そんなある日、私たちの再会のきっかけを作ってくれた同窓会の幹事だった友人から、突然電話がかかってきました。何事かと思えば、開口一番「もっと◯◯(夫)のことを支えてやれよ」と説教をされ、私は耳を疑いました。どうやら夫が、私に対する不満や「冷たくされている」といった愚痴を周囲にこぼしていたようでした。
夫からの衝撃的な告白
その場は適当に聞き流しましたが、心の中はモヤモヤでいっぱいでした。出張続きで家を空けているのは夫のほうなのに、これ以上私に何をしろというのでしょうか。私だって、ひとりで家を守る寂しさに耐えていたのです。
そんな中、夫から「話がある」と切り出されました。関係が冷え切っているのは自覚していたので、私は最悪の事態……「離婚」の二文字を覚悟して話し合いに臨みました。
しかし、夫の口から飛び出したのは、私の想像を絶する言葉でした。
「落ち着いて聞いてくれ。……俺の子どもができたんだ」
一瞬、何を言われたのか理解できませんでした。私に妊娠の兆候はありません。
「どういうこと?」と混乱する私に、彼は平然と言い放ちました。
「実は、元カノと浮気していて……できちゃったんだ。だから別れてくれ」
冷静になった瞬間
頻繁な出張も、帰宅が遅かった理由も、すべては裏切りのための嘘だったのだと、その瞬間にすべてがつながりました。あまりの衝撃に言葉を失っていると、扉の外で待機させていたのか、夫の呼びかけに応じるように一人の女性が部屋に入ってきました。それは、夫の元カノであり、私も知っている高校の後輩でした。
二人は私の目の前で、聞き慣れない愛称で呼び合い、甘ったるい声を出しながらイチャつき始めました。目の前で繰り広げられる地獄のような光景に、悲しみを通り越して「不倫しておいて周りが見えなくなる人間って、ここまで気持ち悪いものなんだ」と、妙に冷めた気持ちになったのを覚えています。
もはや修復の余地などありません。私はその場で、二人に対して慰謝料を請求すること、そして離婚に応じることを決意しました。
私が何をしたというの…!?
離婚成立から半年が経ったころ、例の幹事だった友人から再び連絡があり、近くのカフェで会うことになりました。離婚の報告をしなければならないと重い足取りで向かいましたが、待っていたのは地獄のような再会でした。
私が席に着くやいなや、友人は激昂し「不倫した挙句に◯◯(元夫)から金をむしり取るなんて、お前は最低の人間だ!」と怒鳴り散らしました。それだけでは収まらず、彼は手にしていたカップのコーヒーを私に浴びせてきたのです。
服は汚れ、周囲の視線が刺さる中、私はあぜんとしました。友人いわく、夫は周囲に「嫁が浮気をしていたから注意したら、逆に俺からDVやモラハラを受けたという証拠を捏造して脅してきた。離婚したければ解決金を払えと言われ、貯金を全部奪われた」と嘘を触れ回っていたのです。
彼は自分の不倫を隠すために、私を悪者に仕立て上げ、周囲から同情を買っていたのでした。
私は汚れを拭いながら、スマホの画面を彼に向けました。そこには、夫が不倫を認めた念書の写真や、二人が不倫を自白している音声、そして慰謝料の振込記録がありました。
「浮気をしたのは彼のほうです。そして、この自白音声でも認めている通り、不倫相手が妊娠したのは私たちがまだ夫婦として生活していたときですよ」
事実を知った友人は、みるみるうちに青ざめていきました。元夫の話がすべて嘘だったと知り、あまりの衝撃に言葉を失っているようでした。
その後、彼は震える声で何度も私に謝罪しました。「なんてことをしてしまったんだ。あんなやつの嘘を信じて、君にひどいまねを……」と顔を覆い、汚れてしまった服のクリーニング代をその場で支払い、責任を持って同級生全員に広まっている噂を訂正すると約束してくれたのでした。
信頼を失った男の末路
それから数年後、再び高校の同窓会が開かれました。元夫も参加していましたが、以前のように彼を温かく迎える者はいませんでした。
元夫がいつものように笑って仲間に近づいても、誰もがよそよそしく振る舞い、さっと別の場所へ去ってしまいます。彼がついた「元妻にハメられて金を奪われた」という卑劣な嘘は、すでに全員の知るところとなっていました。
不倫そのものはもちろん、自分の罪を隠すために私に濡れ衣を着せ、友人たちの正義感や善意を悪用した彼の振る舞いに、皆が心底あきれ果てていたのです。
かつての仲間たちから完全に孤立した元夫は、居心地が悪くなったのか、会の途中で逃げるように帰っていきました。嘘で自分を守ろうとした結果、彼は青春を共にした仲間との信頼をすべて失ったのでした。
あの日、コーヒーを浴びせられた屈辱は今も忘れませんが、逃げずに真実を証明して本当に良かったと思っています。
今の私は、信頼できる友人たちに囲まれ、穏やかな毎日を過ごしています。自分の過ちを他人のせいにするような人とは縁が切れて、正解でした。これからも誠実さを大切に、前を向いて歩いていこうと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。