家事が苦手な義母と、褒められる私
もともと義母は家事があまり得意ではなかったようです。一方、昭和気質の義父は「家事は妻の仕事」と思い込んでおり、義母の負担や苦手意識には無関心でした。そんな中、家事全般が得意な私が同居を始めたことで、長年保たれていたバランスが崩れてしまいました。
「お義母さん、これ私がやっておきますね」
住まわせてもらっている感謝もあり、私は毎日せっせと家事をこなしました。特に料理に関しては、義父が大絶賛。
「〇〇さん(私)の料理は店よりウマい!」と箸を進め、義母が作った日でも「今日の味付けは〇〇さんじゃないのか?」と残念がる始末。私は良かれと思ってやっていたのですが、これが義母のプライドを深く傷つけていたことに、当時の私はまったく気づいていませんでした。
靴の中に小石…エスカレートする嫌がらせ
異変はすぐに始まりました。ある朝、買い物に行こうと靴を履いた瞬間、足の裏に激痛が走りました。
「痛っ!?」
驚いて靴の中を確認すると、尖った小石がいくつも詰め込まれていたのです。砂利道を歩いたわけでもないのに、明らかに不自然でした。
不可解な出来事は続きます。私と夫のお弁当用に作り置きしておいた料理が、作った翌日にはすべて食べ尽くされていたり、私が座る食卓の椅子にだけ醤油が垂らされていたり……。
極めつきは入浴中の出来事でした。私がシャンプーをしている最中、急にシャワーが冷水に変わったのです。給湯器のパネルを確認すると、電源が切れていました。「故障かな?」と思って付け直しても、すぐにまた消されてしまう。ここまでくると、偶然で済ませることはできませんでした。
「お湯は使わせない!」→浴室から響く叫び声
決定的だったのは、それから数日後の夜のことです。私はお風呂へ入ろうと脱衣所にいました。服を脱ごうとしたちょうどそのとき、玄関が開く音と共に、夫の重いため息と「ただいま……」という力ない声が聞こえてきたのです。
顔を出すと、そこには疲労困憊で立ち尽くす夫の姿がありました。仕事のトラブル対応で疲れ果てていたようです。
「すごい疲れてる顔してるよ。先にお風呂入ってきなよ。私は後でいいから」
そう声をかけると、夫は着替えを持って、私と入れ替わりで浴室へ直行しました。
私がリビングに戻ったところ、キッチンのほうから「ピッ」という電子音が聞こえ、給湯パネルの前に立っていた義母が独り言を呟いているのが聞こえました。
「嫁の分際でお湯を使うなんて生意気なんだよ。ガス代がもったいない……」
どうやら義母は、シャワーの音が聞こえたことで、お風呂場にいるのが私だと思い込んでいる様子。そのまま薄暗い笑みを浮かべていました。
「お義母さん、何をしているんですか!?」
私が背後から声を上げると同時に、浴室から「うわっ!」という夫の叫び声と、ドーン!という鈍い音が響き渡りました。
義父の怒りと、家族の再出発
「えっ……?」
背後に私がいること、そしてお風呂場にいるのが夫であることに気づき、義母の顔から血の気が引いていくのがわかりました。
私たちは慌てて浴室へ駆け込みました。そこには、急に冷水になったシャワーに驚き、足を滑らせて転倒した夫がうずくまっていました。幸い、打ち身と軽い捻挫で済みましたが、打ち所が悪ければ大事故につながっていたかもしれません。
そこへ、自室にいた義父が騒ぎを聞きつけて飛んできました。事の顛末を知った義父の怒りは凄まじいものでした。
「お前、まさか嫁いびりのつもりでこんなマネをしたのか!? 〇〇さんが転んで大ケガでもしたらどうするつもりだったんだ! 現に、自分の息子が被害に遭ったんだぞ!」
義母は震えながら、私が来てから自分の居場所がなくなったような気がして、妬ましかったと告白しました。
義父は深くため息をつき、そして静かに言いました。
「母さんが家事を苦手なのは知っていた。それなのに、『家事は妻の仕事』だと決めつけて、感謝もせず〇〇さんばかり褒めたのが原因だな……。すまなかった」
義父は私と夫に深々と頭を下げ、義母にも「これからは俺も家事を覚える。二人でやっていこう」と声をかけました。ただ責め立てるのではなく、自分自身の振る舞いも省みた義父の対応に、義母も涙を流して崩れ落ちました。
「……私も意地になっていたわ。〇〇さん、つらく当たってごめんなさい。△△(夫)もケガをさせてしまって、本当にごめんなさい」
義母は私と夫に向き直り、何度も頭を下げて謝罪してくれました。その姿を見て、私も「気づかずに追い詰めてしまってすみませんでした」と伝えることができました。
その後、新居が完成して私たちは実家を出ましたが、義父がエプロンをつけてキッチンに立つようになったと夫から聞きました。義母の嫉妬から始まった騒動でしたが、結果的にそれは、義両親が互いを助け合う夫婦になるための転機になったようです。
◇ ◇ ◇
義母の本音を知ることができ、関係が修復された点はよかったですね。ただし、今回のように入浴中にお湯の温度を急激に下げる行為は、驚いて足元が不安定になり、転倒などの事故につながるおそれがあります。
さらに寒い季節には、急激な温度変化によって血圧が大きく変動し(ヒートショック)、体調不良など、より重大な事故を招く可能性もあります。
相手への不満があったとしても、安全を脅かす行為ではなく、きちんと話し合いで解決していきたいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※AI生成画像を使用しています