高級料理ばかりを注文…
ランチの場所に選んだのは、パスタが評判のお店でした。日替わりランチセットはお手頃価格なのですが、単品メニューなどはそれなりの金額がします。私たち3人は迷わず日替わりパスタを注文しました。
ところがA子さんは、ステーキやムニエル、ローストビーフといった高額な単品メニューを次々と注文し、さらには食後のデザートまで追加したのです。
あまりの注文量と金額に、私たちは驚いて声をかけました。
「大丈夫? ここ、単品だと結構いいお値段になるよ?」
するとA子さんは、悪びれる様子もなくこう言ったのです。
「心配しなくても大丈夫。うちの夫、みんなのところと比べてかなり稼いでいるから」
そう言って嫌みを織り交ぜながら、A子さんは料理を平らげていきました。
「財布を忘れた!?」確信犯的な手口
そして会計のタイミングになったときです。A子さんはバッグをあさりながら、大げさな声を上げました。
「やだ、ごめんなさい! 私、財布を別のバッグに入れっぱなしだわ! 悪いんだけど、代わりに払っておいてくれる? このあとネイルの予約があるから、先に帰るね!」
店員さんが見ている手前、店内で揉めるわけにもいかず、A子さんは私たちの返事も待たずに逃げるように店を出て行ってしまいました。
A子の注文した料理が高額だったため、代わりにまとめて立て替えるだけの現金を、誰も持ち合わせていませんでした。結局、私たち3人で財布の中身を出し合い、なんとか支払いを済ませることに。その額は1人当たり数千円の負担増となり、私たちはあぜんとしました。
立て替えたお金を返してくれず…
翌日、幼稚園で会ったときに返してもらおうと思っていましたが、なぜかその日から送迎にはA子さんの夫や実家の両親が来るようになり、A子さん本人は姿を見せなくなりました。
2週間ほど経ったある日、ようやくお迎えに来たA子さんを発見。私たちが近づくと、A子さんは逃げるように帰ろうとします。私たちは慌てて追いかけ、呼び止めました。
「この間のランチ代、返してもらっていいかな?」
するとA子さんは、信じられない言葉を口にしたのです。
「ランチ代? なんのこと?」
私たちが詳細を伝えて問い詰めると、A子さんはヘラヘラと笑いながらこう言い放ちました。
「そんな前の話、もういいじゃない。みんな意外とケチなのねぇ」
結局その日も「今、持ち合わせがないから」と言い訳をし、1円も支払わずに帰ってしまいました。
ママ友の誕生日パーティーを計画
あまりの不誠実さに怒った私たちは、今後の食事会にはA子さんを一切誘わないと決めました。しかし後日、幼稚園の送迎時、私たち3人で次の集まりについて話をしていたときのことです。
その日は、仲の良いママ友の誕生日会の計画をしていて、「たまには子どもを夫に預けて、大人だけで奮発して『〇〇(地域で有名な高級寿司店)』に行こうか」と盛り上がっていました。
私たちはスマホのカレンダーを見せ合いながら、「じゃあ〇月〇日の11時半に現地集合ね!」と話していたのですが、ふと振り返ると、すぐ近くにA子さんが立っていたのです。
園の掲示板を見ているフリをしていましたが、距離的に私たちの会話は聞こえていたかもしれません。一瞬「聞かれたかな?」と思いましたが、私たちはすでにA子さんとは距離を置いています。特に気に留めることもなく、そのままその場を解散しました。
急きょ予定を変更することに
その後、誕生日会の数日前になって、主役のママ友から連絡が入りました。
「ごめん! 当日夫に子どもをお願いしていたんだけど、急に仕事が入っちゃって……」
私たちが予約しようとしていた高級寿司店は、カウンター席がメインで静かなお店です。小さな子どもを連れて行くのは気が引けますし、主役のママ友がゆっくり食事できないかもしれません。
そこで私たちは相談のうえ、こう提案しました。
「それなら、私たちが食材を準備するから、家で手巻き寿司パーティーにしない? 子どもたちも遊べるし、家で気兼ねなくお祝いしよう!」
こうして私たちは急きょ予定を変更し、高級店でのランチではなく、テイクアウトしたお寿司を持ってママ友の家でホームパーティーをすることにしたのです。
まさかの電話に絶句!
そして当日のお昼時。ママ友の自宅で、子どもたちが遊ぶ姿を見守りながら、のんびり手巻き寿司を食べていると、私のスマホにA子さんから電話がかかってきました。
「ちょっと、みんな遅いじゃない! 私もうおなかいっぱいよ? 早く来てくれないと困るんだけど!」
電話の向こうからは飲食店のような音が聞こえます。どうやらA子さんは、あの日聞いた情報を頼りに勝手に店へ行き、私たちが来ると信じ込んで、先にひとりで高額な寿司を好きなだけ注文して食べていたようなのです。
私は驚きつつも、冷静に事実だけを伝えました。
「えっ、私たちはお店には行きませんよ? 今日は急きょ、自宅でお祝いすることになったんです」
「は? 何よそれ! 変更したなんて聞いてないわよ!」
「変更の連絡なんてするわけありませんよね。だって、そもそもA子さんを誘っていませんから」
「……」
「私たちの会話を盗み聞きして、勝手にお店に行ったのはそちらですよね? 自業自得だと思いますけど」
図星を突かれたのか、A子さんは言葉に詰まった様子でした。しかし、すぐに自身の置かれた状況を思い出し、声が裏返ります。
「ちょ、ちょっと待ってよ! じゃあ、ここのお会計はどうするのよ!?」
「値段も見ないで高いものばかり食べちゃったじゃないの! 今の手持ちじゃ払えないわよ、どうしてくれるの!」
A子さんは私たちが支払うことを前提に、財布の中身も確認せず豪遊していたようです。
翌日、幼稚園に現れたのは…
「どうするのと言われても、私たちはそちらに行きませんし、払う義務もありません。お店の方に事情を話してはどうですか?」
そう伝えると、A子さんは電話口で「待って! 切らないで!」と取り乱していましたが、私は構わず通話を切りました。
そして翌日。幼稚園のお迎えの時間に、A子さんの旦那さんがA子さんを連れて私の元へやってきました。
旦那さんの話によると、あのあと、A子さんは泣きながら旦那さんに電話をかけ、支払いに来てもらったそうです。旦那さんは「昨日は妻が勝手な行動をして、ご迷惑をおかけしました」と深々と頭を下げました。
そこで私は、ここぞとばかりに切り出しました。
「あの、実はずっと言い出せなかったのですが……以前のランチ代もまだいただいていないんです」
「えっ……?」
旦那さんは驚いた顔でA子さんを見ました。
どうやらA子さんは、以前の食い逃げについては夫に隠していたようです。
「お前、いい加減にしろよ! どういうことなんだ!?」
旦那さんに一喝されたA子さんは、真っ青になって小さくなっていました。
その場で旦那さんから、今回の件の迷惑料と合わせて、前回のランチ代も全額返済していただきました。
風の噂では、A子さんは旦那さんから「そんなにぜいたくがしたいなら、自分で稼げばいいだろう」と厳しく言われ、パートに出るようになったそうです。ママ友だからといって甘え、金銭的な負担を他人に押し付けるのは言語道断です。親しい間柄であっても、お金の貸し借りや支払いには誠実でなければならないと、改めて痛感した出来事でした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。