫びに来ました。
すると父は、「誰にでも失敗はある。私も若いころ、上司に同じように怒られたことがあるんだ」と
やさしく声をかけ、逆に励ましていたのです。
その光景を見ていた周囲のお客さんたちも、どこかほっとしたように微笑んでいました。ぎこちなかった空気が一気に和み、食事の時間はとても穏やかなものになりました。
思い出のジャケット
ちなみに、父が着ていたその古いジャケットは、私が18歳のときに初めてのボーナスでプレゼントしたもの。「大切な日にはこれを着たい」とずっと大事にしていたそうです。少し擦り切れてはいましたが、父にとっては何より思い出深い1着でした。
還暦祝いの最後、父は「年を重ねても、こうして家族と食事できることが一番のごちそうだな」と
照れくさそうに笑っていました。
最初のハプニングも、今となっては心に残るエピソード。穏やかで温かい還暦祝いの夜となりました。
--------------
服装や見た目で誤解が生まれることはありますが、相手の立場を理解し、穏やかに受け止める父の姿勢は本当に立派ですね。店側も誠実に対応してくれたおかげで、最後は誰も嫌な気持ちにならずに済んだのが印象的です。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※AI生成画像を使用しています
ウーマンカレンダー編集室ではアンチエイジングやダイエットなどオトナ女子の心と体の不調を解決する記事を配信中。ぜひチェックしてハッピーな毎日になりますように!